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ギクシャクしている。
アレンがあんな事言うから妙に意識してしまって、横のゲイルを全く見られていない状況だ。
あの後、2人してアレンの言葉を華麗にスルーして
とりあえず準備をしようと言う事になった。
アレンはずっとニヤニヤしていたが。
部屋に戻り、各自準備をして
ゲイルと顔を合わせるのがとても気まずかったが、出て行かない訳にはいかないので
両頬を軽く叩いて気合いを入れた。
下に降りると、ゲイルは何時ものラフな格好より少しだけカチッとした服を着ていた。
纏めている髪が三つ編みになっていて可愛い。
朝からずっと萌えが仕事し過ぎていている。
ちょっと休んでも良いんだよ。
休暇、大事。
今は2人(+狼)で街へ向かう道を歩いていた。
「その…なんだ、アレンが冗談を言ってすまない。」
「だ、大丈夫だよ。冗談だって分かってるから。
アレンったら面白がってるのね、アレンも来るのにあんな事言って」
『くくっ…良いでは無いか、付いて行くのは無粋かとは思ったのだがマリーの魔力が如何程か興味が有るのでな。』
「アレンは俺を揶揄うのが趣味みたいなもんなんだ。マリーまで巻き込んでしまったな」
「ふふ、仲良しなんだね」
「…あぁ」
ゲイルは、この空気に耐えられなくなったのか
自分は悪くもない事を謝ってくれた。
アレンの事を話すゲイルは、とても穏やかだ。
アレンもゲイルの返答を聞いて、何だか嬉しそうにしていた。
少しだけ天国の母に会いたくなった。
「そういえば、ゲイルの属性は何なの?」
「…俺か?元々は水だが
色々あって火、水、風、土だ。」
「え、凄い」
『マリー、こやつは精霊に好まれやすい体質でな。
今は我が傍にいる為に他は遠慮しているが、沢山の精霊に押し寄せられ潰されかけるゲイルは中々の見物じゃぞ』
まさかの四大元素。
漫画では、ゲイルの属性は描かれていなかった為気になっていたのだ。
多分あの頃はまだ水のみだったのだろう。
作者があのタイミングで思い出したかのようにゲイルを登場させた理由が分かった。
こんなチートキャラ、書かざるを得なかったのだ。
精霊に潰されかけるゲイルは全く想像出来ないが、少し見てみたい気もした。
楽しく話している内に森を抜けた。
森を抜けた所でアレンは
『ちと用事を済ませてくる』と言って何処かに行ってしまった。
2人だと意識してしまうが、初めて目にする光景に胸が高鳴る。
そこは煉瓦の街並みが広がり、色とりどりの花々が咲き乱れた美しい街だった。
森も緑が輝き、静かで綺麗な場所だな
と思っていたが街も色鮮やかでとても素敵だ。
少し大きな道に入ると
露店が並び、呼び込みで活気溢れている。
お昼時なので、良い匂いがそこかしこから香って空腹を刺激する。
ゲイルが『ボストン料理店』と書かれた店の前で止まり、ここで飯にしようと言ったので大きく頷き中に入った。
「らっしゃーい!!お、ゲイルじゃねぇか!森から出てきたのか、買い出しか?」
「あぁ、似たようなもんだ。ボストン、今日は連れも居るから何時ものやつ二人前な」
「あいよーー!って、連れ?ーーこりゃまた別嬪さんだな、コレか?」
ボストンと店名と同じ名前を呼ばれた少しガサツそうなその男性は、厨房から身を乗り出しゲイルと話し出し
私を見ると小指を立てていた。
私は別嬪さんでも何でもないが
異世界にもそのハンドサイン有るんだ。
見て、今すぐ見て
ゲイルの眉間の皺。