エピソード20:逆恨みだし何ならブーメランじゃねぇか
場面は前回から引き続き、
五干市は育海海岸……
『この私、グラティア・サンジョーはね……
元々この世界の人間じゃなくて、
"第四の壁を越えた先"の出身者……』
『ホウ、つまり……』
『ええ、そうなのだわ……
私は元々、
画面前のあなたたちと同じ、
現実世界の人間なのだわっ』
ヴィラン組織"令和神殿騎士団"の切り札
"怨恨リマインダー"こと本名グラティア・サンジョー。
一見して一回の強豪ヴィランに過ぎねえかと思われたこの女は、
その実"現実世界の人間"だという。
余りに衝撃的……ってのをも通り越して、最早意味不明……
読者諸君としちゃ理解の外過ぎて
どこぞの茶トラ猫よろしく星空バックに目ン玉カッ開いてることだろう。
『元々現実世界の人間、ねえ……
つまるところ"転移者"か"転生者"ってトコか?』
『ええ、"転生者"なのだわ』
つまるところ、
この女は一旦現実世界で命を落とし、
その後本作『デスイズザヒーロー!』の世界で
"グラティア・サンジョー"として――前世の記憶を引き継いで――生を受け、
紆余曲折を経てヴィラン組織最強の怪人に成り上がり今に至っていたんだ。
その過去たるや、前世の段階で波乱万丈だったようで……
『そもそも前世の私は元々、
ごく有り触れた一般家庭に生まれた、
絵を描くのが好きな小娘に過ぎなかったのだわ』
時は2010年代中期……
グラティアの前世にあたる女は、
当時隆盛を誇ったPixiv内の大手グループに在籍し、
他の絵描きと互いのオリジナルキャラクターを描き合う"交流"をしながら楽しんでいた。
『当時はまだ、グループは平和だったのだわ……
あの男がやってくるまでは!』
『……あの男ってのは、察するに……』
『そう、この駄作を書いた極悪人……
害悪ユーザー、蠱毒成長中なのだわ!
奴は絵を描く努力をしようともしない、
たかが小説書きの分際で、
アイコンメーカーやアバター製作アプリの作品を引っ提げて、
前世の私を含めた絵師たちに散々迷惑をかけまくった!
私達はただ"交流"がしたいだけなのに、
あの男はひたすら"自分の作品を読ませる"ことや、
"自分のキャラクターの絵を描かせる"ことしか考えていない!
"交流"こそが、あのグループの全てだったのに!
あの男はグループの和を乱し、
ろくでもない騒動ばかり起こしていたのだわ!』
グラティアの主張は概ね事実と言えなくもねえが、
さりとて当時の蠱毒成長中とて、
幾ら愚鈍で邪悪とは言え曲がりなりにも個人創作者……
他ユーザへのリスペクト精神もそれなりに持ち合わせては居たし、
全面的に嫌われてばかりとか、慕う奴が皆無だったなんてことも無かった。
何ならアイコンメーカーの作品もそれなりに好評ではあり、
ともすりゃグラティアの発言には少なからず恣意的・感情的な誇張も含まれていた。
『ま、結局最終的にはロクに反省もせず、
追い詰められた挙句アカウントを消して逃げたのだけど!
これが所謂"ざまぁ"というヤツなのだわ!
まさに"ざまあみろ"なのだわ!
あいつがPixivから消えた時、私は心底"スカッと"したのだわ!
私含め大勢の絵師を不幸にしたあいつは、
この先ずっと不幸なまま生涯を過ごし、
悲惨な末路を辿ればいいと、
当時は日々そう願っていたのだわ!』
こんなことを誇らしげに言い出してる辺り、
グラティアの性根も蠱毒成長中に負けず劣らず腐ってねえか?
とか思ったヤツ……
そう確信してくれたお前の優しさに、今は感謝と賛美を贈りたい。
『そして一方の私は、
蠱毒成長中を超えるべく、より"交流"に注力したのだわ!
その過程で、多くの絵師たちが私を見限り逃げて行ったのだわ!
けれど私は気に留めなかった……そいつらは所詮、
あの蠱毒成長中と同じ偽物か、それ以下の根性なしだもの!
そんな奴らなんて、私の"交流の輪"には必要ないのだわ!』
徐々に雲行きが怪しくなりつつあるが、
実際こっから"前世のグラティア"は暗黒期に突入する。
『私はその後も絵師として努力を続け、交流に精を出したのだわ!
そして遂に! 念願叶って!
大学時代には同人サークルを立ち上げ、
卒業から十年で起業に成功したのだわ!
その名も「株式会社テスラ」をね!』
(……"交流"だけに"交流電流の発明者"こと"ニコラ・テスラ"ってか)
因みに2003年創業の欧米企業にも"テスラ"っつーのがあって、
こっちはフツーに(?)人工知能とか電気自動車とか作ってる会社だ。
……ま、CEOがあのヤク中こどおじなもんで
一抹の不安を覚えずには居られねえワケだが……。
さてともあれ、その後前世のグラティアはどうなったかっつーと……
『けれど結局「テスラ」は長続きしなかったのだわ。
事業内容は間違いなく洗練されていたハズなのに、
どいつもこいつもロクに理解せずそっぽを向いたせいでね。
それで私は理解したのだわ。
蠱毒成長中がクソだっていうのは厳密には間違いで、
蠱毒成長中みたいな奴を活かしてる
世の中そのものがクソなんだわ、って』
なんともまあ、クソのような境地ならぬ"狂痴"に到達したようで……
果たしてともすりゃ蠱毒成長中とどっちがマシなんだか……
『私が死んだのはそれから二年後だったのだわ。
詳細は……よくある話だから省くのだわ』
(ぜってーカッコ悪過ぎて話したくねえだけだろ……)
『死後……目覚めると私は赤ん坊になっていたのだわ。
それも、前世の記憶を持った状態でね』
『第四の壁を認識し始めたのは何時ごろだ?』
『そうね……
物心ついた頃にはもう
「自分は物語の登場人物なのでは」と認知しかけていたけれど……
確信に至ったのは十四歳の夏だったのだわ。
その二年後には作品タイトルを知り、
更に一年半を経て作者があの憎き蠱毒成長中だと知ったのだわ。
……そしてあの日、二十歳の誕生日パーティで私は密かに誓ったのだわ。
「私の人生をメチャクチャにしたあの悪魔に、
物語の登場人物だからこそできる形で復讐してやらる」とね……!』
この時ユウトは思った。
(……そりゃ蠱毒成長中が邪悪な外道なのは間違いねぇけど、
少なくともお前の人生メチャクチャになった件とはそこまで関係ねぇだろ……)
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助けてください。




