第十五話
領地の状況を見に行くことになった。行くのは2人だけ。私とジョンさん。
公爵家は、何やらとても忙しいらしい。そんな時に半日も私と訓練をしていた父上は、母上にこっ酷くお叱りを受けたようだ。
母上のお茶会用にクッキーを焼いて、綺麗にラッピングしてからお渡した時に、父上をあまり怒らないで欲しいとお願いした。
手作りクッキーに母上のご機嫌もどうにか治りました。めでたし、めでたしでした。
お家の中がギスギスするのは良くないからね。
そして、母上に献上したクッキーは奥様方のお茶会で大好評だったようです。甘くないクッキーが初めてだった方も多かったようです。
女性は新しいスィーツが大好きです♡
レシピの希望者続出で、えぇっ?そんなにいるの?と思ったけど、きちんと皆さんにお伝え致しました。
そして、私とジョンさんは領地に向かって出発いたしました。もちろん、荷物は収納袋にいれてます。
収納袋は改良したんだよねぇ。前のは記念にとってます。新しくリュック型の鞄に収納魔法を付与しました。今回は苦労しました。品物によって入れる部屋をわけたかったし、欲しい物が直ぐに出てくる使様にしたかったからね。そーです、あのドアが一つなのに何個でも荷物が預けられて、必要な荷物を選択したら取り出せるという、あのホテルなんかにあるバゲッジキーパーみたいにしたかった。
部屋は作れても選択方法がなかなかできなくてね。今は各部屋にボタンを連動して操作してます。4個だったら問題ないからね。増えていく様ならその時に考えるよ。
一緒に行ってくれるジョンさんにも作りました。とても喜んでくれました。便利だものね。父上に知られると自分にはないのかと言って厄介だから内緒です。
1週間の馬車の旅を経て、4つある領地の内の公爵家から1番近い場所にあるペテルに到着した。
前世でいうなら地方にある少し栄えた街という感じに見える。商店街には、そこそこ人がいた。
宿泊施設はなかなかに立派だった。公爵家のご子息が泊まるんだもの、おかしな場所は選ばないんだね。
手続きをして部屋に荷物を運んだら街を歩いて情報収集する。
今、頻繁に魔物が出現しているのは隣の街で、他の三箇所から隣の街に討伐隊が出兵している。中級クラス以上の魔物であることと数が多いために苦戦を強いられている。傷病者は隣町の病院で手当を受けているが、人でも物資も不足している。領主に増援の依頼をしているが、このままの状態では1月持ち堪えられそうにない。ということが分かった。
私とジョンさんは翌日に隣町へ移動した。
隣町の様子は、中心街はかろうじて機能していた。宿泊施設も確保できた。街中の食堂に来ていた討伐隊の隊員が話しているのを聞くに、ゴブリンやオーク、ゴーレムは単体で行動しているが、一体につき4〜5名の隊で戦わないと倒すことが難しい。ウルフ系とボア系はどちらも、徒党を組んで襲ってくる。こちらも陣形を取りながら対処しているが限られた人数しかおらず、少人数の時に襲われたら一溜まりもない。
夜間の見張りも交代制の筈ができておらず、軽傷の怪我人が見張りに割り当てられている始末。
病院へ行っても重症者で手一杯で、なかなか診察をしてもらえない。小さな傷から瘴気毒に侵される者もいる。
こんな八方塞がりな状況で、先が見えない。
それでも家族を守るためならやるしかない。
応援要請に応じてくれるのだろうか?
そんな話をしている。
食事を食べたら直ぐに見張り役の交代に行くと言っていた4人は、顔色も悪く見えている皮膚のあちらこちらに生々しい傷がある。足を引きずっていたり、手や肩を支えながら移動していった。
宿泊施設に帰ってから、私はジョンさんにこのまま様子を見て帰るのはダメだろうと申し出た。
ジョンさんから「実は」と話が始まった。
他の領土でもモンスターの群れが突然大量発生し、街や村に向かって暴走(殺到)する現象が起きている。父上が王城で缶詰になっていたのも、その対策について各方面との調整役を担っていたからだ。
我が領地は他の領地に比べて魔物討伐に慣れており武力、威力、勢力ともに群を抜いている。それで父上は、我が領地より他の領地を優先した。
しかし、今回の嘆願書は見過ごせない内容だったから、現状把握と対策を立てるために私がここに送られてきた。
しかし、ここまで緊迫した状態だとは考えてもいなかった。
本当なら病院の状況も確認したいし残り2箇所の領地の状況も気になるけど、頻回に魔獣が襲ってきているらしいから、優先すべきは魔獣退治だよね。
魔獣の動きがどうなっているか詳しく知りたいとジョンさんにいうと、討伐隊の砦に行ってみようかと言う。
私が一緒に行くと不自然じゃないかな?見た目は四歳児だからね。
単体で行動しているのがゴブリンやオーク、ゴーレムかな?ウルフ系は連携をとるよね。前世の記憶と前の森ではそんな感じだったな。
そして魔獣は神出鬼没のものが少ない。獣道じゃないけど、大体が同じ経路でやってくる。
これを確認して、その場所と攻めてくる量が分かるといいかなぁ。落とし穴作戦で敵の数を大幅に減らしたいなぁ。
ジョンさんが情報収集に行ってくれるようだ。情報は多いほど助かります。あと、地図も欲しいです。
数時間後にジョンさんが帰ってきました。
地図を見ながら話し合いをします。
オークとゴーレムが単体行動で森の西側の辺りから襲ってくることが多いらしい。
ウルフ、ボア、ベア系は集団行動で襲ってくる。ベア系の集団は規模がそこまで大きくないが、ウルフ系集団が纏まりがあり数が多いようだ。こちらは森の中央から東寄りの位置から襲ってくる。
時間がずれていたが、どちらも2日前に襲撃してきた。休む間もなく対戦することになり、この時に負傷者が沢山でたそうだ。
あと1日、2日で次の襲撃がくるのではないかということだ。
それなら、先ずは森の西側に罠を仕掛けよう。大規模に落とし穴を作るよ。行けば分かると思うけど、ここを通ったね。足跡残してるよ。証拠残してるよ。って感じだと思う。だから、そこに落とし穴を作ります。どんどん落ちてもらいましょう。
単体で行動するから、割とワッサワッサ落ちてくれると思う。それでも前の連中がバカスカいなくなったらおかしいと気づくと思う。川のある側からこちらに向かってはこないだろうから、落とし穴の端っこ、この位置に粘着性の高いネバネバシートを置いとくよ。そこで身動きできなくして攻撃すれば、かなりの数を討伐できると思う。
集団行動する魔物には囮作戦かなぁ。
おそらくリーダー的存在が後方にいると思うから、背後から攻撃したいなぁ。
何を囮にするか?今回は、討伐隊には休んでいていて欲しいから幻影魔法がいいかなぁ。撹乱できるだろうか?撹乱できたらこっちのもんよね。
先に単体の罠を作りに行こう。
ジョンさんと森の西側に行ったみた。街を過ぎると景色がどんどん荒廃していき、後に広大な荒れ地に辿り着く。何方ともが踏み荒らしているね。ここで戦って街を守っているんだね。
川は大きくて濁った水が濁々と流れている。
森の近くに行くと、あるある、獣道ならぬ魔獣道。
森の木々が薙ぎ倒されていたり、足跡があちらこちらにある。
私は森に入るところくらいの荒れ地に15km先まで、たこつぼ型に80mくらいの深い穴を2列ほど掘った。
穴の入り口は枯れ枝と枯れ葉で覆う。たこつぼ型にしたのは這い上がる時間稼ぎね。
その向こう側に広範囲にネバネバシートを敷く。Gホイホイの下に敷いてあるやつみたいな感じ。
これで、そこそこの数を成敗できると思うんだよね。
何処かに聖女様でもいてくれたらねぇ、一発キラキラな光を降らせてさぁ、魔物も魔物が生まれる沼も浄化してくれるんだろうなぁ。どこかにいないかなぁ。
そんなことを考えていたら、ガシっと肩を掴まれた。なになに、なんなのよぉ、驚くじゃない。
ジョンさんに揺さぶられる。マリア、魔力は?魔力が底をついていないか?
そんなに揺さぶるとグワんグワんします
やめて下さーい。叫ぶ私。慌てるジョンさん。
魔力?魔力ね、ハイハイ、80%残っています。
え?異常ですって、失礼な。
地道な努力の賜物よ。何回気を失ったことか。
あの家で気を失う怖さときたら、泣かないと来ない配膳ロボット(メイド達のこと)しかいないのよ。
毎回、目が覚めて良かったわよ。
ジャックの野郎めー(生物学的父親) いつかやり返してやるぅーーー
えっ?なんか地面が揺れる。地震か?異世界お初の地震に遭遇か?
あー、なんだか変な雄叫びが聞こえる。やってきたんだね。落ちるよ、穴に。目にもの見せてやるぅー、てね。
ドンドンドンドシンドシンと重量級の足音をさせながら、奴らが来るよ。
あー最初にきたのはゴブリン、続いてゴーレム
落ちていくよ、ドンドンガサガサ落ちていく。
オークも来てるね。オークは止まろうとしているものもいる。だけど勢いづいているからドンドン後から来るものに押されて落ちていく。
こんなに沢山の数に対戦するなんて、そりゃあ尋常じゃない負傷者の数になるよ。
穴に落ちることに気がついてきたものたちが、ぼちぼち横に流れていくようになってきた。
そっちには、Gホイホイもどきがまってるよ。
ねっちゃねちゃだよぉ。あー、どんどん共倒れになってしまってるね。囚われているね、粘着質シートの威力凄いよ。
漸く終わりが見えてきた。とりあえず穴はこのまま塞いでしまいましょう。這い上がることはできないだろうけど念には念を入れます。
粘着シートを穴の上に被せます。更に土をかけます。
聖女様ならキラっきらっの光の粒子で消し去れるのでしょうけど、私にはできないので、ごめんなさい。土に帰って下さい。
ふぅー、疲れました。結構な魔力を使いました。
帰りはジョンさんに抱っこしてもらいました。
これだこの数の魔物が湧き出る沼が森の奥にあるのでしょうか?そんな事を考えていたら、いつの間にやら眠ってしまってました。お口は閉じてました。良かった。ジョンさんの服は(涎)濡れませんでした。
危なかった…




