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こんな世界で頑張れるもんか 〜今さら娘といわれてもねぇ、知らぬ存ぜぬでございます〜  作者: 与謝野竜胆


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第十話

 暫くぶりの前の部屋は、私がいなくなってから誰も使っていなかったのがわかるくらいに埃だらけだった。私がいた頃も掃除なんて思いついた時しかしてなかったけどね。

 この部屋には、本当になにもなかったんだな。あの頃にあったベビーベッドと食事を食べるテーブルと衣装棚が、そこにそのまま置いてあった。玩具一つない、絵本の一冊どころが本もなければ紙一枚もない。

 私は衣装棚に近づいて引き出しを開けてみる。あった。私が使っていたタオルが数枚、私がいた時のままそこに入っていた。私はその中の一枚、私の口拭き用だったと思われるタオルハンカチを手に取った。

 父上に「ありました。良かった。何もかもが、そのまま置いてあります。このタオルに魔石が入れてあります。」そういって四つ折りにしてあるタオルハンカチの中に手を突っ込んで、魔石を1つ取り出した。

 父上がまたピキッと身体を硬直させた。

何が?何がいけなかった?何で父上は固まった?

アッチャー、またやっちまったなぁ、この魔石はゲートボア(魔獣猪)の魔石だった。せめてホーンラビットにしとけば良かったのかな?でも、最終的に全部を披露するなら同じか?う〜ん、分からん。

 そして、父上と私はもう二度と訪れることはないだろう部屋を後にした。

 父上に帰りの馬車で私は、魔石について、結構な数と種類も様々な魔石があるから覚悟して見てね。倒れたりしたらイヤだよと話して聞かせた。

「マリア、今現在、私はこれ以上驚くことはないと思う以上のことが何度も起こっている。だから、倒れたりはしない。しかし、不自然な行動になることはあると思う。できるだけ平静を装う努力はするがな。」と言って、机があればゲンドウポーズじゃない?という大腿部に肘を置いて指を軽く組んで顎を乗せてこちら側を見てくる。

 イヤだわぁ〜そんなに何回も非常識なことがあったかしら?私は首をコテンと倒して上目遣いで父上を見てキョトン顔で応戦したのであった。


 自宅に帰り父上とジョセフと三人で父上の執務室のソファーに腰掛けている。人払いがされ、暫くは周辺にこないようにと指示が出された。

 「マリア、先ずは魔石を出してみるか?」と父上いうので、床の絨毯の上にシーツを敷いてもらい、そこに魔石を広げた。

 うわぁー、知らない間にこんなに集まってたんだねぇ、へぇー。と私はシーツの上にこんもりと山になっている魔石を眺めた。

 わぁ、これは、一番最初に倒したブラッドベアー(魔獣熊)の魔石だ。苦労したんだよねぇ。かなり大きかったしドンパチ攻撃しても倒れなくってさぁ、脳天直撃したらやっと倒れたんだよねぇ。あっ、こちは初めの頃にとったスライムの魔石だ。懐かしいなぁ、魔石って不思議だよねぇ、魔物によって魔石の大きさや色や質感が違うんだよねぇ。

 私は久しぶりの魔石に浮かれていた。だって、私の戦利品だよ。思い出もあるし、頑張った自分がそこにいる気がするじゃん。

 そして、ハッと二人を見るとピキッと固まったジョセフさんと溜め息をつく父上がいた。

 父上が私をソファーに座らせて、最初の戦いはいつなのか、魔物の種類と攻撃方法を詳しく話をするようにと詰め寄られた。


 最初は、一歳過ぎて歩けるようになってから。窓から見える森に行ってみたいと思って、森に行ってみたらスライムがいたんだよね。スライムは雷魔法がいいかなぁと思ったから雷を一撃おみまいしたんだよねぇ。その時の魔石がコレ。コトリッとソファーの前の卓に置いた。

 ジョセフさんが、いっさいですか…とちょっとだけカタコトみたいな話し方になっている。

 最初の頃は森の入り口のスライムを雷で倒しては、魔石を集めていたんだけど、少しずつ森の中に入っていくとホーンラビットやバシリスクやコカトリス、森の奥に進んでいくとゲートボアやブラッドベアがいてねぇ、森の中だし火魔法を使うのは火事になったら困るから、風や水、氷魔法を使っていたの。だけど、雷撃ができるようになってから大型魔獣の大半を一撃できるようになってきてたんだよねぇ。と当時を振り返る。

 あとね、父上にはそれとなく話したけど、部屋から森までは転移魔法で移動していたんだよね。

 あそこのメイド達は、私が泣かない限り部屋に来ないから朝ごはんからお昼過ぎくらいまでは、森で過ごしていたんだよね。

 二人はジトっとした眼差しで私を見ていた。

 父上が、「そのハンカチはどうなっている?これだけの魔石を収納できる魔法を展開しているのか?」と質問された。

 あれ?こちらでは収納魔法がない?う〜ん?異世界では、転移魔法も収納袋もありなんじゃないの?

 私は手に持っているハンカチを父上に差し出して、「収納魔法をかけています。魔石を入れるためだから、そこまで広くないけどね。この部屋の半分くらいかな?」

 二人がフルフルと首を振ってため息をはいて、同時に私を見た。おぉ、シンクロしてる。

 「マリア、色々と規格外で何から聞いていけばいいのか…私は得難い娘を持ったのだな。だが、反対にマリアを守っていくという責任も重大だな。」

 そして、私は父上からこの国の魔法についての常識を説明されたのだった。

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