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地図化と霧払い

 ~魔法国 南の街道 廃村~



 逃走の末、廃村に身を潜める。


「はぁはぁ……、ひとまず追っ手は振り払ったか」


 柱と壁の一部だけが残った場所で腰を下ろす。


 街道沿いにある村のはずだが、人っ子一人住んでいない。

 その道もヒビだらけの荒れ地で、乗合馬車も通れなさそうな場所だ。


 広場に井戸と女神像がある。

 きっと水が枯れて滅んだんだろう。


「あのクソ団長。俺を死亡扱いにしやがって。くそっ」


 昨日の今日で嫌がらせだ。

 外国人の俺がギルドの証明なしに自由に移動できないことを突かれた。


 こんなの普通じゃない。

 そういえば奴は人を騙す魔法が使えると言っていた。


 でも、卑怯だろこういうのは……!


 自分の甘さがやりきれない。


 ――ご主人さま(マスター)、関所を通るにはどうするのですか?


「身分証明を復活させる。王都みたいな大きな町があれば、ギルドの支店があるはずだ」


 この領地の領主がいる町まで行かなきゃならないのか……。

 すぐ目の前が王都だっていうのに。


 それに王都じゃないと新しい攻略団に所属することもできない。

 俺は二の足を踏むことになった。


 ――大きな町ですか。わかりました。では、私で地面を軽くノックしてください。


「え? ああ……」


 よくわからないが、言われたままに地面を叩く。


 コンコン


 ――我が名は伝説の聖剣の精霊。地の精霊よ、全にして一なる記憶を示せ。【地図化(マッピング)】。


 セレナータがだれかに語りかけたようだ。

 たぶん魔法の詠唱だろう。


 すると、地面の一部がじりじりとめくれる。

 俺はあわてて壁際の木材に飛び乗った。


「な、なんだこれ?」


 それは部屋一間ほどに広がった。

 ここからじゃよく分からない。

 廃墟の朽ちた木材をもう一段あがる。


「お? おお! これ地図だよな!?」


 ――はい、ご主人さま(マスター)。地の精霊に頼んで地図を書いていただきました。


「お前すごいな。精霊を操るなんて初めて見たよ」


 ――私も精霊ですから。さて、地図をご覧ください。大きな町がありますよ。


 頼もしい仲間だ。

 セレナータは声が少し遠ざかる。

 姿は見えないので、俺はその声を追いかけた。


「今いる村がここか。で、さっきの関所がアレで、目的の町がここだとすると、意外と近いな」


 地図には井戸と女神像が記されている。これが村だろう。

 関所は尖った屋根と門だ。

 そして、目的の町を示す印はコウモリのような羽根だ。


「歩いて行けそうだな。だが、町と村の間にも関所がないか?」


 そこにも尖った屋根と門がある。

 王都が近いから、この辺りは領地と領地の間隔が狭いのだ。

 車輪のスポークに似ている。


 ――今いる場所の近くには大きな町はありません。


「まあ、この領地は港町が一番大きいらしいからなぁ」


 行ったことないけど、ダンジョンがあった塔よりもっと南だ。

 いや、もっと西だったかも。


「仕方ない。隣の領地は違う対応をしてくれると祈ろう」


 さっきは話も聞いてくれなかったし。

 俺は細い廃材を手に取り、地図の横にサインした。


 ――何を書いてるんですか?


「地の精霊にありがとうとな」


 言葉が伝わるか分からないが、これでよし。

 俺は隣の領地を目指す。



 ~魔法国 南西の街道 関所~



 徒歩で約2時間。

 たどり着いた関所はもぬけの殻だった。


「これは予想してなかったな」


 ――さすがご主人さま(マスター)です。運が良いですね。


「それはどうかな……」


 関所に人が居ないのは、嫌な予感がする。

 ずいぶん昔から使われていないようだ。


「ただ、地図はかなり正確だった。助かったよ」


 ――何よりです。それで、先には進みますか?


「一応な。途中に林が点在してるから、盗賊にも注意しよう」


 つい昨日、襲われたばかりだ。

 ああいう身を潜められそうな場所は良からぬ者がいる。


 俺は歩みをすすめる。



 ~魔法国 霧の森~



 どういうことか俺は森に迷い込んでいた。


「本当に町があるのか……?」


 ――地図は正しいはずです。


 そりゃそうだけど。

 林だと思った木々の連なりが途切れず、気づいたら森の中だった。

 いやなことに霧も立ち込めて、戻るに戻れない。


「2日分の食料はあるし、水は3日分あるし、体調も万全だし……」


 荷物運び(ポーター)時代のクセが出る。

 3日が活動限界というのは分かった。


 いや、俺は剣士になったんだぞ。

 消極的な考えはやめよう。


 しかし、歩くほどに霧が深まっていく。


 ――ご主人さま(マスター)、止まってください。この霧は魔力を含んでいます。この先は危険です。


「魔力ってことは、魔物か人間か。ともかく誰かいるんだな。進もう」


 ――はい、別の道を調べ……、え? 進むのですか?


「ああ。会ってそいつに道を聞く。口がきけない奴なら倒して霧を消す」


 俺は剣士で、攻略者だ。

 道がわからないから引き返そうなんてしないだろう。


 ――わかりました、ご主人さま(マスター)。では、(わたし)をお使いください。ある程度は霧を払えます。


「お前はつくづくすごいやつだな。たすかる」


 ――恐悦です。では、冒険を始めましょう。


 セレナータのノリが意外と良いのもありがたかった。

 1人だったら足がすくんでたぜ。


 俺は鞘に収めた剣を振る。

 進行方向の霧がうすまった。


 これは便利だ。


 鬱蒼とした森だけど、童心に返ったように剣を振り回して進む。

 森の上にある影を見なかったことにして。

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