第13話 止まる
旧準備室。
机の上には、昨日“まっすぐ進んで倒れたロボット”が置かれている。
蒼
「よし! 今日は“止まるロボット”を作る日だね!」
理人
「いや、止まるとは言ってない。
“止まるかもしれないロボット”だよ」
真
「……止まる。たぶん」
蒼
「毒島くんの“たぶん”は希望」
理人
「いや、希望じゃなくて不安だよ」
蒼はロボットの車輪を触りながら言う。
蒼
「でもさ、昨日の“まっすぐ進んだ”のはすごかったよね。
なんか、ロボットが“意思”持ったみたいで」
理人
「いや、意思はないだろ。
ただのPWMだよ」
真
「……PWM、好き」
蒼
「毒島くん、PWM好きすぎない?」
理人
「毒島は“好き”の種類が多いだけだよ」
蒼
「そういえば今日の社会の先生さ、
“止まる勇気も大事だ”って言ってたよね」
理人
「言ってたな。
“突っ走るだけじゃ事故る”って」
真
「……ロボット、事故った」
蒼
「毒島くん、それは正しい」
理人はノートを開き、
停止制御の図を描き始める。
理人
「で、止める方法は二つ。
“速度ゼロにする”か、
“逆方向に少し力をかけてブレーキにする”か」
蒼
「ブレーキってロボットにもあるんだ」
理人
「まあ、簡易的なやつだけどな。
逆方向にちょっと力を入れると止まりやすい」
真
「……逆方向、好き」
蒼
「毒島くん、今日“好き”多くない?」
理人
「いや、いつも多いだろ」
蒼はArduinoを手に取り、
プログラム画面を開く。
蒼
「じゃあ、`analogWrite(pin, 0);` で止まる?」
理人
「まあ、理論上は止まる。
でも“止まるタイミング”が大事なんだよ」
真
「……タイミング、大事」
蒼
「毒島くん、今日の音楽の授業でも“タイミング大事”って言ってたよね」
理人
「何の話?」
蒼
「リコーダーの合奏。
俺だけタイミングずれて先生に怒られた」
真
「……ずれてた」
蒼
「毒島くん、見てたの!?」
理人
「毒島、なんで見てたんだよ」
真
「……音楽室の前、通った」
蒼
「偶然か!」
理人は笑いながら配線を確認する。
理人
「じゃあ、いよいよテストするぞ。
久保田、スイッチ頼む」
蒼
「任せろ!」
カチッ。
ウィィィィィン……!
ロボットが前に進む。
蒼
「おおおお! 今日もまっすぐ!」
理人
「じゃあ、止めるぞ。
“停止コマンド”送る!」
カタッ。
ロボットは――
ピタッと止まった。
蒼
「止まったぁぁぁぁぁ!!」
理人
「止まった……!
ちゃんと……止まった……!」
真
「……かわいい」
蒼
「毒島くん!?」
理人
「いや、でも気持ちはわかる。
なんか“お座り”した犬みたいだよな」
蒼
「ロボットの赤ちゃんだよ!」
真
「……赤ちゃん、賢くなった」
蒼
「うん、賢くなったね!」
理人はロボットを見つめながら言う。
理人
「……なんかさ。
“動く”と“止まる”ができると、
急に“ロボット”って感じするよな」
蒼
「する!」
真
「……する」
蒼
「じゃあ次は“曲がる”だね!」
理人
「いや、それが一番難しいんだよ!」
真
「……でも、やる」
蒼
「やろう!」
理人
「やるか……!」
三人の声が、
初めて“止まったロボット”の横で響いた。
その音は、
“次の挑戦”の始まりだった。




