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『ほかのオナーさま』
首をかたむけたハウアーは、その首をゆっくりとふる。
「いえ。 ぼくは、『オナーさま』しか、《ごしゅじんさま》って呼ばないです」
「そうか。・・・じゃあ、その人がきみを引き取ったんだね」
―――― 名前の書かれた、本といっしょに
「『押し付けられた』って、オナーさまは言います」
だろうな、とテーブルのむこうのホーリーがいやらしい笑いを浮かべ指摘する。
「ほんと、お優しいごしゅじんさまだ。このおれに『毒』を盛ろうと、てめえを供え物みたいによこして、作戦がうまくいかなきゃ、アザができるほど蹴飛ばす」
蹴飛ばす?とジャックがくりかえし、ハウアーを見れば、真っ赤な顔でもじもじとナフキンをいじり、ぼくがいけないんです、とうつむく。
「あ、あたまがよくないので、オナーさまがやりたいことが、よく、わかんないんです。 でも、オナーさまは、ほんとうにホーリーさまに《だけ》、おいしい野菜をたべさせたくて、いっしょうけんめい、自分でつくってるんです。 ―― それが、『仕事』だって、言ってました。 そ、それに、《最後のオナーさま》は、ちょっとだけ、《ほかのオナーさま》より、 怒ってるときが、多かったです」




