第八話
お医者様のエディス先生が部屋を出た後にジェームズさんとアマルさん、ジョセフさんとナターシャさんの5人で話し合いをすることにした。
体調は、すこぶる良いからね。
私は4人に質問した。始めに私は私という人間について知りたいし、ここでの三歳児の普通というか平均がどの程度なのかを教えて欲しい。そう話した。
私には前世の記憶がある。まだこれは話さないけどね。
3年間こちらの世界にいるけど、前に居たところがアレな感じで放任され放題だったからね。今考えても玩具一つないし絵本もない。ただ食事を与えて寝かされていただけ。私に前世の記憶があって良かった。
だから、こちらの世界の一般常識というか普通がわからないのだよね。なんせ、家庭教師もあの有様だったしね。
ジェームズさんが、「そうだな。マリアについてはなそうか。私達もマリアについて同じ認識を持っていた方がよいだろう。」そう言って説明が始まった。
このお屋敷は、ウェリントン公爵家でジェームズさんが現当主である。
マリアの父親はジェームズさんの次男。長男が亡くなったため今は後継者に指名されている。
以前マリアが住んで居た屋敷は、王都にあるタウンハウスでマリアの父親家族が住んでいる。マリアが居た部屋は使われていない離れの屋敷。
何故マリアが離れに押しやられていたのか理由がはっきりしないそうだが、今は戸籍も移されてジェームズさん夫婦の養子になっている。
ジェームズさんが、あの屋敷の内情が酷すぎてマリアを連れて来てしまったが、バカ息子には明確な理由を問い正し、きっちりと落とし前をつけさせると怖い顔をしていた。
この世界の三歳児については、概ね前世と変わりない特徴だった。ただ、王族や公爵家、侯爵家など身分が高い者の中には、稀に神童と呼ばれる頭脳や身体、魔法などにずば抜けた才能を持つ者が出てくることがある。勿論、身分に関係なく現れることもあるが確率的には低いらしい。
そして、この国について身分や国の特徴、周辺国についてと公爵家の役割や一般常識として知っておく最低限の内容を知ることができた。
私はまだ迷っていた。私が前世を持つことを話すべきなのかどうか。ここにいる4人は信頼できる人達だと思う。しかし、全てを話すことが正しいのか必要なことなのか判断に迷う。小出しにして状況によっては話すでもよいかもしれないと考えた。
次にジェームズさんが倒れた時のことについて、私はジェームズさんに質問した。
王城で何があったのか、どんな生活をしていたのか、食事は?睡眠時は?仕事内容と量は?休憩時間は?それを聞いて改善策と予防策をたてることが必要だと思う。次に同じ事が起こる可能性が高いからだと説明した。4人は私の話す内容と話し方に驚いていた。
いや、まぁそれはそうだよね。三歳児らしからぬ物言いだし質問内容もだし、何より同じ事が起こる可能性が高いというのが驚かせたようだ。また心肺停止するのかと皆さんの顔色が悪くなった。
なんだかなぁ、こちらの世界は病気についての認識?知識?が不足しているようだ。治ったからいいよね!で終わってどうするよ。いや、それ治ったって言いませんからぁ。残念〜〜〜。
聞き取り調査(問診ともいう)をして分かったこと
・朝早くから夜遅くまで椅子に座って書類整理
・食事時間はまちまち、1日一食のことも多い
・休憩時間がないから水分摂取は必要最小限
・毎日の睡眠時間3時間弱
いやいや、どんなブラック企業ですか?
そして、やっと解放されたところに馬車移動してフラフラ状態での帰宅。
そりゃ倒れますし、血液ドロドロ状態だから血管も詰まりますよねって話し。
ジェームズさんは公爵家の生活で、元々書類仕事も多いけど身体もよく動かしていた。
朝は体操からの剣術、書類整理の途中途中でも歩いて移動していたし、何より規則正しい生活としっかり睡眠時間がとれており、尚且つ適切な水分摂取を行なっていた。
それがいきなりのブラックへの転職です。病気になりますがな。
おそらくだが、こちらの世界では病気は治すもので、予防するという概念がないのではないか。
病気になったら治療するね、治ったね、良かったね、って感じなんじゃないかな。
治療も治癒魔法だったりポーションだったり処方薬だったりするんだろうな。
これは追々確認していくことにしよう。
だから、エディス先生が新しい治療に興味津々だったんだろうな。
まぁねぇ、こちらの世界では身体をスキャンしたり、血栓除去するような外科的治療したりしないのだろうな。
それは知りたいと思うよね。救急蘇生術とかもなさそうだよね。(ふぅ〜どうすっかなぁ説明...)
私はジェームズさんに、私が現在の一般的なことについて無知であるからそれを知りたいこと、それを知って自分の中で認識や価値観の相互性を理解しないと説明が難しいことを話した。そして、エディス先生には医療について教わりながら今回の事例を振り返りをしていきたいと話してもらうことにした。
まだ今は、詳しい説明をすべき時ではないよね。
ジェームズさんは、マリアが納得と理解ができたら教えてもらえるということか?と聞いてきたから、そうですね、その時がきたらと返事をした。
魔法のことや魔石のことも知りたい。
ここは、私マリアは魔法が使えますのよという話をしとかないと駄目かな。
そもそも、この家の中で魔法が使える人がいるのかな?
私は問うてみた。魔法が使える人がいますか?と。
なんと、ここにいる4人が全員魔法が使えるそうだ。魔力量に違いがあって使える魔法の程度や内容や時間なんかが違うらしいが全員が使えるんだと。
ジェームズさんが詠唱して小さな火を指先に灯した。あっ、やっぱり詠唱するんだね。
魔法については話をしとくかなぁ、私の魔法は自己流だから知識も得たいんだよね。あと魔石も取りに行きたいしね。
私も魔法が使えると話した。4人は驚いていた。えっ?三歳児は魔法が使えないの?
そうじゃなかった。誰も教えていないのに魔法が使えるだなんてということらしい。そうだよねぇ、私は前世の記憶を頼りに訓練に勤しんだ結果だもの。
魔法について、明日にでも詳しくジェームズさんと話し合うことになった。
流石に疲れてしまった私は、話し合いの途中なのに船を漕ぎ出してしまった。三歳児はお昼寝の時間なのだった。




