女王学園の冒険147
「どれどれ……久方ぶりのガチンコと行くかぁ!何年振りだろうなあ、こんなのはよ!」
ツェッペリンは今この状況を心底楽しんでいた。
『シンギュラリティを巻き起こし世界を変革した二人の天才』なんて、もう一人の天才ヘルメスとセットで世間様から過剰に持ち上げられてからというもの、賞を取ったり、どこかの大企業や国と契約したり、大層な役職に就いてみたりと、関わるプロジェクトが巨大化し大袈裟になっていけばいくほどツェッペリンはデータとにらめっこしながら研究室に籠る事が多くなり、現場に行く機会がどんどん減っていった。
自分の頭脳の価値を知っていたツェッペリンは『正直つまらねえが、こういうのが大人になるって事なのかもな……』なんて諦めていた時期もあったが……その諦観の末、いつまでも終わらない第三次世界大戦が勃発、にっちもさっちも行かなくなり、挙句に自らの手で文明に終止符を打つ羽目になった。
それでも尚、彼が今も強く思う事は『楽しさに勝るものは無い』という気持ちだった。
「スパルトイ!!」
ツェッペリンの声に反応して部屋の天井に無数の丸い穴が開いた。
丁度人一人が潜れる様な大きさの穴から、骨格標本みたいな骨が次々と落ちてきた。
地面に落ちた骨達は真っ暗な眼窩に機械的な赤い光を灯すと、ゆっくりと立ち上がった。
「随分大掛かりですね?今日は早く帰れるかと思っていたんですけど……」
エナが読んでいた本をパタンと閉じて再び武器を構え直した。
「いいじゃねえか、もう少し付き合えよ」
「はいはい……わかってますよ」
大量に湧いてきた雑魚を見た恋が文句を言った。
「オイ、ずりーぞオッサン!」
「うるせー!この程度でギャアギャア喚くんじゃねえ、根性見せてみろってんだ!」
オッサンとヤンキーのやりとりを横目で見ていたマイがぼそっと呟いた。
「あのオジサン……本当に教科書に載ってる『あの』グラーフ博士なのかしら?なんか恋と同レベルに見えるんだけど♪」
「ぷっ、確かに」
「お嬢様、なにか作戦はあります?」
「そうねえ……ルビーはあの骨を減らしてちょうだい、ニレは最前線で敵を抑えて…………マイは多分、あの骨と相性が悪そうだから無理しないように後方から支援ね」
「はぁーい……」
マイがつまらなそうに生返事を返した。
それも仕方ない事で、あの骨達にはマイが得意とする刺突攻撃も毒攻撃も効果が薄そうだ。
そもそもマイの戦闘スタイルは彼女自身の嗜虐性が発露した延長線上にあるものであり、端的に言うと痛がらない相手とは相性が悪いのだ。
「私と恋で、あの二人を仕留めるわ」




