109立てこもり作戦開始
109という建物に着いた俺たちはすかさず中に入った。
外の炎天下とは違い、中が非常に涼しく心地が良い。氷系の魔法でもかかっているのだろうか。
「ここまで来ればさすがに大丈夫っしょ!」
そういうと彼女は地面に座り込んだ。ここまで全速力で走り込んだから、相当疲れているようだった。
俺も吐きそうなくらい疲れたから隣に座った。
「さっきは声かけてくれてありがとう。おかげで助かったよ。」
「いいっす いいっす!困った時のお互いさまじゃん?」
そう言うと彼女は少し照れながら笑顔でこっちを見てくれた。
初めてちゃんと彼女の顔を見たけど、思ったより幼い顔だった。多分俺よりは何歳か年下かな。
金色の髪が汗で少し乱れているけど、艶やかできれいに手入れしているようだった。
「ウチの顔になんかついてるんすか?」
彼女は大きな目をパチパチさせながら聴いてきた。俺は慌てて別のところに視線を移した。
「いやぁ、恩人の顔をちゃんと覚えておこうと思って。あはは。」
少し苦しい言い訳だった気がするけど、彼女はすんなり納得してくれた。
「えー恩人とかマジ照れるっすよ。なんかウチまじイケてるみたいじゃん!」
イケてるってどういう意味なのか分からないけど、とりあえず喜んでいるよう少しホッとした。
「ていうか自己紹介してなかったすね。ウチはサヤっていうの。ピッチピチのJKでーす!お兄さんは?」
サヤか。覚えておかないとな。にしてもジェイケイという職業があるのか。
「俺はルイ。まだ成人したばかりの初級魔法使いだよ。よろしくね。」
笑顔で自己紹介したつもりだったけど、変な間が空いて微妙な空気になった。
「え、魔法使いってあの、魔法を使う人のことですか?」
彼女は再び目をパチパチさせ、真顔で聞いてきた。
なんでそんなに不思議がるのかな。そういえば今日の通行人の態度もおかしかったな。
ひょっとしてこの世界では魔法使いが珍しいのか?
ここは自分を証明することが一番手っ取り早いかもしれない。そう思った俺は手のひらに小さな炎を出してみた。
ボワッ
「えぇえ!」
建物全体に響くような声が彼女の口から出た。
「マジか……。ヤバっ!」
彼女の反応に周囲が驚いていたが、なんでもないですと説明して、なんとかそれ以上注目されずに済んだ。
「ルイさんだっけ?すごいよ!ほんとすごい!まじヤバイんですけど!」
こんなに興奮する人がいるのか!ってくらい、彼女は舞い上がっていた。
なんか見てるこっちが微笑ましい気分になるよ。ていうか俺の妹もこのくらいかわいい仕草ができたらいいのにな。
「じゃ、信じてくれるのかな?魔法使いだってことを。」
「うん、信じる!他にも色々できる?!」
「まぁできるけど、それは今度な。」
正直、俺は外の状況も気になっていた。さっき見た限りでは人食いが何体もいたからだ。
それに噛まれた女性の方も人食いに変わったのも少し引っかかる。もしかしたら…。
なんだか悪い予感がした俺は移動することを提案した。
「たぶん、安心するにはまだ早いぞ。もっと安全な所に行こう。」
サヤは任せなよ!と言わんばかりに俺の手を引っ張り、建物の奥に連れて行った。
<元素の変換>
ありふれた元素を呪文なしで生み出すことは、ある程度の修行を積んだ魔法使いにとっては容易いことだ。
魔力をイメージした元素に具現化させることで、炎や水と言ったような簡単な元素を再現することができる。
しかし大量に具現化させる場合は魔力のコントロールが難しくなるがゆえ、呪文が必要になる。




