第14話 認められない
向かった先は近所にある広い原っぱだった。体育会系の学生が自主練をしたり、休日には犬の散歩やボール遊びをする人がいたりと、多目的に利用されている広場だ。
人気のない片隅で、アッキーが軽く柔軟体操をする。
「アタシねぇ、心底ユッキーに惚れてるし愛してる。だからお見合いがなかったら婚約者にする予定だったし、お見合いが来たらその相手を見定める予定だった」
「暁山の観察眼ではどうだった?」
アッキーに合わせる様に鈴木さんも、首を回したり肩を回したりする。
「家柄も仕事も申し分なし。優しいし気遣い出来るし、ユッキーを見る目が本気なんだよね。本当に愛してるんだね!」
アッキーが鈴木さんに親指を立てる。愛してるの言葉に頬が赤くなる。
「でもねぇ、頭が納得しても心が納得出来ない。中等部からの付き合いだけど一緒に居た期間は長かったし、誰にも横取りされたくない。だからゴメンね。私の憂さ晴らしに付き合ってくれる?」
「…勿論だ。ただ俺は細身で武術タイプじゃない。コレを使わせて貰う」
そう言って鈴木さんが腰から小刀を抜くように、細い棒状の物を取り出した。
パチン、と乾いた音を立てて扇子が開く。
「なにそれ?」
「扇子?」
「鉄扇」
「「かっこいーーー!」」
私とアッキーは声を合わせて叫んだ。えっ今の時代、鉄扇で戦う人いるの?ゲームで大っきいのを使ってるのしか見たことない!けど鈴木さんは普通の扇子と同じサイズのモノを手にしている。
「『結界展開、急急如律令』」
そう言うと共に鈴木さんとアッキーを取り囲む様に、薄い膜の様な結界が出来上がる。薄い膜なのに触ってもビクともしない。
半神や鬼人は、人間には扱えない特別な力を使える。その力の呼び方は国や文化によって異なり、「魔法」や「術式」など様々だ。
そして鈴木さんは陰陽師の家系の出身だから、陰陽師の術としてその力を扱うらしい。
「鈴木さん!?」
「半神同士の組手だからな。それに隊員の俺が一般人を巻き込んだら始末書物だ…安心しろ、お前の友を傷付けるつもりはない」
「へぇ~優しい事言ってくれるじゃん。言っとくけど『パンチラに気を取られて負けました』なんて言えないように、わざわざズボン履いてきたんだから派手にいかせてもらうよ」
「いつでもどうぞ」
そう言って鈴木さんがアッキーの方を向いて、鉄扇を閉じて棍棒のように構える。
それを見てアッキーが目をギラつかせる。
「それじゃあいく…よ!!」
アッキーが麒麟の馬力で一飛びして一気に間合いを詰める。アッキーが渾身の蹴りを食らわせようとすると、それを鈴木さんが鉄扇で蹴りの軌道を逸らしたのか、身を翻して躱す。足元の砂利が砂埃の様に舞った。
「武術タイプじゃないの!?武術タイプの隊員ってどんなバケモンなんだろう………」
アッキーの蹴りは強力だ。昔サッカーボールをパンクさせた事もあるアッキーの蹴り。 それを鈴木さんは鉄扇一本で受け流した。
「アッキー!鈴木さん!」
「強ーい!渾身の蹴りだったのに避けられちゃった!」
「伊達に厳しい稽古と特殊討伐隊はやってない」
「わかる!稽古と修行キツイよねぇ!!」




