エピソード24:なんだこの決着は……せめてなんか必殺技叩き込むとかあったろもっと……
場面は前回から引き続き、
五星市の育海海岸……
『…………』
オルトロスクローの火炎攻撃に、
マモンスライサーの雷撃、
更にはデミゴッドキラーマスケットの集中砲火……
タナトスモードの強化武器三連発の猛攻を受けて尚、
怨恨リマインダーことグラティア・サンジョーは死ぬ気配を見せなかった。
『……しぶとい奴だな。やっぱ魂を直に奪うしかねえか』
事実いつまた持ち直すかもわからねぇなら、
奴の無力化さえできているとは到底言えず……
生け捕りにする選択肢はほぼ消滅したに等しいと言っていい。
[Mujo, be careful.
If you take the woman's soul directly like you just did,
you won't be able to avoid it going out of control.]
(和訳:ムジョウ、お気をつけて。
今のあの女から直接魂を奪えば、暴走は避けられません)
『だよなァ……』
遺恨リーパームジョウ最強の固有能力"霊魂刈取"。
恩師の"魂魄狩人"を発展させた、
いわば正統進化系と言うべきこの能力は、
あらゆる標的の"魂"を奪い自分の生命力に還元でき、
結果ユウトの肉体は事実上の不老不死を誇っていた。
だがこの能力には"使い過ぎると暴走する"って致命的な欠点がある。
"チェルノボグモード"
生命エネルギーの過剰摂取で至るこの暴走形態こそは、
自我を喪失したまま"霊魂刈取"をブレスの形で無差別に撒き散らす禁断の力。
市井を守るヒーローとしちゃ是が非でも"至る"ワケにはいかねえ。
『だがともすりゃどうするってんだ。
エアストライカーや弾丸で何度もイモータル・コアを攻撃したが、
それすら奴ァ無効化しちまうんだぞ?』
[…Let's start by immobilizing them with the Yahiro Wani Balldish.
From there, switch to the Yajo Shinsotsu and steal their soul locally
from the central part, forcing a shutdown.]
(和訳:……手始めにヤヒロワニバルディッシュで動きを封じましょう。
そこから夜女神倅に持ち替えて、
中枢部から局所的に魂を奪い機能停止に追い込むのです。
『オーケー、それで行こうぜ。
……要請-"断ち切る刃は海魔の顎が如く"』
[Weapon Upgrade]
[更新要請受理♥ 供給、ヤヒロワニバルディッシュ♥]
現れたのは斧槍"フォルネウスハルバード"の強化版"ヤヒロワニバルディッシュ"。
強化によって遠距離戦も可能になったこの武器は、
標的を凍らせて動きを止める冷凍エネルギー弾を撃てる代物で……
『オラッ、一旦黙れっ!』
『ぐあっ――』
予期せぬ重傷に未だ回復途中だったグラティアは、
エネルギー弾を喰らいあっさり"静止"。
『要請ッ! "亡き師の影を温ね、己の道を見出さん"ッ!』
[Summon Weapon]
[召喚要請受理♥ 供給、刈魂刀夜女神倅♥]
敢えて出力を控えて氷の層を薄くした上で、
溶け切らない内に勝負を決めるべくユウトは一気に距離を詰める!
手にした武器は"刈魂刀 夜女神倅"……タナトスモード専用の長巻だ。
[Mujo, please do not remove the sword from its sheath and thrust it lightly into the sand.
However, be careful not to touch his heart directly.
If you absorb a huge amount of energy, runaway is inevitable.
What you touch is only around the center.
If you take away the soul from the operation of the system
that connects the energy source and his body and force it to a standstill,
you will be able to stop his life activities while the enormous amount of energy is intact.]
(和訳:ムジョウ、刀を鞘から抜かず砂地に軽く突き立てて下さい。
ただし奴の中枢に直接触れないようご注意を。
膨大なエネルギーを吸収すれば暴走は避けられません。
触れるのはあくまで中枢の周辺です。
エネルギー源と奴の身体を繋ぐシステムの動作から魂を奪い停止に追い込めば、
膨大なエネルギーはそのままに奴の生命活動を停止させられるでしょう)
『だとして連結システムから吸い取った魂はどうするよ?
最悪それだけでも暴走形態になっちまうかもなんだぜ?』
[There is no need to worry, Mujo.
The absorbed soul can simply be released outside the body.
It travels from the hand placed on it,
through the body, to the sword on the opposite side.]
(和訳:ご心配には及びません、ムジョウ。
吸収した魂は体外に逃がせばいいのです。
添えた手から身体を伝って、反対側の刀へと)
『なるほど……上手く行くか分からねえが、
ともあれやるしかねェ、かッ!』
距離を詰めたユウトは早速夜女神倅を鞘ごと砂地に突き立て、
未だ凍り付いたまま動かねえグラティアのイモータル・コア
――凍り付いて尚駆動し続ける不死性の根源――
その縁にあたる枠部分へ右手の指先で触れつつ"霊魂刈取"を発動!
『――っっ――ぅぁ――』
(やべえっ! 氷が解け始めたかっ!)
身体の中を吸い取った魂が流れていく感覚……
過去異次元空間"レイブラディア"で似た真似をしたユウトだが、
あの時程じゃないにせよそもそも慣れない行為なもんで
少なからずその身体にも負荷がかかっていた。
(クソっっ……! やっぱ慣れねえな、コレっ……!)
一瞬でも気を抜けば全てが台無しになりかねねえ極限状態の中、
それでもユウトは魂を吸っては放出していく。
(……だが、負けねえっ……!
ここで俺が、退き下がれば……!
ここで俺が、しくじろうモンならっ……!
育海海岸が……五干市が……日本の国土さえもがっ……!
俺の所為で、滅んじまうっ……!)
思い起こされるのは、
嘗て師匠が生涯最後に成し遂げた大仕事……
亡きタチバナ・ソウキチはその昔、
敵性宇宙人の放とうとした決戦兵器を、
文字通り命懸けで消滅させ地球を救った。
規模感こそまるで別モンだが、
さりとてやろうとしてること自体は結構似通ってもいて……
(……そうだ、ろうが……!
おやっさんが味わった地獄に比べりゃ、
こんなもんがなんだっ……!
増援が来ねえからどうしたっ……!
メチャクチャ気分が悪くて全身痛えからどうした……!
その程度が……ここで退く理由になるワケ、ねえだろうがあっ!)
『――――ぐ――
ぅぐ、ぁ――や、め――』
『る、ッかァァァァァアアアアアッ!』
微かに聞こえたグラティアの、呻き声じみた抵抗が、
かえってユウトの狂気じみた熱意を更に加速させる!
『終わらせてやるぞ怨恨リマインダー!
殺してやるぞグラティア・サンジョー!
最早てめえの馬鹿げた復讐計画など、跡形も残してやるものか!
てめえだけじゃねえ! てめえを作った令和神殿騎士団も!
ネオフェミニス党とREIWA天誅組の残党どもも!
この世に残してやるものか!
地獄にも送ってやるものか!
もし仮に誰もがお前を許そうとも!
この俺だけはてめえを、てめえらを許さねえ!』
『う、ぐが……あっがああ……っ!』
気付けば勢い余って、
ユウトの爪はグラティアの装甲に食い込んでいた。
当人さえ気付かない内に、深々と。
だがそれはつまり、
霊魂刈取がコアとグラティアの繋がりを
ほぼぶっ壊してる事実をも物語っていて……
『……ぁ……そん、な……
わたし……の……から、だぁ……っっ……!』
イモータル・コアとの繋がりが途絶えつつあるだけに、
グラティアの身体は最早力なく崩れ落ち、
末端部からボロボロと崩れ落ちていく!
『 こ れ で 終 わ り だ … …
消 え て 亡 く な れ エ ッ ! 』
怒りと苛立ちと憎悪と……
あらゆる"汚く邪悪な感情"のまま、
ユウトは力任せにイモータル・コアを引きはがす!
『アッギイイゲッギャアアアアアアッ!?』
ともすりゃただでさえボロボロだったグラティアは、
遂に身体を覆う装甲ごと崩壊し始める!
『ウゥゥウグギゲギョゴワガアアアアッ!?
グギャラ、ガバギャゲエエエエエッ!?
グギョエゲヒギイッギギイイイッッグ、ギイイイッ!?』
汚い悲鳴を上げながら、
装甲の破片や体液らしき汚水を撒き散らしてのたうち回る姿に、
最早高貴ぶって声高に作者への復讐を誓ってた、
あの"怨恨リマインダー"の面影など微塵もなく……
『ウウウウエエエエエアアアアア!
アッガゲエエエアアアアアア――――ァァァァ――――』
装甲も、永遠の命も、何もかも失った女は、
剥ぎ取られた中枢だけを残して、跡形もなく消えた。
ヴィラン組織"令和神殿騎士団"の切り札、
怨恨リマインダーことグラティア・サンジョー……
永遠に続くハズだった奴の生涯は、
間接的に地獄へ落としたハズの男によって呆気なく幕を下ろしたんだ。
読者様からのアイディア提供がキッカケで産まれたグラティア(怨恨リマインダー)ですが、
実はこいつひいては令和神殿騎士団を倒したのもまだ通過点に過ぎず……
この後ユウトはとんでもなく厄介な出来事に巻き込まれ、
図らずも諦めていた夢を果たすことになります。
というわけで次回エピソード25「※この話の舞台は西暦2030年です」でお会いしましょう。




