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あやとり
遊女は、身空シドの長所を読んでいた。
超接近戦でこそ、殺し屋である彼の長所は飛躍する。
彼のもつ武器の中に、ナイフが多数存在する
しかも、微妙に刃渡りの長さや重さ、さらには材質までもが違う。
使い分けられるものしか持たないレベルの刃物まで彼は持ち合わせている。
しかし、彼は今回は距離を置いているようだ。
未だ得体の知れない敵に対して
超接近戦など、自殺行為に近い。
遊女はさらに、足元に赤い糸をばらまいた。
指先から伸びた赤い糸が、昨日の死体を思わせた。
「埒があかねぇ....」
どこから出したのかもわからないくらいの早さで
身空シドはナイフを投げた。
「あやとり」
遊女が指を奇妙に動かすと、飛んできたナイフを
先ほどの赤い糸が柔らかく受け止めてしまった。
その隙に、既に身空シドは遊女の背後にいた。
「金将」
遊女がそう呟いた途端にずどんという音とともに、遊女の背後に木製の壁が現れた。
そしてそれは、身空と遊女との間を隔てる壁となった。
「不思議だろう?」
遊女は初めて僕の目を見てそう言った。
「ここからは、《こういう》世界なんだ。
君みたいな一般人が来るところじゃない。
だから、君を始末する」
にこっ
不敵な笑みだった。




