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こんな世界で頑張れるもんか 〜今さら娘といわれてもねぇ、知らぬ存ぜぬでございます〜  作者: 与謝野竜胆


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第四十六話

 ビアンカの母親からの話が始まるというので、王弟が「伯爵夫人の話が終わるまでは発言及び私語はしないように」と、特にジャックとビアンカに向けてくぎを刺した。

 ビアンカの母親はあの国の出身だ。どんな話が聞けるのだろか?

とにかく、この不毛なやり取りが終わることを願うよ。


ビアンカの母より

 あの国の法律を含めて全ての基準が魔法に関係するという事については、皆様方御周知のことと思います。

 私の両親は微量ながら魔力を持っていました。しかし魔法を使えるほどにはありませんでした。

そして、生まれてきた私には魔力がほぼありませんでした。両親は先々を考えて、幼い頃に留学ができる国へ行かせることにしました。

 私が3歳の時に妹が生まれて6歳で留学する時まで私の環境は複雑なものでした。

 妹は3歳で魔力があることがわかり、4歳で治癒魔法を使うことができました。きっかけは母親が妹をかばって大けがをした時に大出血をしたことです。

溢れ出る血を見て妹は、血よ止まれと願いました。するとあれほど流れ出ていた血が止まったのです。

母親は止血できたことでお医者様から傷の手当をしてもらうことができました。時間はかかりましたが回復することができたのです。

 そこから大騒ぎになりました。あの国で治癒魔法など使えるものはいませんでしたから。

 妹は聖女の生まれ変わりではないかと持て囃されました。毎日毎日多くの人が妹を訪ねてきては、治療してもらうというより希少な治癒魔法を見せてもらうことで幸運を得られるという根拠のない事を信じる人たちが多かったのです。

 妹の治癒魔法は、かすり傷を治す程度のことしかできませんでしたが来る人来る人がその光景を見ては、素晴らしいとかすごい才能だと褒めるものだから、妹はすっかり驕ってしまったのだと思います。

 段々と何もできない家族を侮るようになりました。

特に姉の私に対しての見下し方が酷かったので両親は注意してくれていましたが、周囲を味方につけた妹は私に嫌がらせをするようになりました。

 見かねた両親が8歳で留学する予定を6歳でさせてくれました。両親には感謝してもしきれません。

 その後の妹の状況は両親からの手紙で知ることになるのですが、私が留学して直ぐに王宮から迎えがあり王宮で治癒魔法の訓練をしながら王妃教育を学ぶことになったそうです。

 妹の幼い頃の状況は元気に過ごしているくらいにしか分からなかったのですが、15歳で王太子と結婚することが決まったころから王宮での振る舞いを耳にするようになったそうです。

 妹は、自分の要求に応じてくれる者だけを周囲に置くようになり、自分勝手に他国へ魔導具を送ってみたり、他国から魔法を使える人達を攫ってきては自分の側近に引き入れたりしたそうです。

 私の娘であるビアンカに接触してきたのは、ビアンカが10歳の頃でした。

 両親のことも見下していた妹が、何故か両親を王宮に呼び出して家族の交流をしようと提案してきたそうです。 

 驚いたのは両親です。王宮という場に緊張もしていたからでしょうか、会話をする中でビアンカに魔力があることを話してしまったそうです。

そこからビアンカと妹の交流が始まりました。

 両親はその時のことを悔やんでいるのですが、私からすれば嫌なら拒絶すれば良かったことをビアンカは率先して妹との交流を持ったのです。

 幼ければ止めさせることもできたでしょうが、狡猾な妹からのアプローチにどんどんと惹かれていくビアンカをどうすることもできませんでした。

 それでも学園では友人関係や先生方からの評価は悪くありませんでしたし成績も良かったのです。

私達は心配が杞憂であればよいがと思っていました。

 ビアンカの偏った思想は妹の影響を受けたためなのでしょうが、ここまで酷いとは。本当に申し訳ございません。と再び謝罪がありました。


 そして、ビアンカの母親はビアンカの方を向いて

「だからね、ビアンカ。

そんなにあの国の王妃のことを慕っているなら、あなたがあの国に行けばいいと思うの。」

 えっえー?である。マジですか?

 「何を訳のわからないことを仰っているのお母様。私は公爵家に嫁いでいる身、夫も子供もおります。あの国に行ける訳がないでしょう。冗談はおよしになって下さい。」とビアンカが母親に攻撃的な口調で絡んでいく。

 「そんなこと関係ないわ。他でもないあなたの両親が決めたことだもの。従ってもらうわよ。

 ビアンカ、あなたさっき言ったじゃない。親が納得してやったことだって。だから私達も決めたの。あなたをあの国に送るって。

 きっと妹だって喜ぶわよ。誘われていたんじゃないの?妹からも。

 ねぇ、ビアンカ

あなたがマリアちゃんにしたことと同じことを私達がしても間違いじゃないわよねぇ。そうでしょ?

 もう直ぐあの国から迎えがくるはずだから行きなさいね。

 あなた達がやったことと同じことを私達がやっているだけよ。だからビアンカ、受け入れられるわよね。」

 突然の展開に取り乱すビアンカ(いや、私も混乱です)

「いや、いやよ。何で私があの国に行かないといけないの。冗談じゃないわ。何を勝手に決めているのよぉ。行けるわけないじゃない。

ちょっとジャック、しっかりして、ねぇたら、何とか言いなさいよ。」

放心状態のジャックを揺さぶっているビアンカ。


 トントントンとドアがノックされた。

直ぐにジョセフさん立ち上がりドアの前に移動して返事をする。

ドアが開き、執事補佐がジョセフさんにあの国から使者が到着したことを伝えた。

 ビアンカの父親が「ビアンカ、迎えが来たようだ。どうするかね?私が君を連れて行くかい?自分で行けるかい?それとも使者の方に君を連れに来てもらうかい?」

「いや、いやです。私は行きません。行きませんから。」ビアンカは顔色も悪くブルブル震えながらジャックにしがみついています。

 ビアンカの父親が「いい年をして我儘を言うんじゃない。親が決めたことなんだよ。

さぁ、ビアンカ、使者の方をお待たせする訳にはいかないよ。それではお願いするしかないね。」

 何と、あの国の使者らしき人達が入室してきました。

そして、ビアンカのところに行き「参りましょう」と言って数人でビアンカを抱え上げました。

 「きゃー、やめて、やめて」大声を出すビアンカ。

 我に返ったジャックは「ビアンカに何をするんだ」と使者に掴み掛かろうとしたところを父上とジョンさんに抑え込まれた。


 さぁーとひと風吹いたかと思うくらいにあっけなく、ビアンカは使者の人に連れ去られていきました。

(これは、マジな展開ですか?)


 私とジャック以外の人達が冷静に対応しているということは、事前に打ち合わせとシナリオがあって、その通りに実行されたということなのでしょうか?


 「どういうことですか?説明して下さい。ビアンカをどうしたんですか?」ジョンさんに押さえつけられながらも叫ぶジャックです。

 父上が「説明するから落ち着いて聞きなさい、王弟もおられるのだぞ。」とジャックに凄んで言って聞かせる。

 「分かったから放せ」とジョンさんに言うジャック。解放されると服装を整えて席に座った。


 ビアンカの父親が

「ビアンカは叔母のところにやりました。これは親である私達が決めたことです。

 マリアちゃんの誘拐事件のことを聞いてから、王弟殿下と公爵家のご夫妻とは何度も相談をいたしましたね。

 ビアンカはあの国の王妃である叔母を慕っておりました。だからあの国の現状はここにいる誰よりも詳しく知っている筈です。にもかかわらず自分の娘をあの国に送ろうなどと考えるとは、とてもじゃないが親がする所業とは思えません。

行くならビアンカ本人が行くべきなのです。行ってみて現実を知るといい。」


 ジャックは再び呆然です。

いやいや、ジャック、この流れから次は自分の番だと分かるだろうに。ぼぉーとしてる場合じゃないから。


 父上がジャックに

「ジャック、お前はこれから公爵領の最も魔物討伐の厳しい土地に行き騎士として功績を上げることに尽力しなさい。

 公爵家を継ぐよりも元は騎士を目指して頑張っていたお前には向いていると思う。

すまなかった。お前には重荷だったのだろう。もう肩の荷を下ろして自分の進みたい道に進むといい。」そう告げた。

 「いや、何を言っているのですか父上。私は公爵家を継ぐことを重荷だなどと思ったことはありません。これからも尽力していくつもり…」

 その言葉を遮るように父上が

「もうお前に公爵家を任せることは出来ないと判断した。決定事項だ。

 ジャック、早急に準備をして領地に向けて出発するんだ。

 そして、二度と領地から出ることは許さん。監視もつける。」厳しい声でそう告げた。

 項垂れるジャックをジョンさんが黙って促した。

私は部屋を出て行くジャックの背中を見つめた。


 母方の祖父母が私の前に来て

「ビアンカが迷惑をかけてごめんなさいね。何度も怖い思いをさせてしまったわね。早く気がついてあげられなくて申し訳なかったわ。

謝罪をするけれど許さなくてもいいから。

 これからはマリアちゃんが幸せになれることだけを考えてね。私達に出来ることは相談して頂戴ね。

 ビアンカの両親である私達と関わりを持ちたくなければそれでもいいのよ。

 あなたが幸せであることが私達の願いだから。」そう言って私に深く頭を下げた。

 私は何と返事をすれば良いのか分からなかった。

暫く考えてから「今はどうしたらいいか分からないから、これから考えてお返事しますね。ありがとうございます。」と正直な気持ちを伝えた。

 2人は笑顔で私に抱っこしてもいいかしら?と聞いてきたので、そっと手を伸ばした。

 優しく抱きしめてくれる2人からは、温もりと安心を感じることができた。


 それがですねぇ、ビアンカの父親(母方の祖父)に抱っこされた時にうっかり寝てしまったのですよ私。(やっちまったね)

 そしたら、やきもちを焼いた父上が、私を奪い取ろうとしたそうで(何やってんのよ父上)

だからね、母上からギューとお仕置きされたようだ。

寝てたから知らんけどね!

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