女王学園の冒険151
やはり腹に穴を開けられた状態で碌な応急処置もしないまま戦い続けるのは流石のエナにもキツい様で、徐々に動きの精彩を欠いていった。
息が上がって辛そうなエナの様子を見兼ねたメゾーレが言った。
「……もう降参しなさいな、拘束はするけど命は保証するから」
「お優しいんですね、貴方は……しかし情けは無用です」
「私だって誰彼構わず情けをかける訳じゃないけど……でも貴方は愛想は無いけど、悪いヒトには見えないもの」
エナは少し意外そうな表情を見せた後で語り始めた。
「……私、エナ含むリカとドールの三名はグラーフ・F・ツェッペリンに造られた人造キメラです。しかし少なくとも私は今回のドクの行いが悪だと承知の上で指示に従って行動していました」
「……だから自分がどんな目に合っても受け入れると?」
「ええ、私達が彼の被造物なので指示には従いますが……そうなっても仕方ない行動をしてきたと思っています」
自分の行いが悪だという割にエナの口調は相変わらず平坦で、しかも言葉に淀みが無かった。
未だ油断出来ない状況なのだが、それでもそのちぐはぐさが妙に可笑しくてメゾーレは思わず小さく吹き出してしまった。
「ぷっ!ふふっ……貴方って、もっと計算高い合理主義者なのかと思っていたけど勘違いだったわ……想像以上の堅物なのね」
エナは自分の何が笑われているのか理解出来てない様子で、小さく首をかしげていた。
「それに……私は負けるのが嫌なので」
そう言いながら蛇腹剣を鋭く前で突き出した。
蛇腹剣は突きと同時に真っ直ぐに伸びてメゾーレへと襲い掛かった。
メゾーレはバックステップと脚甲で蛇腹剣を逸らして防ぐが、エナが大きく腕を振り回すと突きは横に薙ぎ払う斬撃へと変化して再びメゾーレを追いかける。
横薙ぎを跳躍で躱したメゾーレは、そのままエナに踵落としを仕掛けた。
既に元の長さまで戻っていた蛇腹剣でエナは踵落としを上手にいなす。
(もらった!)
ほぼ密着状態からエナはタックルでメゾーレの体勢を崩して距離を調節すると、そのまま蛇腹剣を振るう。
しかしドン!という衝撃音と共に地面が揺れると、メゾーレは回避不能の体勢からいきなりサマーソルトキックを繰り出している。
「しまった……!」
エナが理解した時には既に遅かった。
さっきの音の正体はメゾーレの脚甲だ、踵落としがいなされて足が地面に付いた瞬間にパイルバンカ―を地面に撃ち込んで強引に体勢を変えたのだ。
メゾーレはサマーソルトが命中する瞬間にもダメ押しとばかりにエナにパイルバンカーを撃ち込む。
「くううっ!!!」
今回もなんとか致命傷は免れたものの、あまりの衝撃にエナの身体は吹き飛ばされてしまった。
体勢は崩したもののメゾーレ自身もパイルバンカ―の衝撃を利用して大きく後ろに飛び退いており追撃に備えている。
「はぁ……はぁ……!」
エナは息が上がっており、すぐにメゾーレを追撃出来ない程に消耗していた。
その様子を物陰から見つめている視線があった。




