第十九話
王宮からお茶会の招待状が届いた。
流石にお断りができないので参加することになるそうだ。
トホホなのである。
四歳児に完璧なマナーは求められてないそうだが、それでも特権階級に生まれたからにはと、幼少期から家庭教師などから、社交界で必須となる厳格なエチケットを徹底的に叩き込まれるそうだ。
私の場合はイルダだったね。あの極悪教師だよ。子供を家畜のごとく扱いやっがって(怒りのボルテージが上がるわ)返り討ちにしてやったわ。あっはは!
そして、子供であっても大きな舞台での失敗は、社交界からの追放になるんだって。
厳しい世界だね、悲しいよ。
だけどさぁ、前世の記憶持ちの私的には、子供だよ、しかも幼児が失敗したところでどうなんだよっておもっちゃいますよ(失敗は成功のもと、失敗は誰にでもあるって教わってきたよね)
ただ、公爵家に迷惑がかかるようなことはあってはならないと思うから、完璧マナーをやるしかないのだよ。
なので、母上とナターシャさんのお二人から礼儀作法を厳しめに教わっているんだよ。
礼儀を重んじることは、今後の社会生活を円滑に生き抜く為にも身に付けておいて損はないからね。
それでもね、納得できない小さなことは多々ありますのよ。
今は、服装について物申したい。
こんな年端もいかない4頭身の子供に窮屈なドレスを誂えるなんて、
この国の価値観が理解できないんだよぉー
動きにくいったらありゃしないよー
子供は大人のミニチュアじゃないんだよー
そこは理解して欲しいんだよー
てことで、母上とナターシャさんに話しました。
そしたら、私なりのドレスを作ってもらうことになりました。公爵家だからできるのです。ありがたやー、感謝しかないよ
希望は、動きやすくて、幼児体型を締め付けない、通気性よし、こんな感じです。あまり要求するのも作って頂く身分ですので、出来るだけご迷惑をかけないようにいたしませんと。
公爵家ご用達のデザイナーさんとあーでもないこーでもないと母上とナターシャさんが相談してくれています。私は要望を伝えただけです。ドレスなんて分からないことがいっぱい
私が日頃着ているのはワンピースです。
こちらは簡単に脱いだり来たりできて、身体を締め付けないようにしてもらってます。
このワンピースにヒラヒラのフリルやレースと刺繍したらいい感じじゃない?と言ったら、母上とナターシャさん2人から、冗談じゃない!と強く却下されました。
この国の流儀に従います。ハイ。
2人は私を見ていて、確かに動きやすく締め付けないというのは大事ね。とおっしゃっています。
そうなんです!ここにエビデンスが表せたら、締め付けがいかに身体によくないかということを説明できるのに…悲しみ
大人の女性だって、ギュッギュッ締めては駄目なんです。誰かぁー声を大にして叫んで下さーい。
お医者様のエディス先生辺りが発表してくれたら、説得力もありそうだよね。
エディス先生には、これからの未来のために頑張ってほしいものです。
ジャックなんですが、例のジャケット事件以来来ていません。
だけど、お茶会には一緒に行くと言っているようです。大迷惑しかない
父上と母上がいうには、私はウェリントン公爵家の娘として出席するので、ジャックが保護者で参加するのはおかしい。
招待状も持っていないのに参加できる訳がない。
だが、ジャックのことだから、きっと何処で待ち伏せしてくるだろう。
対策をとるようにした。父上の命令で公爵家の騎士団に拘束してもらうのがいいだろうとなりました。
やれやれです。
ただ、あのジャックですから何かしら問題を起こしそうですよね。頭痛いことです。
そして、やってきましたぁ♫王宮お茶会の日です。
今日の私は何処をどう見てもお嬢様です。
サスガです。公爵家ご用達ブティックのお針子さんの腕は一流です。
このドレスは流行るかもよぉ
ドレストップはネックラインからウエストにかけてレース、刺繍、キラキラした小さな宝石がバランスよく配置されていますよ。
バックスタイルはチュールベルトを後ろ結びのリボンにしてある。華やかでエアリー感が出ていて、シルエットは締まって見えるが締め付け感はない。いいね!
肩はケープの様なデザインなので、腕や肩が動かしやすい。
ふんわりとしたスカートは、ラメチュールを重ねている。軽くて歩きやすく、動いたり光があたるとラメがキラキラと輝いてとても綺麗。妖精?なんちゃって
こう言っちゃなんだけど、私の顔立ちは可愛いのです(テヘッ)
今の私の周囲が美形揃いなので、感覚が麻痺してしまっていますが、こうして皆が着飾ってくれながら、ワァーとかキャーとか天使よぉとか言うくらい可愛いです。
悔しいことにジャックも美形で、私はジャックに似ています、ガックリですよ
そのジャックは、父上に似ています(見た目ですよ、中身は違います、そこ重要)
なので、私は父上にも似ています。
クリクリのぱっちりお目めに高い鼻梁にすっきりした鼻先、ふっくらとした口元、ふくふくのほっぺ、可愛いいの塊なんです。
前世の私が、至って平凡な黒目黒髪の日本人女性の見た目だったものですから、この可愛さは正にキュン死に値するんじゃない?とニマニマしてしまいます。
そんな感じでワーワーキャーキャーと支度が整い公爵家を出発しました。
王宮行きの馬車には、父上と母上と私が乗っています。
王宮に到着しました。私には初宮殿です。
公爵家もお城のようですが、王宮は圧巻です。
外側は、幾つもの高い塔が聳え立っていて、そこにそれぞれに異なった細かな装飾がされています。
中に入ると高い天井と幾何学的な構造にステンドグラスから差し込む光。まるで「森の中」にいるような幻想的な雰囲気です。ずーとくちパッカーンです。
そして私達は庭園に案内されました。
整理整頓された花畑だぁ。区画毎に種類の異なる花が植えてある。どれ程の種類があるのか数えきれない。
そして、大きな噴水に小川?水路?きれいな水が計画された順路で流れている。庭に川があるのかよ。
かなり歩いた。まだ到着しないのかな?と思っていたら、温室に案内された。
今日はこちらでお茶会が開催されるそうだ。
全面ガラス張りの温室に入ると、すでに参加者が集まっていた。
席に案内される。親は親同士、子供は子供同士の席になっているようだ。
疲れたなぁ。身体強化の魔法をかけておいて良かったよ。じゃなきゃあ、今頃は抱っこされているよ。
王宮は広いからかなり歩くぞと父上からきいていた。
流石に抱っこされるのはカッコ悪いから、一昨日から身体強化魔法を使ってみた。これはちょっとだけ苦労したんだよね。
身体を強くするイメージ?思い描ける?ハテナ?だよね。
何度か試してみて、歩くことに特化して考えた。それで、ちょっと浮く感じで歩いてみた。
ジョセフさんから、浮いてます。違和感しかないですよ。とダメ出しされた。浮いてたかぁ
悩んで、筋肉をバッキバキにするイメージで強くなれと足に魔法をかけた。できたよ。3時間くらい歩けました。
私の席には、侯爵家と公爵家のご令嬢が5人集められている席だった。
周囲を見渡すと中には、えっ?あなた何歳?って思う令嬢もいた。王子の守備範囲広すぎ、10歳差とか許されるのか?ありっちゃアリなのか?
私の右隣にいる令嬢は、もうすでに緊張しているようだ。表情が硬く顔色も白い。話しかけてもいいものなのか悩む。
周りを観察していると王族の到着が告げられた。
陛下を先頭に王妃、第一王子、第二王子、第三王子が登場した。
陛下の挨拶、気楽に過ごしてほしい。楽しい時間を過ごせることを願っている。みたいなことを話した。
陛下の挨拶が終わるとお茶やお菓子がふるまわれた。美味しそうだよ。
これから、王子達が其々のテーブルを回って交流を図るようだ。
右隣の女の子の表情が固い。下を向いている顔色がどんどん白くなっている。
私は彼女に「うさぎ好き?」と声をかけた。
彼女は驚いた様にバッて顔を上げて私を見た。
私はハンカチで作ったうさぎを差し出した。
「少し暑いかな?」そう声をかけて、湯気の出ている紅茶を魔法で冷たくした。
小さな声で「冷たいから飲んでみて」と彼女に声をかけた。
彼女は黙って紅茶を一口飲む、ハッと驚いた表情で私を見た。
私は笑いながら「ウェリントン公爵家、令嬢のマリアでございます。」と挨拶をした。
彼女は慌てて「エルサ、フェルデン侯爵家、令嬢のエルサと申します。格下の私からご挨拶させていただかなければならないところをお声かけしていただきました。申し訳ございません。」と名乗ってくれた。
社交会に出ていない私達が、顔や爵位が分かるわけないから、気にしないでね。母上もそう言っていたよ。それより体調がわるそうだけど大丈夫?と話しかける。
彼女は、紅茶を冷たくしてくれてありがとう。緊張していたけど、今は少し良くなってきた。
魔法を使うのが上手なのねと少し笑って返事をしてくれた。
それから私達は、ハンカチのうさぎや魔法についてやお互いの日常について話をした。
私達が話しをしていると、エルサの横に座っている女の子が「ハンカチのうさぎを見せて欲しいです。私はバルクレイ公爵家、令嬢のルーナと申します。」と挨拶をしてくれた。
それからは3人で話をした。私は2人にハンカチでくまを作ってみせた。
2人とも喜んでくれたので、それぞれにプレゼントをした。
紅茶も冷たくしてほしいというので、冷たくしてみたら喜んでくれた。
そして、第一王子が私達のテーブルにやってきた。
この国の顔面偏差値が高すぎて驚く。
出会う人出会う人《美形のオンパレード》である。
第一王子は六歳と聞いているが、もうすでにイケメンが出来上がっている。
そんな事を考えていると自己紹介の順番が回ってきた。
私は「ウェリントン公爵家、令嬢のマリアでございます。」と挨拶をした。
通常であれば、席を立ちカーテシーをするのだが、今日は座ったまま自己紹介だけで良いらしい。
同じテーブルに私とエルサとルーナの他に令嬢が二人いる。二人は侯爵家の令嬢で年齢が第一王子より二歳上のようだ。
私達をお子様だと思っているようで、幼い方達とのお話は退屈でございましょう、などと王子に話している。そう、こちとらお子様なんだよねぇ。
私達三人は、三人で盛り上がっているから気にしていません。お好きにどーぞって思う。
エルサとルーナもそんな感じみたいだ。
王子様とお姉様方vs私達三人みたいになっている。
戦っている訳ではないけどね、ただ、向こうは向こうで話をしているって感じ。
王子が突然「そんなに紅茶を一気に飲んで熱くないのか?」とルーナに声をかけた。
驚いたルーナが咽せた。
私はエルサにハンカチを渡してルーナに回してもらった。
私は王子に「紅茶は冷めておりますから、ご心配はご無用でございます。」と返事をした。
王子は怪訝な顔をしていたが、それ以上質問することはなかった。
ギャー、ここでは魔法を使用してはいけなかったの?大事になるかもしれないの?いやだー(泣)
父上に確認しておくんだったと反省した。
ジャックの事を心配している場合じゃなかった。自分が公爵家に迷惑をかけるところだったよ。危ない危ない。




