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わーるどいくじっと  作者: いりゅーなぎさ
Episode of "Haiji Kirisaki"
23/32

GAME.6「True or Fake」その3

俺はミュウが喋り出すのを待たずにどこにいるかを問いただしていた。

「えー、現在この電話は諸事情によりお繋ぎすることは出来ません。っていうか、ダメですよ、霧崎灰次さん。こんなあからさまな手段を私が許すとでも思っていたのですか?」

ちぃ。先に手を打たれていたか。

「霧崎灰次さん。妹さんとお話がしたければ、私が用意した電話をお使いくださいね。では」

電話が切られた。

きっとどこに何度俺のスマホから電話しようとも、奴に繋がるようになっているんだろうな。くそっ。

スマートフォンをポケットにしまい、ベッドに倒れ込む。

どうする? あの電話でミュウに連絡を取ってみるか?

……俺は、ミュウと話せば本物か偽物かがわかるのか?

もし、ミュウが偽物だとわかったら、俺はミュウを排除できるのか?

少し、情報をまとめた方がよさそうだ。

確実な偽物は、一人いる。龍臣は――偽物だ。

龍臣は死んだ。それは間違いない事実だ。――報道は死亡が完全に確認されたからこそ、死亡を伝えることが出来るんだ。

実は死んでいませんでしただなんて、ありえない。

スマホを取り出す。検索ワードは『藤吉龍臣』。

最初にヒットしたのは、建築中のビルでの転落死のネットニュースだ。

さらにヒットした項目を読み進めていくが、同姓同名の別人と思える内容のペーシはいくつもあったが、転落死からよみがえった男のニュースなんて微塵もなかった。

他のプレイヤーはどうだ?

ミュウは、あの場で一言も喋らなかった。

神凪がしゃべったのは、龍臣とまつりの仲裁に入った時だけだな?

ミュウと神凪がこのゲームに参加しているとは考えられない。――いや、それは俺の願望だな。何か、参加しさざるを得ない理由があるとすれば――ミュウは、本物の可能性が高い。

朝のミュウを考えると、奴が俺へのペナルティをなくす方法を教えると言ってミュウをそそのかしたとしたら、ミュウはこのゲームに参加してもおかしくはない。

吉法師とまつりはどうだ? まつりは正直わからない。ただ、俺とは違ってまつりには連続でゲームに参加する理由はないはずだ。まつりは偽物か? だが、まつりはアルファベットカードに執着している。『T』のカードを持っていないから参加したってのは、あり得る話だ。

吉法師もまだ判断ができない。判断するには情報が足りなすぎる。

連絡をとるか? 吉法師と会話できれば、本物か偽物かは判断できなくても、有益な情報を手に入れられるかもしれない。

俺はベッドから起き上がり、奴の用意した電話に手を伸ばした。

電話に触れようとしたその時だった。

俺の部屋中に警報が鳴り響きだした。

「警告。警告。残り60秒で霧崎灰次様は追放となります。警告。警告――」

! 誰かが俺を偽物と判断してスイッチを入れやがったのか?

いや、入れたのはアイツだな。理由はわかっている。

俺は待機部屋を飛び出し、円卓の部屋へと駆け出した。


「ようやく穴蔵から出てきたな、霧崎」

円卓部屋では、龍臣が待ち受けていた。

「やっぱりお前だったか、龍臣」

スイッチに手を伸ばし、『追放』に入っていたスイッチを『OFF』に戻した。

「俺がスイッチを戻すのを妨害はしないんだな?」

龍臣が妨害に来ると思っていたが、龍臣はその場を動かなかった。

「てめぇは俺の手でぶっ殺す。誰にも邪魔はさせねぇよ」

俺と龍臣が睨みあう。

「それでは、霧崎灰次さんと龍臣さんの決着の舞台、私が用意して差し上げましょう。あなた方の決着をつけるのに、いい舞台がありますよ?」


円卓の部屋が、なにもない空間に変わる。

円卓の部屋がなにもない空間に入れ替わったのか、それとも俺たちが円卓の部屋からなにもない空間に転移させられたのかはわからない。

だが、それはどうでもいいことだ。

今は未練たらしくこの場に現れたこの亡霊を叩きのめすのが最優先だ。

「では、簡単にルールを説明しましょう。この空間の真ん中にカードが山積みされているのがわかりますよね? そのカードを引くと、ひらがなが一文字だけ書かれているカードが手に入ります。そのひらがなが最初につくモノを想像すれば、カードはそれに変わります。あとはお好きにやりあっちゃってください。――そうそう、最初の一枚は公平にお二人に渡しておきますね? 追加で得物が欲しい場合は山札からどうぞ」

カードがそれぞれの頭上から舞い降りてくる。

暗黙の了解。特に取り決めをしたわけじゃない。だが、俺たちは感じ取っていた。

落ちてくるカードを手にすると同時に、戦闘開始ということに。

今、互いにカードを手に取った。――ゴングだ。

俺はカードを確認する。――『き』。くそっ、思い付かないか。

龍臣は?

龍臣の手には鉄パイプ。『て』を引いたのかよ。

龍臣が鉄パイプを手に一気に距離を詰めてくる。

くっ。やはり運動能力は龍臣の方が上か。

そして、龍臣は躊躇することなく、おもいっきり鉄パイプをフルスイング。完全に俺の脇腹にロックオンされている。これを喰らえばただではすまないだろうな。

――鉄パイプは俺の脇腹にクリーンヒットする。そして俺の身体は宙を舞い吹き飛ばされる。

吹き飛ばされはしたが、俺はたいしてダメージを受けてはいなかった。

『キルボアール』。俺がとっさにカードから作り出した得物だ。

[*キルボアール『特殊な加工で強化された皮製の鎧。その強度は鉄製の鎧を凌駕しているとか』]

危なかった。とっさにキルボアールを思い付かなければ一撃でやられていた。

「ちっ。鎧なんか作りやがって。まあいい。次は防げんだろうよっ」

龍臣の言うとおりだな。龍臣が次に狙ってくるのは鎧で防げない、手足か頭だろうな。――追加のカードがいるな。

龍臣にカード狙いを悟られないように――

俺は龍臣から距離を取りながら、円を描くように動き、カードの山札が置かれている中央の台を見据える。

龍臣が右足を踏み込んだ。――来る。

俺はカードの山札に手を伸ばした。だがそれは龍臣に読まれていた。

龍臣は山札に向かって伸ばした俺の右腕目掛けて鉄パイプを降り下ろす。

よしっ、誘いに乗りやがった。

俺は即座に右腕を引っ込めた。龍臣の鉄パイプは、山札の置かれた台を強打する。

その衝撃で、山札から大量のカードが舞い上がった。

俺は舞い上がったカードに手を伸ばし、カードを得る。

すぐさまにカードの文字を確認する。その文字が『す』であることを一瞬で認識し、それを龍臣の顔面向けて投げつける。

カードは『砂』に変わり、龍臣の視界を奪う。

さらに俺は床に落ちたカードを拾い、確認する。

また『き』のカード。だが、さっきは咄嗟で思い付かなかったが、今は龍臣の鉄パイプに対抗しうる『き』が頭文字の得物が思い浮かんでいる。

こんどは俺が龍臣の顔面に向けてフルスイングを決める。

『き』のカードは『金属バット』に姿を変える。

そして、俺のフルスイングは龍臣の顔面を強打する。

龍臣がその場に倒れ込む。

龍臣の鼻骨は砕けた。龍臣はもう激痛で動くことすらできないだろう。

俺は勝ちを確信していた。――だが、それが甘い考えだとすぐに気付かされることとなる。

俺が勝利を確信したその直後、俺の右足の太ももに燃えるような激痛が走る。

太ももを確認すると、ナイフが俺の太ももに刺さっている。

龍臣が倒れ込んだ時に、床に落ちたカードを拾っていたのだ。

龍臣が拾った『な』のカードは、ナイフへと変化し、それが俺の太ももに刺さっている。

鼻の骨を砕かれてもなお、俺を刺しにくるとはな。どうやら根性だけは本物の様だな、龍臣。

俺は右足をひきずりながら、龍臣から少しでも離れようと試みる。

龍臣のそばには俺が落とした金属バット。龍臣があれを手にしたら、この状態では非常にまずい。

龍臣が金属バットを拾い上げ、バットを杖のように使い、身体を支えながらその場に立ち上がる。

「手こずらせやがって。これで終わりだ、霧崎っ」

龍臣がバットを振り上げた。

「なぁ、龍臣? 知ってるか? 地雷ってもんはな、踏んだ瞬間には爆発はしないんだ。踏んで起爆スイッチを起動させたあと、そのスイッチを離した時に爆発するもんなんだよ」

龍臣が振り上げたバットが突然、爆発する。

俺は床に落ちていた『じ』のカードを使い、地雷を作っていた。そして、その地雷は俺の作った金属バットの先端に融合するイメージを浮かべて作ったモノだったのだ。

驚くべきは龍臣の根性だった。ボロボロの状態で地雷の爆撃を受けたというのに、まだ俺に攻撃を仕掛けようとしてくる。

黒こげとなり、先端部分が吹き飛んでなくなったバットを振り上げ、そして俺に向けて降り下ろしてきた。

俺の血が噴き上がる。――俺の太ももから大量の血が噴き上がるのと同時に、バットを振り上げていた龍臣の喉元にナイフが突き刺さっていた。

俺が、俺の太ももに刺さっていたナイフを抜いて龍臣の喉元に突き刺したのだ。

龍臣がその場に倒れた。それと同時に対戦空間だった場所が消え、円卓の部屋の光景が俺の周りに現れる。

決着がついて戻ってきたのだろう。周りに龍臣の姿はない。

円卓上の機械に目を向けると、機械のスイッチの数が5つに減っていた。

龍臣は、排除されたのだ。俺の、この手によって。



それは、霧崎とあの龍臣と呼ばれていた男が戦っていた時のことだった。

部屋のテレビを介して、その戦いの様子を見ていた私に、一本の電話がかかってきたのは。

部屋の電話が突如鳴り出し、私は電話をとるため立ち上がった。

電話本体に目を向けると、『吉法師信市』と書かれているボタンが光っていた。……この、吉法師信市が私に電話を掛けてきているということなのだろうか。

私は受話器を手に取った。

「もしもし」

「突然のお電話で申し訳ありません。ですが、いましかないと判断したのでお電話を掛けさせてもらいました」

「いましか、ない?」

彼の言う『いましかない』というがわからない。どうして、彼はこのタイミングで私に電話を掛けてこなければならなかったのか。

「霧崎さんと龍臣さんが別空間でやりあっている今なら、奴の――このゲームの管理者の目がこちらに向いていないはずですからね」

「……どうして私なんですか?」

吉法師という人が、どうして面識のない私に連絡を取る必要があるわけなの?

「どうしても、あなたには伝えておかなければならないからです。――このゲームの本物のプレイヤーの一人である、神凪 明日穂さん。あなたに」


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