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血の世界   作者: 言乃 一字句
3/17

茶屋

その後、身空シドと名乗る少年に刃物を突きつけられて脅された。

『鴨川に深夜まで開いてる茶屋があるんだ』

と言って、少年は僕に 連れていけ と命令した。

家に帰ったところで寂しさで押しつぶされそうになるだけなので、少年の悪に染まりたい欲に付き添って上げることにした。

一般常識を持つ大人として。


電車に揺られて約20分。そして徒歩約7分。

目的地である鴨川に着いた。

基本的にこの時間は、世間一般の仲睦まじい男女が川辺のベンチを占領しているので、その横を通るのはあまりおすすめ出来ない。

あちらこちらで桃色な話をしている彼らを、別に羨ましいともおもわず、少年と2人で歩く。

「お兄さん、ここって何度目?」

「わからないくらい来てるのは確かかな」

「ふーん、彼女とかいんの?」

「今日別れたんだ」

「へー、それはご愁傷様。

どのくらい続いたの?」

「6年....いや5年半かな、そう考えると長いな」

「お兄さんって案外やるんだな」


そんな、どうでもいい話をしていたところで

どうやら茶屋に着いたようである。

古びた暖簾の両脇には橙色の提灯。

もやもやした灯りが灯されていた。

「おーい、爺さん。いつもの」

と、少年は言って指をぱちんと鳴らした。

その一連の流れを見て、カクテルを頼んだのかと思った。

「あぁい」

と、茶屋の暗いところから老人の声がした。

老人はまだ何も入っていない湯呑と上品な和菓子をお盆に載せ、のっそりと赤い月に照らされに来た。

頭に毛は生えておらず、その代わりに真っ白な髭が逞しく伸びていた。

そして、その身長に驚愕した。

2m近くあった。

「こっ、こんばんは」

僕はそう言うしかなかった。

老人はにこっと微笑んだ。

殺されるのかと思った。

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