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こんな世界で頑張れるもんか 〜今さら娘といわれてもねぇ、知らぬ存ぜぬでございます〜  作者: 与謝野竜胆


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第二十九話

 私は今、陛下の自室にきております。

しかも陛下の寝室に、でござます。

目の前に陛下が横たわっております。

 ふぅ、今から決戦でごさいます。

 では、よろしくお願いします!


 はじめに、陛下に名前と生まれた年と誕生日を聞きました。本人確認のためです。念のためね。

ゴホンっ、興味本位とかじゃないから。(前世の習慣みたいなものです。)

 そして、身体の具合はどうだったか尋ねます。

 陛下は、「前回会った時とあまり変わりないが、食事が殆ど食べれなかった。そのせいか身体に力が入らなくなってきている。集中力も落ちてしまった。」と答えが返ってきた。辛かったね。

 私は陛下に許可を得て身体に触れてみる。

熱はないようだ。

脈を測る。回数もリズムも正常だ。少し脈圧が弱いかな。

本当は血圧も測りたいけど、道具がなくて測れず、残念

黄疸は少し酷くなっている?

 この辺りは元々を知っていた方がいいんだけどね。比較がしやすいから。


 そして今から陛下に一服盛りますよ。

 陛下、睡眠薬です。

痛みで目が覚めることがないように深く眠れるように調合しています。

それでも痛みのために目が覚めた時は教えて下さい。

 そう説明して、睡眠薬と水を渡した。

陛下は躊躇することなく、直ぐに飲み干した。(えっ?)

 陛下、いくら何でもイフメのマリアを信じすぎですよ。(マリア心の声)

 そして私は陛下に「ラリホーラリホー」と唱える。(気持ちが大事なんじゃ)

側から見たら、おかしな呪い師みたいだろうね(笑)


 ゲッ、もう寝てしまわれた。寝息が聞こえます。

不敬だけど、念のためだから、陛下に思いっきしデコピンしてみた。オデコが真っ赤になったね。寝てるね。

 私は、ハァーとかフゥーとか言いながら深呼吸して腹を括る。

 ラリホーが効いている内に終わらせねばならぬからな。

 マリアは自分にホイミをかけた(気持ちが大事なんじゃ)マリアは気持ちが1Pあがった。


 「はじめます、よろしくお願いします」陛下に頭を下げた。

 私は陛下の腹部をスキャンした。

肝臓は?腫瘍は?どうなっているかな?

 ⚫︎ここでお知らせです。

私のスキャンがグレードアップしたんです。

なんと、3Dになりました。

やってみたらできたんです。ビックリ

だから、肝臓や腫瘍を自由な角度から3Dで見れるんです。くるくる回して見ることができるんです。

いやー進歩したわぁ。

これ、結構大事なポイントになりそうです。


 おぉ〜、なるほど、なるほど

肝臓の右葉、右下から中央にかけて腫瘍があります。

そして、この腫瘍は綺麗な3層構造になっていますね。

そうだなぁ、山型のケーキの中にボンボンショコラが入っている、そんなイメージかな?


ということは、

 この3層構造の1番外側のその周囲を切り取っていけば、綺麗に切除できるってことではないのかな?

 境界線がはっきりしていて良かったよ。

どこまで切除するかを悩まなくて済みそうだね。

これは、マジでラッキーだし助かります。

 あー、ただ、太い血管の際にある腫瘍の切除が難易度が高いなぁ。絶対に血管を傷つけてはいけない。

 胆管は腫瘍に押されているけど菅の形状は変形してなさそう。腫瘍の圧迫がとれたら元に戻りそうだね。

 そうして、私は切除する位置をシミュレーションしていった。

これなら何とかできそうだ。

いや、やるしかない。そう決めたんだ。

私は自分に言い聞かせた。


 では、肝臓にできた腫瘍の切除をはじめます。よろしくお願いします。

 私は血管が少なくて自分から見えやすくて切りやすそうな部位に電気メスを入れた。

 あの時のピクピクゴーレムの心臓を思い出せ、あの感覚で焼き切っていけば切除できるはずだ。やれる。わたしならやれる。信じろ自分を。

 私は少しずつ、慎重にメスを進めていった。

ボンボンショコラ(腫瘍)と周囲の組織との際を見極めながら、ボンボンショコラ(腫瘍)を傷つけないように切り離していく。できている。

 血管が比較的少なくて切りやすい部位は、かなりスムーズに焼き切っていくことができた。

 問題の大血管の近くは神経を使う。

少しでも血管を傷つけたら大出血を起こしてしまう。慎重に慎重にとメスを進めていく。

 

 陛下は寝ています。ピクリとも動きません。寝息が聞こえるので安心です。

 それにしてもだねぇ、睡眠薬、スゴイ効果ありだな。驚き!

ゴブリンは平均睡眠時間6時間くらい寝ていたね。

今が2時間くらいだから、残り半分を3時間で切除できるかな?

 大血管のところはもう少しでクリアできそう。

あとは、胆管の近くが難所だね。

焦らずに慎重に進めていこう。

 私は時々手を止める。

集中してる時間が長いから、時々手を休めて冷静になって、また集中する。

難所の大血管横の切り離しができた。良かった。

 そこから胆管の近くのボンボンショコラ(腫瘍)の切除まで何とか順調に進むことができた。

 出血はほとんどない。良かったぁー


 あともう少しだ。頑張れ自分。

 ふと、今、私1人なんだね。そう思った。

どうしてだろう、何だか辛くなってきた。

あと少しなんだけどさ、頑張れるはずなんだけどさ、

何だか不安になってきたよ。

 なんで、できる!なんて思ったんだろう?

 やったこともない、こんな大それたことを『やればできる』『やるしかない』そんな風に自分に言い聞かせて1人で頑張っているけど、本当は怖いよ。

 失敗できないんだよ。人が死ぬんだよ。

それも自分のせいで。そんなの嫌だよ。

考えちゃダメだ、考えたら負ける。

 思い出せ、私は出来たんだ、ピクピクゴーレムを切り刻んだじゃないか、思い出せ。これまでの頑張りを。


 私の背中をポンポンと優しく労うように叩いてくれる人がいる。ちちうえー(泣)

 うん!大丈夫だ。

ここまで問題なくできた。

難しいところも丁寧に慎重に進めていったらクリアできた。

だから私、最後まで戦えるよ。やれるよ自分!

 私は一つ頷いて、父上に合図した。

残り後1時間、勝負だ。絶対に勝つ!!


 私の左手に腫瘍が握られている。

ボンボンショコラ(腫瘍)を切り取って、取り出すことができた。

時間、5時間30分

 長くて、短かくて、高揚して、辛くて、落ちて、上げてもらって、立ち上がって、そして終わった。そんな時間だった。

やり切ったんだ私。

 取り出した腫瘍を保存液が入った容器に入れた。

 父上がそっと抱き上げてくれた。いつもの様に背中をポンポンと叩いてくれる。


 私は陛下を診る。

熱はないか?脈拍は正常か?顔色はどうか?表情はどうか?呼吸は?

 そして、もう一度スキャンで腹部を確認する。

出血なし。胆汁の漏れなし。腹水なし。

今のところは異常は見当たらない。ほっとする。

 あと、10〜20分くらいで陛下が目覚めるはず。

そしたら、ポーションを飲んでもらう。

 肝臓の腫瘍を切除して、すぐに何か飲むとかダメなんだけど、この世界には点滴がない(泣)

脱水を起こすのも怖いし、体力が落ちるのも怖い。

 お腹は動いているからポーションは飲んでもらうよ。

これは、万能ポーションだと信じたい。

お願い、目が覚めますように。

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