第四陣:古参読者御用達の展開である
場面は前回から引き続き、
西暦2017年のとあるファミリーレストラン
『……聞き間違いかな、女王陛下。
あんたがキレてんのは俺がぼっち飯キメてっからだと、
そう聞こえたような気がしたが……』
「聞き間違いなものか! 確かに我はそう言った!
そもそもこの店は"ファミリーレストラン"ぞ!
即ち家族、或いはそれに匹敵する団体客専用として作られておる!
にもかかわらず一人で来店するなどと、
そのような真似が許されていいハズがないっ!
誰もが集団の一員として苦労・苦悩し、
嫌々他者へ配慮・譲歩しながら生きている中に、
如何にも"自分こそは自由だ"と!
"貴様ら如きとは違うのだ"と!
声高に自慢して回るが如き
その自己中心的かつ身勝手この上ない振る舞いが!
容認されていい理由などありはせんのだっ!」
『……』
うまい具合に身を隠したハズのユウトは、
異世界の王を自称する"ヴェイドス四世"だかいう爬虫類から
理不尽過ぎる難癖をつけられていた。
(めんどくせぇなあ……
ただでさえDORARRSに追われてるってのに、
こんなバカに絡まれちまうとはよぉ~。
オチオチ食事もできねえのかこの時代はっ)
加えて尚不自然なのは、周囲の連中の反応だろう。
普通公共の場でバカ騒ぎをやらかす奴が居ようモンなら、
大抵他の客が抵抗するか、さもなきゃ店員や警官辺りが対処をするハズだ。
にもかかわらずこの店の奴らときたら、
客から店員に至るまで誰もヴェイドス四世へ手を出そうとしやがらねえ。
あたかも触らぬ神に祟りなしと言わんばかりに、
見て見ぬふりを決め込もうとしてやがる。
……如何に現代日本人が波風を立てたがらず面倒事を嫌うにしても、
ここまで無関心なのは不自然を越えて不自然(?)だ。
(……まさかこいつら)
早々に何かを察したユウトは、
この状況を脱すべく腹を括る――"このボケをシバき回さねえと"ってな。
(警察やヒーローの世話になろうが構うもんか。
寧ろ公的機関の世話になれるんなら、
事情説明して元の時代に戻して貰えるかもしれねェ)
勿論、そっからDORARRSに引き渡されりゃ一気に詰む。
だがこのままここで動かずともどうせ見つかるだろう。
なら、辛うじて生存の可能性が高い方に賭けるしかねえ。
『……くっっだらねえなァあ~』
だからユウトは、口を開いた。
精一杯の嘲笑と悪意を込めてな。
「……なあにいい?」
火に油を注いだのは言う迄もねえ。
寧ろ狙い通りだ。
「貴様ぁ……!この貧乏臭い空っぽの死にぞこないがあ!
なんと言ったぁ!? もう一ペン言ってみいっ!」
『"くだらねえ"と言ったんだぜ。
この声量でも聴き取れねえなら、
補聴器の一つでも入れんのをお勧めするがなあ~』
「なぁぁんだとぉぉぉぉ~~!?
言うに事欠いて、この我を~~~っ!」
年寄り扱いは余計効いたんだろう、
髪は亜麻色から燃えるような赤に、
瞳も緑から金色へ変わり、肌は漆黒の鱗に覆われていく。
『ええ~い、無礼者めぇ! 灰にしてくれるわっ!
……とは言え店に迷惑はかけられぬっ。
ポンペイ! オスキ! サルノ! エトルリア! 序でに下僕!
早急に戦の支度をせい!』
四世は自分の座っていたテーブル席の同伴者どもに呼び掛ける。
そいつらはまさしく四世の指示に忠実な手駒で、
いつもならこのチビの爬虫類が呼べばすぐに来るんだが……
『……どうした? 何をしておる貴様ら!?』
同伴者どもからの反応は無かった。
痺れを切らした四世は、
床を踏み抜かんばかりの勢いでテーブル席へ向かうが……
『おい! 配下どもよ! 何をボサっとしておる!
王である我の、このヴェイドス四世の言う事が――「聞けませんね」
怒号を遮ったのは、凍て付くような一言だった。
発言者は配下ん中でも特に貫禄のあるノッポの別嬪エトルリア。
どうやらこいつが四世に次ぐサブリーダーポジらしいが……
「ええ、聞けませんとも。
流石に今の貴女様には、従う気にもなれません。
そちらのアンデッド様をどうにかなさいたくば、ご自身お一人でどうぞ」
『な、なんだとぉっ!?
貴様エトルリア、家来の分際で我に盾突くというのか!?
このヴェイドス四世にっ! 王家に仕える使用人一族の貴様が~っ!』
その後暫く四世は使用人どもと言い争っていたが……
『もうよい! 貴様らなど知らぬ!
この薄情な裏切者どもめ!
斯様なアンデッド如き、我一人でじゅーぶんよ!』
結局、単身でユウトを叩きのめそうとする。
……それも、店のど真ん中で!
『……店に迷惑かけねぇんじゃねーのか?』
『ふん! 心配はいらぬ!
我が必殺の焼滅熱線は狙った標的だけをピンポイントで焼き尽くせる!
よって多少貴様の周辺が焦げこそすれ、それ以上迷惑はかからぬのだ!』
(……なら別に部下の手助けいらねーじゃん)
『骨まで灰になるほど火葬してくれるわ、この白骨死体がっ!』
ユウトが内心ツッコミを入れている最中にも、
ヴェイドス四世は大口を開き口の中に火球を形成、肥大化させていく!
どうやら焼滅熱線は所謂"溜め動作"が必要な技らしい。
……となりゃもう、やることは決まったようなもんだ。
(サービスのいい店だよなァ。
各座席にカチ割り氷とウォーターサーバーがあるなんてよ。
俺初めて見たよこんな光景)
ユウトはテーブル席の中央に手を伸ばし、
大ぶりな氷を幾つか手に取ると……
『頭ァ、冷やせっ』
『もがっ!?』
そいつを四世の口へ強引にねじ込みやがったんだ。
『おっご、ぐごあがっ!?』
溜め動作を妨害されたせいだろう、
四世の口ん中の火球は跡形もなく消え失せる。
だが……
『ふんがっ! ごんがっ!
んぐぅっ! ん゛ん゛~~!』
流石そこは腐っても一応ドラゴン。
四世は押し込まれた氷を強引に噛み砕いて咀嚼、
シャーベット状にして飲み込もうとする
――そこまでユウトの狙い通りだとも知らずに。
『ふんっ』
『むぐっ!?』
事実、四世が噛み砕いた氷を飲み込もうとしたその刹那……
ユウトは咄嗟に手を伸ばし奴の鼻から下を力強く"掴む"!
つまり、閉じた口を塞ぎ"開けねえよう固定した"んだっ!
『むむむっ!? ぐっ!? んっぐ~~っっ!』
四世は必死で口を開こうとするが……
タナトスモードの圧倒的握力を前にしては為す術もねえ。
或いはともすれば、ここで降参し引き下がるなり、
はたまた何かしら戦法を変えられりゃまだ良かったろう。
だが悲しいかなこのヴェイドス四世、
どっちの選択肢も持ち合わせちゃおらず……
『ん゛っん゛ん゛ん゛ん゛~~~~~っ!』
(オイオイ、マジかよ。こいつまだ熱線に拘ってんのか……?)
あくまで焼滅熱線での状況打破に固執する他なかったんだ。
『ん゛ん゛ん゛っ! ふん゛ん゛ん゛っっん゛ん゛ん゛ん゛ん〜〜〜!』
口を塞ぐユウトの手を退けようともせず、
あくまでそのまま力業での強行突破を試みる。
結果、"出口らしい出口"のないまま、
熱線のエネルギーは増幅・膨張し続け……
『ん゛ん゛ぐぅっ!?』
いよいよ限界に達し"暴発"しちまったのさ。
それもかなりド派手にな。
次回、往生際の悪いヴェイドス四世に更なる悲劇が!
https://mond.how/ja/69440_Uwabami
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