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ひきかえに
しびれをきらせた相槌に、微笑むように顔をふせた男はゆっくりと発音する。
「 ―― 『ノームの子守歌』は、病やけがで倒れた大事な人を癒す力がある」
「ちから?てめえらそんなもん」
「そう。ぼくたち自身にあったんじゃない。 その、『子守歌』に力があったんだ。 大昔、それこそ僕らの種族の中だけに伝わる言い伝えだよ。 ―― ぼくら《ノーム種族》は、癒すための『子守歌』を持っていた。他の種族にもつかえたそれは重宝されたようでね、ディークたちも癒してやっていたらしい。 ・・・ところが、その『子守歌』を、ぼくたちは手放した」
「あ?どういう意味だ?」
「―― ぼくたちの《種族》が、この世界にとどまるための条件として、《空の目玉》に返したんだ。 ・・・ぼくらの種族の繁栄は、きっとそのときに、《彼ら》と契約されたものだったんだ」
「 はん。 ―― なるほどな。古い知り合いだったわけか」
「これは、ぼくが初めて『上』に呼ばれたときに、聞かされた話だよ。―― ただ、『子守歌』のことは、昔話としてノーム種族ならだれでも知ってる。 まあ、本当の話だとは、誰も思ってないだろうけどね」




