番外編SS 『冷静副会長に映る世界〜ソノの恋エグ3考察日誌②』
※この日誌は、あくまでソノの考察と個人的感想に基づく記録です。
――夜。
自室の机に向かい、私はいつもの手帳を開いていた。
定期考査に体育祭の予算危機、そして怒濤の転入生襲来――。
ここ数週間の出来事は、乙女ゲーム『恋エグ3』のメインルート一章分に匹敵する、極めて濃密なイベントの連続だった。
ヒマリさんの無自覚な「光属性パワー」は留まることを知らず、癖強めな男子陣の心の壁を次々と粉砕している。
ここに、最新の「恋愛フラグ」と「好感度状況」の観察記録を更新する。
【観察記録01】
黒崎 凌(メインヒーロー枠 / 属性:ツンデレ・無自覚チョロイン)
推定好感度:85(無自覚ゾーンほぼ突破・自責の念と葛藤中)
第六話の「シール事件」にて、自ら告白したも同然の「満月と新月」理論を暴露され、精神的ダメージで自爆。
しかし、第八話〜第九話の体育祭予算トラブルでは、会長としてヒマリさんの提案を信じ、共に頭を下げて乗り越えたことで絆がより深まった。
現在の課題は、第十一話で突如現れた「幼馴染」への嫉妬心。
本人は「生徒会長としての懸念」だと言い張っているが、顔に出てしまっていることに本人は気づいていない。
【観察記録02】
水川 斗真(腹黒・ドS枠 / 属性:歪んだ執着・仮面防衛系)
推定好感度:75(「気になる存在」から「壊したくない宝物」へ)
第十話でついに大技「僕のこと、好きにならないでね」を発動。
過去のトラウマから「誰も本気で好きにならない」という防衛線を張っていた彼だが、ヒマリさんの眩しさに惹かれる自分を恐れ、あえて牽制を入れるという屈折したムーブを見せた。
しかし第十一話、ストレートな熱意を持つ幼馴染の登場により、これまで保ってきた「余裕の笑み」に明確な焦りの亀裂が入る。
ヤンデレ化へのカウントダウンが始まった感がある。
【観察記録03】
滝沢 環季(隠れ複雑枠 / 属性:トラウマ克服・急浮上した本命候補)
推定好感度:75(防波堤が完全決壊)
今回のMVP。
第八話での「二十五万円不足事件」を通じ、家庭のトラウマをヒマリさんに開示。
「誰も犠牲にしない第三の道」を示され、思わず放課後の生徒会室で抱きしめてしまうという超大型スチルイベントを回収した。
「一線を引く傍護者」気取りだった男が、ヒマリさんの前でだけ見せる熱い一面と照れ顔。
ギャップ萌えの破壊力としては作中トップクラスである。
【観察記録04】※新キャラクター追加
大嶌 良樹(隠しキャラ・追加攻略枠 / 属性:若草色大型犬・ストレート幼馴染)
推定好感度:90(初期値カンスト寸前スタート)
第十一話で彗星のごとく現れた、190cmの大型新人。「ヒマリが強い人が好きと言ったから」という理由だけで身体を鍛え上げた、一途かつ重度のアプローチ力を持つ。
体育委員長という重要ポストに即座に収まり、出会い頭に「大好き」と言い切る姿勢は、これまでの牽制し合っていた男子陣を一気に置き去りにする爆発力がある。
【総評と観察者のスタンス】
ヒマリさんが蒔いた種が、見事に各攻略対象のトラウマを芽吹かせ、そして救済へと向かっている。
余談だが、第七話でヒマリさんに「凌会長のこと……」と私の心情を勘ぐられた時は冷や汗が出た。
私はあくまで、前副会長サクラ先輩から『凌くんを支えてあげて』と託された任を全うしているに過ぎないのだが……ヒマリさんの洞察力も馬鹿にできない。
さて、いよいよ夏休み、そして体育祭本番が迫っている。
「好きにならないで」と牽制する斗真くんと、「大好き」とストレートに伝える良樹くん。
そして自覚のないまま嫉妬の炎を燃やす凌会長と、恩義と恋心の間で葛藤する環季くん。
四者の想いが複雑に交錯する中、ヒマリさんは「好き」という言葉の本当の意味に気づくことができるのだろうか。
手帳を閉じ、私は夜空に浮かぶ月に視線を向けた。
「……ふふ。今年の夏は、これまで以上に熱くなりそうですね。」




