女王学園の冒険152
「うっふふふふふふ!!いいわぁ、素敵よ貴女!」
エナがメゾーレのサマーソルトキックを食らったのを見て、チャンスとばかりに積み重なったスパルトイの残骸の中から飛び出してきた影の正体はマイだった。
「確かにこの木偶人形達には私の攻撃は効かないけど…………貴女はどうかしら!?違うわよねぇッ!?」
手負いのエナへと迫るマイの姿は、さながら恐ろしい速度で迫ってくる毒虫のようだ。
意識外からの奇襲とはいえ、すぐさまエナも剣を構え直して迎撃を試みるが負傷した身体が思ったように動かず、迎撃は失敗に終わる。
マイはこれ幸いとエナの脇腹に出来たパイルバンカ―の傷口を目掛けて嬉々としてアイスピックをブチ込んだ。
「ぐうっ!!!」
許容量を超えた激しい痛みはエナの全身の筋肉を否応なしに硬直させ、それが更に大きな隙となってマイにアドバンテージを与えてしまう。
マイは怯んだ隙にエナの背面に素早く回り込むと、上半身に抱き付いておぶさる様にしがみついた。
「あはっ♡素敵よ貴方!!もっともっと痛くしてあげるからねえぇぇぇ!!!」
マイは更にアイスピックを二本取り出すと、エナの両肩にそれぞれ一本づつを深々と突き立てた。
刺突の痛みはヒトに悲鳴を上げさせない代わりに、息が詰まる様な圧迫感を肉体に強制し、身体能力を著しく制限する。
「ぐっ……ぎぃぃ!!」
「さあ、まだまだ楽しみましょうね~♡」
マイは更に隠し持っていた二本のアイスピックを取り出して、背面からエナの視界に入る様にわざと手を回してアイスピックを見せびらかして恐怖を煽る。
「気丈な貴女のカワイイ悲鳴……もっともっと私にちょうだい?」
「…………ッ」
普通はここまでやれば強烈すぎる恐怖と痛み、これから行われるであろう責め苦を予感して絶望するだろう。
しかしそうはならなかった。
息は絶え絶えだったが、エナの心はまだ折れていなかったのだ。
「…………え?なあに?」
「な・め・る・な!と言った!!」
エナは何処にそんな力が残っていたのか驚く様な渾身の力で自らの剣を自らの腹に刺した。
刃はエナを貫通し、勿論密着状態マイの腹部にも深々と突き刺さる。
「あ……?」
今度は逆に不意を突かれたマイが、思わず拘束を緩めてしまう。
エナはその隙を見逃さず、マイの顔面に肘鉄を食らわせてマイを強引に引き剥がして身を翻し、蛇腹剣でマイの腹を刺した。
「がはっ!!」
「よくもヒトの身体を好き放題してくれましたね……!」
鉄面皮のエナも流石にこれには牙を剥く。
大きな犬歯を剥きだしにしたその表情は普段の彼女からはとても想像出来ない程の迫力に溢れていた。
その獰猛さを真っ向から受けているマイは貫かれた腹の痛みをすっかり忘れてしまった様子で、自らの顔を両手で覆いながら恍惚とした表情を深めていた。
「はぁ……素敵、本当に素敵よ貴女……♡」
その一部始終を見ていたメゾーレは二人のあまりの血生臭さにガッツリ引いていた。
普通の喧嘩なら止めれば良いだけだがメゾーレとエナは敵同士、そして遺憾な事にマイは味方だ。
(うわあ、なんか凄い事になっちゃったわ……)




