エピソード21:これは……ぶっ壊れてますね〜……作者の精神が……
場面は前回から引き続き、
五星市の育海海岸……
『……そしてあの日、二十歳の誕生日パーティで私は密かに誓ったのだわ。
「私の人生をメチャクチャにしたあの悪魔に、
物語の登場人物だからこそできる形で復讐してやらる」とね……!』
(……そりゃ蠱毒成長中が邪悪な外道なのは間違いねぇけど、
少なくともお前の人生メチャクチャになった件とはそこまで関係ねぇだろ……)
ウロボロスモードに変身したグラティア・サンジョーの口から語られたのは、
本作『デスイズザヒーロー!』の作者"蠱毒成長中"に対するただの逆恨みだった。
『そこから私は秘密裏に動き出したのだわ。
力を得て成り上がり、
蠱毒成長中への復讐を成し遂げるための最短ルートへ向けて!』
最短ルートってとこが如何にも怪しいが、
実際グラティアの選択はどうしようもなく短絡的だった。
というのも……
『その最短ルートとやらが令和神殿騎士団への入団かぁ〜?』
『ええ、そうなのだわ。より厳密には、ネオフェミニス党と呼ぶべきかしら』
『なに……?』
ネオフェミニス党。
ユウトとしちゃできれば二度と聞きたくねえ名だった。
生涯最悪の日、若くして味わわされた生き地獄の記憶は、
それほど奴の海馬に深く、痛々しく刻み込まれていたんだ。
『ネオフェミニス党に入った私はまず、
この作品そのものを根幹的に成立させなくすればいいと考えたのだわ。
そしてネオフェミニス党のエース怪人"花園の三銃士"の一人
"アラミス・タイガーリリー"を利用することを考えた』
"アラミス・タイガーリリー"……
かつて最盛期のネオフェミニス党に在籍していた武闘派植物型バイオノイド三人組
"花園の三銃士"の一人で、クロカミ・メイナを誑かし悪の道に陥れた張本人だ。
同僚のアトス・ブラッドローズとポルトス・ラフレシアがどっちも男への攻撃に固執してたのに対して、
奴は女を誑かし洗脳して悦に浸るタイプの、
支配欲の膨れ上がった同性愛者モドキだって点が何よりの違いだった。
『高貴な王子様気取りのタイガーリリーは、
醜女や前科者に持病持ち、
低学歴や独身貧民といった弱者女性をこそ好むの。
心の隙に付け入って容易く支配できるから。
となれば、クロカミ・メイナにぶつければ上手く堕落させてくれると踏んだのだわ』
『……』
亡き元恋人を侮辱するグラティアの発言に、ユウトは立腹せずにいられねえ。
『あら、その表情……ご機嫌斜めといった感じだわね?
自分で殺したクセに未練タラタラで彼氏ヅラだなんて……
男の風上にも置けない有様なのだわ』
変身中にも関わらず的確に心中を見通せたのは、
ひとえにフォルネウスモードの頭部構造が独特だったからに他ならねぇ。
というのもこの形態の頭部は大口を空けたサメのようで、
口腔内からは球状の黒い"もう一つの頭部"
――邦画『リアル鬼ごっこ』の"鬼"っぽい感じ――
が邪悪な笑みを浮かべてるんだが、
この"もう一つの頭部"こと"インナーフェイス"は液晶画面じみた構造で、
ユウトの心情に応じて分かりやすく表情を変えたり、
はたまた気温や湿度、簡単な図や記号なんかを表示することもできるんだ。
『……何がおかしい?
一度は恋人として愛した女の死を偲ぶのが
そんなにみっともねぇか?
恋情抜きにしても散々世話になった
"かつての仲間"への侮辱にキレるのは情けねぇことか?
そもそも意味不明なんだがよぉ〜、
オメェ作者の野郎に復讐がしてぇんだろ?
だったら当時の、まだ主人公になる前の俺を直接狙や良かったじゃねえか。
あの時は俺もギリギリまだ"そこそこ弱かった"んだしよ』
事実、当初のユウトはラーヴァモードから四元素形態に切り替えたばかり。
まだムジョウシステムに形態が馴染み切っていないのもあって、
素で変身してもそれほど強くないもんだから、
有り合わせの材料で改造・補強した
型落ち中古品の強化装甲服で戦闘能力を補っていた。
加えてその強化装甲服さえ不安定で欠陥だらけだったんで、
事実当時は"ムジョウが一番弱かった時期"
と言っても差し支えねえだろう。
『なのに何故そんな回りくどい真似をした?
自認自覚が無くとも主人公に内定していた俺はまだしも、
あのクロカミ・メイナはヒロインどころか
レギュラーキャラにも内定してなかったじゃねえか』
『なぜあの貧乳まな板根暗陰キャ喪女非モテ女を狙ったですって?
そんなの決まってるのだわ。
蠱毒成長中は大の純愛過激派……
NTRは法規制を望むほど嫌ってるでしょう?
なら自分の作品のヒロイン候補が、
よりにもよってレズビアンなんかに寝取られた挙句、
被害に遭った主人公もショックで腑抜けになって戦意喪失……
そんな胸糞悪いバッドエンドの方が、
あの外道も精神的にショックを受けて立ち直れなくなると踏んだからだわ。
これまで感想不足で三度の連載を断念し、
四度目の正直として丹精込めて始めたこの「デスイズアヒーロー」が、
始まりもせずに悲惨で中途半端な胸糞エンドを辿ったならば、
蠱毒成長中が負う精神的ダメージは計り知れず……
それこそ、運が良ければ自殺だってしてくれるかもしれないのだわ』
なんともえげつねぇ。
並みの主人公なら脳への過負荷でぶっ倒れてるか、
さもなきゃ不快感に心が折れてたかもしれねェ。
だがみんな忘れちゃいめえ、対面する相手は我らがホンゴウ・ユウト。
即ちガッツリ"狂人"なワケだから……
『……クソじゃねえか。実にクソだァ、何から何までもがっ。
そんな話を誇らしげに堂々と語ってる時点でてめえは既にあのヤローの同類だし、
何より結果としててめえの作戦は軒並み失敗してンじゃねえか。
まずあの女を喪った俺だが戦意喪失なんてしてねェし、
何ならヒーローとして軌道に乗って
ヴィラン殺害数でギネス取ったばかりか、
今年の正月には世界的に表彰されたぐれぇにゃ絶好調よ。
だってのにてめえはどうだ、怨恨リマインダー?
ネオフェミニス党の主要戦力は殺し尽くされ組織は壊滅、
あれだけ復讐したかったウチの作者も、
そりゃ作家としては散々だが、
一応自殺どころか自傷行為の一つもせずのうのうと生き延びてやがるぜ?
まぁとは言えそれでも折れず、
クロカミ・メイナから抜き取った情報と技術を手土産に
REIWA天誅組残党と合流して"令和神殿騎士団"を結成……
どうにか幹部の地位にまで上り詰め巻き返したつもりだろうが、
そこまでして手に入れた怪人の力での戦績も散々と来てらァ。
しかも作品のタイトルまで間違えてやがる。
本作のタイトルは「デスイズ"ザ"ヒーロー"!"」だ、
「デスイズ"ア"ヒーロー」じゃねぇ。
復讐復讐と息巻いてる割には大したこともねえ』
返しとて狂気じみていながらわりと的確だった。
ともするとさしものグラティアとて感情的にならずにいられねぇ……かと思いきや……
『……言いたいことはそれだけかしら?
全く、毒にも薬にもならないようなことをウダウダダラダラと……
作者が作者なら主人公も主人公なのだわ』
[ヒッサツ・チャージング!]
『やはり蠱毒成長中なんて、
この世に存在していてはいけなかったのだわっ!』
奴は何ら動揺せずベルトを操作……
全身の蛇が鎌首をもたげ口を開く!
『現実世界を生きる健全な創作者たちの為にも、
私が引導を渡してやらねばならないのだわ!
砕け散りなさい"ムジョウ"!
そして「デスイズアヒーロー」!』
[ウロボロ・ストライクフィニッシュ!]
『やっぱそう来るよなァ〜……』
開かれた蛇の口から放たれた無数の光弾が、
浜辺に佇むユウト目掛けて容赦なく振り注ぎ……炸裂!
『我が正義と大義の為に!
この世から跡形もなく消え去るがいいのだわっ!』
光弾の爆発たるや凄まじく、
辺り一面は砂煙に包まれる!
『勝ったっ……!
第四章、ひいては本編"完"ッッ!』




