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玩具遣い
死体として床に転がっていたのは
昨日、僕に別れを告げた彼女だった。
このような言い回しは道徳的には間違っているのだろう。
しかし、彼女は綺麗に死んでいた。
見る限り傷も首を絞められた跡もない。
「そうだよ、これが《プロ》の犯行だ」
頭の右側の髪は短く刈り込んであるが
左側は長めの、アシンメトリー。
だぼっとした迷彩のパンツ
ヨーヨーを右手に
けん玉を左手に持ち、八重歯が特徴的な笑顔で
僕を見つめている、細身で小柄な少年。
その目はあまりにも黒すぎた。
「ボクの名前は遊女 阿弥
一般人が間違えてこの世界に入っちゃった
って聞いたから、さっと殺しに来たんだよ
死にたくなけりゃあ、さっさとこの世界から手を引きな」
「はは、年上になんて口聞いてんだ」
殺すぞ
と、言いかけたところで
僕は背中に衝撃を受けて
思いっきり廊下に倒れた。
「じゃじゃーん、身空シド只今参上
おっと、ごめんよお兄さん
ちょっと興奮しちまった」
「おやおや、騒がしくなっちゃったね」
遊女と名乗る少年は
ヨーヨーとけん玉をぶんぶんと回し出した。
「まあまあ、一瞬で静かになるさ」
身空シドは格好つけ、ナイフを取り出した。
「あのぅ、いつまで僕を踏んでるのかな」
とても年上の言葉とは思えなかった。




