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王手
「殺すなら....早く殺せ」
「それなら初手で殺してるよ」
シドなら、本当に初手で殺せていたはずだ。
だがしかし、『あえて殺さなかった』としたら
もしその理由が『拘束し、情報を掴む』ことだとしたら
あやとりでの拘束は少し弱く感じられた。
「そこの女を殺したのは、鍵が欲しかったからだと推測するが 」
「正解だよ、その為だけにわざわざ殺した」
「表に手を出すとはな」
「それだけの案件なんだよ、一般人を排除することは重大だ」
「それだけじゃあ、ないだろう?」
ふっ と遊女は笑みを浮かべた。
その時僕は彼の左手に違和感を感じた。
「おい、シド
そいつ左手に何か握ってるぞ!」
「王手だ、飛んでけ飛車!!」
小さな将棋のコマが遊女の左手から勢いよく発射された。
そしてシドの手前で白い煙をあげて爆発した。
「伏せて早くここから出るぞ!」
「わかってるよ!」
床を這うようにして玄関先へと向かう。
どうやら、催涙ガスのようだ。
じわっと涙が出てきた。
外に出た頃には、遊女は姿を消していた。
蹴散らされた独楽や、大きな将棋のコマ
あやとりまでもが跡形もなく消え去っていた。
部屋には彼女の亡骸だけが転がっていた。




