作戦前夜
それからの時間は瞬く間に過ぎていった。
買った部品やパーツを組み合わせて道具を作ったり、エリザの工房によって武器を俺専用に再調整してもらいながら身に着ける装備を改良していく。
ガンホルダーは自分が取り出しやすい位置、邪魔にならない角度にトキさんに調整してもらったりと総出で準備にかかる。
「ねえ、これってどう思う?」
エリザが白い犬歯を見せながら持ち上げるのは、大きなドラムマガジンが鈍く光るグレネードランチャー。
ただでさえ弾が貴重なこの世界では、擲弾なんてものは用意に手に張ることは無いし、専用の工場がなければ他の弾丸と違って作ることも難しい。
「弾はどうするんだ? 手製で作ったのは暴発の危険もあるから俺は許さないぞ」
子供に言い含めるように言うと、エリザは不敵な笑みを浮かべてチェストバック型の弾薬ホルダーをテーブルへと置く。
まさか、と思いながらも近付いて、四センチほどの弾を取って目を皿にするようにして一つずつ確認していく。
「嘘だろ……いったいどこで手に入れたんだ?」
高火力の弾丸や、貴重な物資の多くは組合がもしもの為に押さえている。確かに市場にいくらかは出回るが、たった一つの弾で人間の命よりも高い場合もある。
そんな値段の弾が目の前に五つはあるのだ。信じられない気持ちのままエリザを見れば、得意げに鈍い光を放つ異核爆弾を机の上に置く。
エリザのことだから大丈夫だとは思うが、車を吹き飛ばす威力の爆弾を気軽に出すのは心臓に悪いからやめてほしい。
「これを作った技術料みたいなものよ。一応作り方も教えてるけど、私の技術に敵う職人はいないみたいだしね!」
鼻高々に言うエリザだが、決して虚言や大法螺などではない。身内びいき無しにしてもエリザはこの街でも一、二位を争う技術を持つ職人だ。
「まあ、それでも五つしか融通はしてくれなかったけどね」
「それでもありがたいことだな。これ一発あればチャージャーぐらいなら一撃だしな」
9ミリ弾を小石かの如くしか感じないチャージャーでも、擲弾を食らえば木っ端微塵に弾け飛ぶ。簡単な計算で五体は奴らを葬り去ることが出来るのは、大きなアドバンテージだ。
「じゃあ、これも持っていこうかな。ジンが持つ?」
「いや、俺は近距離で戦うことが多いから自爆しかねない」
それに俺は、身軽な装備でフットワークを軽くして戦うタイプだ。いくら威力は高いとはいえ、五キロ近いグレネードランチャーを抱えながら動くのはデメリットが大きい。
「ふーん、なら私が持っておこうかな」
軽々と片手で持ちながら動きのシミュレーションをしているエリザを見ながら、遂に作戦の決行が明日に迫ると思うと首を真綿で縛られるように息苦しくなる。
「私とジンならきっと、大丈夫よ……」
覗き込んできた碧い瞳に吸い込まれるように顔を近づけていく。
少しずつ、少しずつ、近付いていき、その距離がゼロへとなる――
「ほっほっほっ、明日の作戦では朝早くからと聞きました。体を休ませて明日に臨むべきでは?」
二人の間を分け入るように突き出されたトレイには、湯気を漂わせる二つのマグカップ。中を覗いてみれば、乳白色の液体が心を落ち着かせるような匂いを漂わせている。
「必ず……必ずや二人とも生きて帰ってきてくださいな。わたしより先に死ぬこと許しません」
いつもとは違う、切実な思いが詰まった言葉。手に取ったマグカップが鉛のように重く感じる。
「それにわたしは百まで生きるつもりです。お二人の曾孫を拝むまでは死ぬつもりはありませんからね」
ほっほっほっといつもの笑みを浮かべるトキさんにエリザと顔を見合わせて、声をあげて笑う。
絶対に生き残る。そして、奴らからも奪い返して見せる。燃える思いと一緒にホットミルクを飲み込んだ。




