第四十話
2人はお互いを"R"(赤マスクマン)と"B"(青マスクマン)と呼び合っている。イニシャルなのか?髪の毛の色かな?と思う。
そして私を"S"と呼ぶことにしたらしい。言葉がわからないとわかっているのに、私に身振り手振りで「これからは"S"と呼ぶからね。」と言って私を指差して「これからSだからね。」と何回か言ってくれた。(髪の毛の色なんだね、なるほどなるほど)
朝の支度も2人がしてくれる。Bは私の髪を三つ編みにしながら「三つ編みしかできないんだ。ごめんね。Sの髪の毛は真っ直ぐサラサラで綺麗だけどその分編みにくいな。銀色の髪がキラキラしているね。」そう話しながら三つ編みでおさげにしてくれた。
食事係りはRがしてくれる。昨日の様にパンとスープを食べさせてくれた。水分はできるだけ控えたいからお茶は少ししか飲まないようにした。次はいつトイレに行けるかわからないから(泣)
Rは私が水分を控えているとわかっていたようだが何も言わなかった。
そして昨日着ていた服を着せられて布でくるまれる。肩から荷物のようにぶら下げられて乗り物の中に置いてある木箱に入れられる。ガタゴトと移動がはじまった。
どれほど2人のマスクマンが優しくても、拉致されて拘束具をつけられて動きを制限されていることが、私の心身ともにダメージを大きくしている。いつもの私じゃなくなっていく。
私は棺桶の様な木箱の中で父上や母上やジョンさんのことを思う。心配しているだろうな。探してくれているだろうか。父上は寂しがっているよね。
父上がいつもしてくれるみたいに自分で頭を撫でてみる。頑張ってるねマリア。
しかし、拘束具が顔に当たって痛い。ガジャガジャとうるさい。チッ(舌打ち)
チックショー、誰が私を攫ったんだよー、許せない。許せないぃー。
私は拘束具を力一杯引っ張ってみた。はぁー、やっぱり抜けないかぁ。痛いなぁ(怒)
今度は八つ当たりでガジャガジャと木箱に拘束具を打つける。
トントントンとノックがした。あっ、うるさかったかな?私はコトンと返事のノックをする。
2人のマスクマンが窓を開けて覗く。
「どうかしたの?どこか痛い?」「喉が渇いたのかな?」「お腹がすいた?」「いや、手が痛いのかもしれない」「そろそろトイレかもしれないね」2人が私を見ながら話し合っている。
この2人はとても優しい。そしてまだ少年だと思う。身長が伸びきっていないから十四歳?十五歳?そんな感じだ。この優しい少年2人に私を攫わせた悪人は誰なんだ、許せん!!
「もう少ししたら休憩所だから待ってね。」と指であっちと指しながらお茶を飲む仕草をする。私が少し笑うと2人も笑った。
そのころ公爵家では父上、母上、ジョバンニ、ジョセフ、ナターシャが父上の執務室に集まって話し合いをしている。
父上「今回のマリアの拉致についてだが、おそらくマリアを産んだ母親のビアンカの実家が絡んでいると考えている。」
母上「ということは、あの小国が手を出して来たということなのね。少し厄介だわね。」
ジョバンニ「どういうことですか?義理姉は侯爵家の娘ですよね?我が国の」
父上が、「今から説明する。説明が済んだら私とアマルとジョバンニは王宮に行き陛下に謁見する。」
父上が話した内容はこうだった。(ジョバンニ目線)
義理姉は我が国の侯爵家から我が公爵家に嫁いできたが、義理姉の母親はあの国の伯爵令嬢だった。義理姉と母親の姉、つまり2人は伯母と姪の関係だが、この伯母というのがあの国の現王妃ということだ。
あの国は小国で、精々公爵家の領地の一つ分ほどの面積であるが、魔法に関しては周辺国の中では一番発展しているのではないかといわれている。魔導具の開発にも余念がない。
だから他の国もあの国には手出しをしない。まぁ手を出すほどの価値があの国に見出せないというのもあるそうなのだが。
あの国は少し特殊で、殆どの判断基準が魔法のことが中心であると言っても過言ではないほどだ。
魔力が豊富であり魔法が使える才能ある者が王族と結婚し後継をもうける。王族については、より魔力量が多く魔法が使えて魔法に才能がある者が王位につく。
義理姉の伯母は魔力量も多く、魔法を使う才能に長けていたようだ。幼い頃から王宮で王妃教育を学びながら魔法に関わる業務に従事し、成人したと同時に現国王と婚姻している。
だが、近年のあの国の状況なのだが、あの国の王族は長い間魔法を最重要視していたため、自国の王族と限られた貴族の中だけで婚姻を繰り返していた。そのため近親婚を繰り返した時のように血が濃くなっていると考えられている。
それが原因なのかなのかわからないが、極めて子供ができにくくなっているようだ。産まれてきても病気などで長く生きることが出来ない子供が多いと聞いている。
他国の血を入れるかどうか王族と高位貴族家で議論が繰り返し行われているようだ。
もしあの国が、マリアの存在を知り魔法が使えると知ってしまったら、必ずマリアを狙ってくるだろう。そう考えて公爵家では警戒をしていたのだ。
しかし、義理姉の母親とあの国の王妃は姉妹であるが関係性は希薄だった。義理姉の母親は魔法が使えないためにあの国に居場所がなかったようだ。幼い頃から我が国に留学している。あの国より我が国にいる時間の方が長い。そのこともあり、伯母と姪の交流も皆無だったようだ。しかし、現実は少し違っていたのかもしれない。
何故ならマリアが攫われた。しかも王宮の父上の執務室でだ。護衛もいた状況で時間的にも5分ほどのこと。
あの国が関係していると考えるのが妥当だろうということだ。
父上が秘書官に呼ばれたのは、ここ一月ほどのことだが兄上があの国と交易を行っているそうだ。この件に関して外交から情報提供を求められたということだ。父上はその情報を全く知らなかった。兄上は故意に隠していたのかもしれない。
何故こんな大事な情報を今まで共有してこなかったのかと腹立たしく思う。マリアにも伝えて欲しかった。聡いマリアなら何らかの対策もしていたかもしれない。
だが今となってはタラレバだ。これからどうやってマリアを取り戻すのか。
兄夫婦がマリア拉致事件に関与していることは間違い無いだろうと思う。
そうするとマリアはあの国に連れ去られているのか?
何とか我が国にいる間に見つけ出さないと大変なことになりかねない。
私達は陛下に謁見するために急ぎ王宮に向かった。
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