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馬が死んだ
馬車用の馬が二頭、息を引き取ったのを知ったのは、朝食の時間になっても、ハウアーが起こしに来なかったからだ。
自分で起きてきた男を、スネイキーがからかうでもなく手招きし、地下をさした。
「ハウアーの看病もむなしく、馬が死んだわ」
「だからっておれの朝飯がなくなる理由にならねえだろ」
腹をたてたまま地下への階段をおりる。
半分壊れた小さなドアを蹴り飛ばせば、完全に外れて落ちた。
「おい」
低音で呼べばいつもはあせったように短い返事があるはずだが、何もない。
ただ、しくしくと静かな泣き声が響く。
「馬鹿ハウアー。 おれの朝飯はどうなった?」
入り口近くの床に、小さな体がまるまっている。
それを蹴り飛ばそうかと足をあげたとき、泣きぬれて汚い顔がゆっくりむいた。
「ああ、ホーリーさま。馬が、馬が、死んじゃったんです・・・」
ジャックが言うには、それもキラ種族のような病だろうと。
「ジャックさまは、きっと、ホーリーさまの『代わりに』病になったんだろうって・・・。 もしそうなら、ぼくのせいです」
うわん、と床に泣き伏す。




