第十話:そんなことより聞いてくれ
第十話:そんなことより聞いてくれ
帰宅してドアを開けた瞬間、スマホが鳴った。
お姉さんからのLINEだった。
『そんなことより聞いてくれよ!1よ!』
既読がついた瞬間、続きが来た。
『昨日さ、コンビニ行ったんだけど』
『店員さんがすっごいかわいくて』
『ついレジ袋いりますって言ったら』
『いらないって言おうとしたのにいりますって言ってた』
『もうね、アホかと。馬鹿かと。』
俺はしばらくスマホを見つめた。
『それ、何話ですか』と打った。
すぐ返ってきた。
『150円引き如きで普段来てない吉野家に来てんじゃねーよ、ボケが。』
『えっ?吉野家?ボケが?』
『大盛りギョク。これ最強。』
『何の話ですか?「そんなことより聞いてくれよ」って書いてあったので何か大事な話かと思いました』
三秒後。
『これが大事な話だよ???』
『どこがですか』
『レジ袋!!!!』
『5円か7円ですよね』
『そこじゃない!!!』
廊下の向こうから、ドンッという音がした。
壁を叩いた音だと思う。
『かわいい人の前で緊張したって話してるの!!』
少し考えてから打った。
『お姉さんも緊張するんですか』
『するよ!?』
『意外でした』
しばらく既読がつかなかった。
三十秒後。
『……kwsk』
『え』
『意外って思ったの、kwsk』
少しだけ迷ってから打った。
『いつも余裕そうなので』
また既読がつかない。
今度は一分後だった。
『……言わせんな恥ずかしい』
心臓が、変な音を立てた。
『……それ、どういう意味ですか』
『ggrks』
「ググレカスって言うな!!」
思わず声に出たら、壁の向こうから笑い声が聞こえた。
その笑い声の分だけ、また心臓が忙しくなる。




