第三十三話
陛下が健康を取り戻していくことに安堵する。
この国の現状を知ってしまうと踏ん張ってもらうしかないよなぁとため息が出てしまう。
そして、久しぶりのジャックの登場です。
何故なら、お師匠のシルビオさんが実家に呼び戻されてしまったからです。トホホ
陛下のことがまずまず落ち着いたので、辺境領に帰って魔物討伐に参戦して欲しいと連絡があったそうです。お師匠は、やはり貴重な戦力なのですね。
そして只今お師匠のシルビオさんは「最後にもう一度〜」と私をギュウギュウ、スンスン、ギュウギュウして、「まだ全然堪能しきれていないわぁ」と叫んでいたところを父上に「いい加減にしろ、マリアが潰れてしまう」と言って引っぺがされて、泣く泣くご実家に帰省されました。お師匠、ガンバです!!
そーしたらですよ、ほんとに直ぐにジャックがやって来たんですよ。(こんなに直ぐ来る?)
ジャックは、この家を見張ってるのか?(怖いワ)
しかも、今回は妻を伴って来ました。(ギョギョ)
そーです、生物学的両親が公爵家にやってきたのです。突撃訪問です
(コワィー)
ジャックの主張はある意味一貫しています。
・私を自分の娘に戻すこと。
・自分達家族と一緒に暮らすこと。この2点です。
(マジ、イヤやし!!)
ジャックが喋ります。
「ビアンカがいうには、マリアは第三王子と懇意にしているとか、流石私達の子供ですね。貴族の本質を理解して行動ができているようです。
ビアンカもそろそろマリアの教育を自らの手で行いたいと考えています。
本来のあるべき姿に戻して、マリアは私達家族と暮らすのが正解だと思います。
親子なのですから共にいるべきでしょう。」
そう、こうやって聞いているとジャックの言うことは間違っていないように聞こえるよね。チッ
だけど、あなたが私をのっぺりシワクチャな赤子は必要ないとあの部屋に放置したんですからぁー、今更なんですよぉー
あっ!今初めて知りました、私の生物学的母親はビアンカというんだね。
そして、この夫婦、挨拶をしないのだね。
ジャックはいつもだ!しかもビアンカはここに来てから一言も喋っていない。どーよ、この似たもの夫婦は。
心の中でそんな事を考えながら、帰れ帰れと目の前の夫婦に軽いジャブを打っている自分を妄想する。
父上が「ジャック、何度も言っているがマリアはもうお前達の娘ではない。お前達がマリアを放置していた事実は決して消えることはない。あれは虐待だ。」
徐にビアンカが「お話が長くなりそうですわね。応接室にご案内いただけるかしら。」と澄ました顔でぬかしやがりましたよ。私は心の中でお手上げポーズです。
そして現在、応接室におります。
なんと、先程のやりとりですが玄関ホールで行われておりました。
そしてビアンカ、出されたお茶に一番に口をつける。肝が座りすぎて怖いワ
そして語り出しましたね。
「先程、虐待などと聞き捨てならないようなことをおしゃいましたね。
訂正していただきたいわ。私達は虐待などしておりません。
何か問題がございまして?
生まれた赤子に衣食住を与え、きちんとメイドに世話をさせて育てておりましたのよ。
何も分からない赤子など誰がどう育てても同じです。食を与え身の回りの世話をすれば勝手に育ちます。
重要なのは物事の分別がつくようになってからなのです。
そこからは、実の親が子供の教育の手綱をしっかりと握って導くことをしていきませんと。
お分かりになりまして?」
コワッ、ビアンカ怖すぎ!
整った顔で笑いもせず、冷めた目をして自己主張を淡々と語るビアンカが怖すぎです。
ビアンカが話す内容は
貴族は、生まれてきた子供は乳母なり養育係なりが養育を行い育てていく。(私の場合は配膳ロボット(メイド達)だったけどね)
だから親は環境さえ整えておけばよい。環境さえ整えておけば、親が手を出さなくても赤子は勝手に育っていくから問題ない。
物事が分かるようになってきたのを見計らって、実親が適切な教育を施す。こんな感じかな。
どう考えたらそんな理論にいきつくのやら?
いや、この国では普通なのか?貴族の子育てってそんなんなの?マリア、わかんなーい
いるね、いるよ、こんな人!
自分の持論が正しいと信じて疑わない人。
どれだけ噛み砕いても、最新のデータを見せても、エビデンスを突きつけて説明しても自分の意見を絶対に曲げない人。
いたわぁ…
ずーとずーと平行線で途中から、もうこっちが折り合いをつけるしかないのでは?を考えるようになる人
今現在、応接室にいるのは
私でしょう、父上、母上、ジョンさん(また帰ってます)、ジョセフさんとナターシャさんと護衛の人。
そして、私の生物学的両親です。
本来なら広い応接室が狭く感じるほどの息苦しさです。
私は考えます。この話の落とし所はどこなんだい?
と言っても私に権限はないでしょうけど。
もう、やっちゃう?この二人、転移魔法であの部屋に送り返しちゃう?
そして、公爵邸に二人が入れないように結界を張っちゃう?やっちまおうぜっ!
母上が私に耳打ちします、「まだ早いわね。」
ギクっ、また心の中が分かったの?
父上が、「しかし今頃になって、何故そんなにマリアにこだわるんだ?こちらで養育、教育を行っている。何も問題ないはずだが。
それに、マリアを私達の戸籍に入れることに二人とも賛成したはずだが、違うか?
だったら、もう何も言わずにマリアの成長を見守るのが筋ではないか?」
父上が、私の生物学的両親に厳しい眼差しを向けて
「お前達二人に厳命する。
マリアは、公爵家当主である私とその妻であるアマルの子供である。今後、関わりを持つことは許さん。
これは、公爵家当主である私が決めたことだ。黙って従うように。」
ビアンカが怯む様子もなく
「分かりました。
それで、そこのあなたはそれでよろしくって?」
手に持っていた扇子で私を指した。
はっ?えっ?私に聞いたの?よろしくって?
何と小心者の私は黙ったまま、赤べこの様にコクコクと頷いただけだったよ。トホホ
ビアンカが「そう、じゃあ帰りましょう、気分が悪いわ。」とジャックに指示したんだよ。
ジャックは「そうだな。」と頷いてビアンカに従ったのだ。
終わった、終わったのか?一応、終わったんだよね?私は黙って隣に座っている母上を見上げる。
母上が「うふふっ、全くあの娘はブレないわね。嫁いできた時からブレずにいるのよ。貴族とはこうあるべきという考えを、自身の中に落とし込んで基軸を持っているの。見てて、また来るわよ。面白いわね。」
え〜、全然、全く、面白くないんですけどー
また来るんだ!あのビアンカを面白いと思えるんだ!母上、スゴッ。私には理解できそうにないよ。
この時はまだ、二人の執着心を舐めていることに気がつかない私だった。
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