第13話 推しの子孫
「ユッキーって“土御門家”って知ってる?」
「え?確か陰陽師の家系だっけ?」
「そうそう、その分家で黒い狐の半神が生まれて一時的に栄えたけど、数年間で一気に没落した家があったんだよね」
「待て、俺は婚約者に隠し事をするつもりは無い。全てを話す予定だ」
鈴木さんが手を伸ばしてアッキーを制止する。土御門の分家に黒い狐の半神が生まれて栄えて没落した?そんなのどう考えても鈴木さんの生まれた家じゃん。
「だが土御門は知っている様だが陰陽師の事は素人だろうと、説明の仕方を模索している所だ」
「それなら簡単ですよ。ねぇユッキー。LEGEND/LOVERSってゲーム今もやってるの?」
「え?LL?勿論やってるよ」
「…何だそれは」
「えっと花人の主人公が、現代に蘇った古今東西の半神か鬼人の英雄と共に、世界の危機を救うアクション恋愛ゲームです」
「それでユッキーの1番の推しは?誰を選んだんだっけ?」
「蘆屋道満っていう黒い九尾の半神!格好良いんですよ!晴明を敵対視してるけど努力家で、主人公を脆弱な小娘と侮って最初は敵対したけど、戦いを終えてピックアップガチャを引いて手に入れて、ルートに入ってみたら、美しい獣って呼ばれていて妖艶だけど力強くて、いつもは主人公を誂うけどいざという時は助けてくれる最高の恋人兼推し!」
「それ」
「え?」
私は蘆屋道満の魅力を伝えるべく熱弁すると、アッキーに“それ”と言われてフリーズする。どういう意味?
「鈴木一郎さんの正体、蘆屋道満の子孫で黒い九尾で生まれたから生まれ変わりだって言われてる」
「…え?ええ?えーーーっ!?」
私は思わず大声で叫んだ。推しの子孫が鈴木さん!?混乱する私にアッキーが口に手を重ねて、黙らせる。
「はい落ち着いてー。ひっひっふー」
「ひっ!ひっ!ふー!…じゃない!え?本当に蘆屋道満の子孫!?」
「…どうやら説明は必要なさそうだな」
「あの…大丈夫ですか?」
「いえお気遣いなく」
私が叫んだせいで珈琲とか持ってきたウェイトレスさんに、迷惑を掛けてしまった。自分の行動に自分を恥じた。目の前に珈琲やメロンフロートやココアが並び。私は落ち着く為に温かいココアを口に含んだ。
「それに少し訂正が入る。『俺の両親は黒い狐として生まれた俺を見て、“蘆屋道満”を現代に蘇らせようとした』が正しい」
「生まれ変わらせようと…?」
「俺の生まれた時に付けられた名は“蘆屋依代”、依代と書いて「いよ」と読む。名付けた時点で俺個人を見ておらず、先祖の蘆屋道満を俺の肉体を依代に現代に蘇らせようと、修行漬けにした家だ」
「蘆屋、いよ」
昔の事を語る鈴木さんの眉間のシワが深くなり、実家を心底毛嫌いしていると物語っていた。
「女みたいな名前だろ?後に道満と改名させる予定だったから、童名なんてどうでも良かったんだ。そして15の元服の儀式を行う際に、「道満になるためには人間性を捨てなければならない」と教えられ、人の肉を無理矢理食べさせようとした所を、前から土御門に通報されてた禁喰対策局・特殊討伐隊が乗り込んできて御用となった」
「人の肉って…食べたら怪物になるんじゃ…」
「俺という人間の人格を殺す意味で食わせようとしたんだ。俺の家族は俺の教育の為に犯罪行為を行っていたが、俺自身は被害者だったから保護された…その時に俺は家族を殺そうと考えたけど、脳裏に椿を食べさせてくれた女の子を思い出した」
「えっ…」
鈴木さんがそっと手を伸ばして私の頭に生える、椿の花を撫でる。
「前に言っただろ?『アレを食べたお陰で私は人の道を逸れずに居られた』って…俺がこうして家族と同じ外道に落ちなかったのは、由貴さんのお陰だ」
鈴木さんの説明を聞いて頬が熱くなる。それと同時に何故かポロリと涙が零れ落ちた。




