落とし穴
ふたりきりになり、ジャックが肘をつき、うなりながら顎をのせた。
「―― ひどく、嫌な気分だよ」
「なら、ここにいろ」
「ぼくの言いたいこと、わかるだろう?」
「さあな」
「―― 嘘だ。きみも、これがなにかの『落とし穴』になるんじゃないかと思ってるはずだ」
赤茶の目ににらまれた青は、楽しげに問い返す。
「だからどうした?―― あいつらは、このおれを消すのを失敗した。この世界が必ずしも、あの目玉どもの思い通りにはならねえって証拠だ」
ぎひひひ、と軋んだ笑いで立ち上がるホーリーに、ジャックが教えてやる。
「 そうだとしても、 ―― きみが助かったのは、ハウアーのおかげだ。それ以外のなにものでもないのに、きみはなにか誤解している」
「そのハウアーだ。 あいつはきっと、目玉どもがいう『スイッチ』だし、おれが思うに、この世界の余分な存在だ。 あいつらは、てめえらでしかけた『スイッチ』のせいで、おれを消すっていう予定を狂わされた。 ―― どうやら《クアット種族》は、てめえの言うとおり、おれたち《キラ種族》とは、『特別』な関係にあるようだからな。 しっかり確認して、目玉どものこの先の予定をぶっつぶしてやる」
かなり楽天的に意気込む男の背を見送り、曲がった口がため息とともにこぼした言葉は届かなかった。
「・・・まあ、たしかにきみは、一度消えるのをまぬがれたけど、でも、・・・この先はどうなのかなあ・・・」




