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第六話 サイファ・フォーゼン

 晴れ渡る空。

 光輝く陽光が洞穴に射し込み、暗闇を照らす。

 俺の顔が太陽の光に照らされた。目を瞑ったままながら、眩しい感覚が目を襲った。

「ん……んあー…朝だぁ…」

 上半身を伸ばし、布団代わりのフィーの寝巻きをよけ、ゆっくりと立ち上がる。

 いい朝だ。すぐにでも出発できるな。

「ふぁぁ……」

「お。起きたか?」

「…んん…」

「なんだって?」

 よくわからんが、多分あれは肯定の意志を示したのだろう。多分。

「ラルぅー、今何時?」

 フィーも立ち上がり、身体を伸ばしている。

 見とれていたいところだが、首にかけている時計を確認してみる。時刻は、長針が七、短針が二五を指していた。

「えっと、七時二五分。」

「まだ早くない?もうちょっと休んでようよー」

 俺もそうしたいところだが、それがそうもいかない。

 魔除けの松明は効果を発揮していたようだが、父さん曰く、松明は点けてから約六時間以降は、魔除けの効果を発揮しなくなるらしい。なんでも、周辺の魔物が火に慣れるのだとか。

 どう考えても六時間は有に過ぎていたが、ここらの魔物が弱かったお陰か、松明の火は消えていなかった。だがじきに来るだろう。早めに此処を去るのがベストだ。

「魔除けの火はいつまでも続かないんだ。早めに此処を出発しよう。」

「ちぇー、仕方ないか。」

「それでいいそれでいい。」

 不機嫌だったが、今回は我慢してもらわなければな。

 寝巻きと、食料を馬車に積み、俺達も乗る。

 ここで、あることに気づく。

 始めにフィーが切り出した。

「そういえばさ」

「ん?」

「ラル、馬を進められるの?」

「あ…」

 たしかに。

 俺は馬に乗ったことはあるが、小さい頃、父さんとか、騎士と一緒に遊びで乗せてもらった程度だ。

 やり方はそう難しいものではないと思うが、どうだろうか。

「ちょっとやってみるよ。」

「うん。」

 一度馬車を降り、馬に乗ってみる。

 たしか、こうだっけ。

 両足で、馬の腹辺りを軽く蹴る。

「おお!」

 すると馬はゆっくりと前進し始めた。

「すごいね!ラル!」

「いや、なんか父さんがやってたの思い出してさ。」

 乗ってみると簡単だった。

 すぐに街道に出て、一端馬車を止める。方角を確認するためだ。

「フィー、その辺にコンパスあるから取って。」

「はいはーい。」

 フィーはすぐに見つけて俺に円形のコンパスを渡してきた。

「サンキュー。」

 針の方向を確認する。

 今向いてるのが東だからこのまままっすぐだな。確認するまでもなかった。

 再度馬を歩かせる。

 走らせないのは、大量の荷物のせいだ。こうなるとありがた迷惑だな。

 俺達はゆっくりと東へと進んでいった。









 




 世界の東端の国。和と娯楽の都「青龍」。

 自然に恵まれながら、独自の文化を生み出していった先進国だ。

 並ぶ瓦屋根の建物。それを照らす蛍の様な優しい明かり。

 青龍の大きな特徴と言えば、

 独自の言語。

 特徴のある獣耳と尻尾のついた人々。

 などだろう。

 まず、青龍独自の言語。なまりがあり、他国の者では通じにくいであろう。

 では青龍の民の世間話に耳を傾けてみよう。

 とある酒場での店員と客の会話だ。

「サイファはん!よう来てくれはりましたなぁ!今日はー、どないしました?」

 狐の様な耳、狐の様な細い目、そして狐の様な長く丸い尻尾を持った店員が一人の客に景気よく話しかけた。

 サイファ。

 そう呼ばれた男は、容姿からしてこの国の者ではない。

 アルクリア王国、つまりアルロスの国から来た者だ。

「酒を飲みに来ただけだ。」

 と、言ってはいるが、彼はまだ酒を飲むには見た目的に判断してもかなり早い。

 背丈は低く、顔もまだ幼さが残る。薄紫の耳が隠れるほど伸びた髪。この髪の色はどこかで見た気がする。

「いいんでっか?サイファはんはまだ十五やろ?あんまし酒は飲まれへんほうがええんとちゃいますか?」

 サイファは気に入らない様子で、店員を睨んだ。

「うるさい。さっさと持ってこい。持ってこなければ、依頼を受けてやらんぞ。」

「へい。失礼しやした。すぐに持ってきます。」

「ふん。」

 店員は小走りで注文の酒を取りにいった。

 彼は三年ほど前からこの国に滞在している。

 彼の目的を知る者は、この国の都主と、残り少数のサイファの知り合いの人間だけだ。

「お待ちどうさん。」

 言うと、一杯の少し白みがある、ほぼ透明な酒をちゃぶ台に置いた。

「サイファはん、あとどのくらい青龍にいてはるんですか?」

「さあな。俺はこの国が気に入った。飽きるまでここにいるさ。」

 狐の店員は、サイファの言葉を聞くなりとても喜んだ。

「ほんまですか!?いやぁーうれしいですわー!」

 サイファは、狐の様子を見て、少し口元を緩めた。彼は普段笑わないのか、狐は少し驚いていた。

「ところで、コタロー。」

「へい、なんでしょう?」

 サイファはコタローという狐に話題を投げかけた。

「アルクリアについてなにか情報は入ったか?」

「へい。なんでも、第一王子のラルララクが国から出たとか。」

「なに?兄貴が?」

「えぇ、理由まではぁ掴めなかったんです。面目ない。」

「いや、十分だ。ご苦労。」

 語尾の言葉と共に銀貨を懐から出し、コタローに差し出した。

 彼は銀貨を受けとると、満足そうな顔で厨房に戻っていった。

「そうか……兄貴も家出か……いや、兄貴に限って家出はねぇか。だとしたら……」

 ラルのことを「兄貴」と呼んだサイファ。

 彼の名字はフォーゼン。

 サイファ・フォーゼンだ。

「ま、どうでもいいか。俺にとっちゃもう兄貴のことなんかどうでもいい。兄貴もどうでもいいと思ってるだろ。俺はこうして楽しく生きれればそれでいいのさ。」

 酒をグビグビ飲み始めるサイファ。一気飲みした。

「ぷはぁ!うまい!やっぱ青龍の酒は最高だ!おい!コタロー!もっと持ってこい!」

 奥の方で へい! と、なまりの利いた声が響いた。

 彼は青龍の国で自由気ままに生きている。

 この後、なにが起こるかも知らずに。








 アルクリア街道、東へと続く道。

「お、あれ街か?」

「え!どこどこ!」

 あれから三十分ほどで、城壁に囲まれた街が見えてきた。それほど大きくはないが、まともな街ではあるだろう。

 とりあえず、そこに向かうことに決定した。

 城壁のすぐそばまでいくと門前に兵士がいた。

「止まれ。」

 言うとおりに手綱を引っ張り、馬を止める。

「何者か?名と出身を言え。」

 なるほど、入国審査ってやつか。

「南方のアルクリアから来た。ラルララク・フォーゼンだ。」

「なっ!?ラ…ル……失礼いたしました!王子。ですがなにゆえ国から護衛も無しに出られておられるのですか?」

 うわぁ、王子の名前名乗った瞬間にこれか。

 まあさすがに隣街じゃ当たり前か。

 ていうか、事情はどう説明したもんか。

 勇者になって旅に出ることになった。って言ってもいいのかな? どうも心配だ。ここで言ってしまったら、そのうち風の噂でアルクリアまで流れていきそうだな。それは避けたい。

 でも、何て言おうか。

「まあ、いずれわかるよ。とりあえず、入っていいんでしょ?」

 適当に流すことにした。

「え、えぇ。では。ようこそ、トーラスの街へ。」

 トーラスか。

 アルクリア以外の街の名前、全然知らないからな。どんなもんか楽しみだ。

 馬から降り、手綱で引っ張りながら歩く。こいつ結構素直についてきてくれるな。良い子だ。

 開きっぱなしの門をくぐると、俺の好奇心をくすぐりまくる光景が、視界全体に広がっていた。

「うおー!結構でかいな!この街!」

「ねぇ!お店が沢山並んでるよ!あぁ、全部見て回りたい…!」

 こりゃすごい。

 石造りの真っ直ぐな道にそれはもう沢山の店が並んでいる。種類も様々。冒険者が立ち寄るような武具の店や、民間人で溢れかえっている、さぞ繁盛しているであろうレストラン。

 どれも興味が湧くものばかりだ。たまらん。

 しばらく城の生活を送っていた俺とフィーにとって、こういうところは新鮮で最高に楽しい。

 楽しいのはいいが、とりあえず、馬車を置いておける場所がほしいな。探すか。

「フィー、馬車を置いておける馬屋を探してくれ。」

「それならあそこだよ!ほら!」

「え?はや。」

 やはりフィーは俺以上にテンションが上がっている。当然か。フィーの方がよっぽとこういうところに来たかっただろう。

 さてと、フィーが指差したのはあっちか。

 それほど遠くなかった。むしろ近い、すぐそこだ。

 

 馬屋には、かなり沢山の馬たちが柵に鎖で繋がれていた。どれも旅の者が乗ってきた馬らしい。俺も料金を払い、馬車と共に馬を預けた。


 馬車からは、金貨二枚ほど取り出しておいた。

 

 説明しよう。

 金貨とは、この世界の通貨の一番高い価値の通貨である。日本円的に考えると一万円だろう。

 つまり、ラルが現在持っている金額は二万円ということになる。

 ちなみに、銀貨は千円、銅貨は百円と考えると良いだろう。


 以上、解説からお送りいたしました。


 さて、色々見て回りたいとこだな。フィーもさっきから目をキラキラさせている訳だし。

「ねぇラルぅ!あそこ!あれなにしてるのかな?」

「ん?なんか人だかりが出来てるな。」

 数十人の人だかりが、奥の広場の方で集まっていた。

 近づいてみると、人だかりの中心には一人の若者がいた。

 目に眩しい金の短髪に、黒色の眼。

 左肩と胸、それに両膝に鉄の防具を装備している。防具以外は、なるべく軽量化した布面積の少ない衣服だ。

 腰には、先日の暗殺者が持っていたような幅広な剣が差されていた。典型的な姿の剣士だな。

「俺に剣で勝てると思う者は前へ出ろ!勝ったら金貨五枚!逆に負ければ金貨五枚支払ってもらう!さあ、腕に自信があるヤツはかかってこい!」 

 へー、こんなイベントじみたこともあるんだな。

 てか、金貨五枚だと!?すげぇ金額だな。

 しかし剣試合か、これは

「ラル行ったら?」

 てことになるよな。

「アイツが強そうなら行くよ。」

「それって、誰か出てくるのを待つってこと?」

「そういうこと。」

 俺は深く頷く。

 正直、弱い相手と戦っても面白くない。

 まずは奴の強さを見てからだな。まあ、あの様子だと、相当な自信があるようだけど。

「よっしゃ、俺が相手してやらぁ!」

 威勢の良い声と共に、身の丈ほどある大剣を持った大男が前に出てきた。

 そいつの姿を見たギャラリーはかなりわいた。

「おう!来るが良い!」

 若者は、腰から剣を抜いた。

 実に普通の剣だ。鉄で出来ているであろうその刀身は幾つもの傷がついているのが、遠目でもわかった。

 もしかして、実は歴然を征してきたすごい剣士だったりして。

 ちょっと期待して今度は、目を大男の方に向ける。

 彼は筋骨粒々の超マッチョな、剣士というより戦士というほうがっくりくるであろう。

 茶色っぽい黒髪を刈り、髭を立派に伸ばしている。

 そして、その巨体に異様にマッチしている大剣は装飾はなく、いかにも丈夫そうな銀っぽい金属で出来ている。

 正直にカッコいいと思うよ、かなり。

 金髪の方が、高く声をあげた。

「我が名は、マッシュ!マッシュ・エルトリアだ!」

 太古の英雄を思わせるような口振りで、マッシュと名乗った男に続いて、大剣の方も野太い声で名乗った。

「俺の名は、ダグルス・ロー・ゴーンだ!」

 ダグルスが名乗り終えるとマッシュがもう一声。

「では、いざ尋常に…」

「「勝負!!」」

 二人は同時に叫んだ。

 なんか暑苦しい感じはするが楽しそうだな。俺も出たい!

 でもあの勝負、大剣の方が勝ちそうだな。明らかに力量と質量が違いすぎる。

 だが。

 俺の予想はいとも簡単に打ち砕かれた。

ラルはアルロスに大量のお金を貰っていましたが、

あれは百万ぐらいだと考えてます。

つまり金貨百枚。とんでもない。

息子に百万のお小遣い……

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