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燕の騒乱  作者: 梔虚月
第一部 鳩の密告
12/31

12 仲介者

今回は短いです。

 私は被害者の遺留品を船室に持ち帰ると、事件に関係すると思われる寄木細工の小箱、鍵札付きの鍵、白紙の切れ端を選り分けた。

 奥村の所持していた鍵では、小箱の鍵穴と形が違うので解錠できないのだから、何かしらの機密情報は、まだ箱の中に隠されている。

 いいや、そうとも言い切れない。

 犯人が寄木細工の小箱を奥村の船室に残している訳合は、箱の鍵を所持する仲間を誘き寄せる罠であり、私は九重中尉が興味を引かれると考えていた。

 しかし九重中尉は、奥村の遺留品を気に掛ける様子がなければ、船員に共犯者がいるのならば、既に機密情報が持ち出されている可能性も考慮するべきだろう。

 もっとも情報を入手した九重中尉が味方であれば、一兵卒の私が興味本位で情報に目を通す必要がないのだが、問題は、どうすれば敵味方の判別がつくのか。

 箱の中身を知り得る者は、奥山から情報提供を受ける九重中尉と、それを阻止しようと人を殺している者だ。

「九重中尉の身柄を取って調べるか、それとも防諜活動で人を殺した犯人を取り押さえて聞き出す方が早いか」

 二者択一ならば、九重中尉は曲がり成りにも身内の軍人であり、後始末も考えて、表向きにも罪状がしっかりした後者を優先すべきであろう。

 ただ犯行が用意周到に計画されていれば、犯人は簡単に尻尾を出さないので、これだって容易に片付く問題ではない。

 次いで梶原の遺留品は、衣類が無造作に詰め込まれた樽型の手提げ鞄と、船内食堂に残されていた酒の空瓶で、遺体のズボンから出てきた輪ゴムで止められた二百円の札束は、船長の太田に預けてきた。

 白米十キログラムが三円であれば、二百円は約三ヶ月分の月給相当(現在の貨幣価値で50〜60万円換算)で、満洲の出稼ぎで得た金だとしても持ち歩くのは不自然だ。

 梶原が船内食堂を中座して持ち帰ったのは、酒瓶だけではなかったとすれば、彼の配役は、九重中尉と奥山の仲介者ではなかろうか。

 そうと考えれば、奥山が人目を忍んで展望通路に潜んでいた訳合、九重中尉が情報提供者の奥山が消えても騒がない訳合、梶原が殺された訳合の全てが諒解する。

【お知らせ】

 現状のヒントから事件の真相を推理できる方がいれば、感想(返信ではネタバレしませんので、ネタバレOKです)または活動報告に書き込んでくれると嬉しいです。次回からは、容疑者を絞り込んでいきたいと思います。

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