燃えた酒場
「おかげさまで。ねえ、この酒場、どうしちゃったんだい?」
黒い残骸をしめしたジャックに、《マード種族》の男は、もとからしかめてあるような顔を、さらにしかめた。
「あいつらだ」
赤茶色の目が疑うようにホーリーをみたが、《クアット種族》どもだ、と言葉は続いた。
「え?クアットが?自分で?」
「ああ、そうよ。 主人がいきなり酒場に火をつけた。驚いたおれたちが、店をやらないのかと聞くと『そうだ』と答えた。 おれたちの楽しみがなくなるとぼやいたら、そのうちノーム種族がやるだろうと言って、長い間世話になった、なんて、あいさつしやがったのさ」
「それは、・・どういう意味だろう?彼はどこか違うところに住み替えるのかな?」
腕を組んだ男の曲がった口は、そんなこと少しも考えていない問いを発する。
「ちがう」と出された答えに、黙って先をうながした。
「《クアット種族》が別な場所に移動するなんて、考えられねえ。 あいつらは昔、別なところからこの場所に移ってきたんだ。そしたらあの、ばかみたいに長い杭の壁をつくった。 おれのじいさんの話じゃ、あの囲いの中で、自分たちがどんなふうに暮らしてるのか、他に知られたくねえんだと。たしかに、こんな近くにいるおれたちだって、まったく知らねえからな。 ―― なのに、あの酒場をやってたんは、あの杭の中におれたちを入れないためだ。 わかるか?敵意はねえが、受け入れる気もねえ。そのかわり、ここで仲良くしましょうってな」
ごぷぷぷと湿ったマード種族の笑いに感心したようにジャックがうなずく。




