わからない
「 おれだって信じられねえ話だが、おれらの種族の中では、《クアット》とかかわるなっていう、暗黙のルールみたいなのがある。今でもだ。 ―― ガキのころ年寄に聞かされた話じゃ、興奮したクアットが、いきなり首にくいついて、なかなか離れなかったらしい。 あいつらの細長い犬歯あるだろ?あれが、えらい深くささりすぎて、引き離したら、食いついた首にそのまま残った。しかもそれが、そのあと三日も抜けなかったんだと」
そりゃすごい、とジャックが感心する。
ケーキを飲み込んだホーリーは続けた。
「でもな、・・・クアットだから、別に血や精気を吸いとったわけでもねえし、噛まれたそいつは首に『穴』ができたのを、みんなにからかわれただけらしい」
「その噛まれたやつはどうしたの?」
「数日あとに、《ディーク》の戦いにまきこまれて死んだ」
「不運だね。で? ―― その、噛んできた《クアット》は?」
「もちろん始末した。って言いたいところだが、・・・・・《この話》が、キラ種族でタブー扱いされてる理由がここだ。 ・・・・わからねえんだと」
「わからない?」
「そんとき《キラ種族》は五、六人で、《クアット》の畑の収穫を邪魔して、畑と野菜を荒らしたら、キレた《クアット》がいきなり襲いかかってきて、一人がくいついたわけだ。 ―― ところが、こんときの《クアット》は、なんだかみんながえらく凶暴で、《キラ種族》は、『呪い』をかけることもなく、くいつたやつをどうにかひきはがすと、 ―― びびって逃げた」




