女王学園の冒険144
攻撃が効かないと言われたからって、攻撃しないのはまた別の話だ。
敵のブラフだという可能性だってあるし、根拠もなく敵の話を鵜呑みには出来ないからだ。
まるで無防備なツェッペリンに対して、先ずはニレが攻撃を仕掛けてみる。
しかしツェッペリンは余程自分を護る次元障壁に自信があるのか、ニレの攻撃をまるで気にも留めず話を続ける。
「俺も色々やっては来たが……行動理念は一つだけなんだよ、それは昔から何も変わっちゃいない『セカイを今よりも面白く』昔も今も、俺を動かすのはこれだけだ」
メゾーレ渾身の回し蹴りが、ツェッペリンを護る不可視の次元障壁に音もなく阻まれる。
ツェッペリンはそれが当然とばかりに蹴りを避けようとすらしなかった。
「うわ、なんだか気持ち悪い手応えだわ……何かに阻まれているのに、空振りしたみたいな感触……」
こちらの次元と膜の様に展開しているあちらの次元……双方の空間には『何も無い』
空間の裂け目が実質的にバリアの役割を果たしているだけで、虚空が二枚重なっているという状態になっている。
次元そのものを歪めるような攻撃でなければ障壁の向こうには絶対に届かないし、そうじゃない攻撃は全て命中以前の空振りとして終わる。
「時にお前ら、今のセカイはどうだ?どういう風に見える?……ま、答えは聞いちゃいないんだが」
半獣化したニレが全力で両手斧を振り下ろすも、メゾーレの時同様に空を切った。
強力な一撃は床を粉砕し、ヒト一人ならば悠に呑み込めそうな大きな地割れが作ったが、ツェッペリンは穴に足を取られる事なく空中をつかつかと歩いていた。
「足元を崩せればと思ったけど……そんな甘くはないよね」
「俺には今のセカイは多少バランス悪く見えるんだよな……『強い奴が強すぎる』とでも言おうか」
ルビーの火球が直撃し周囲を大炎上させても、ツェッペリンの白衣には焦げ目一つ付かない。
距離的には近い筈なのに、ツェッペリンまで熱が届いていない。
「有史以来、人間社会ってのはずっと不公平なもんだったが……人間がキメラ化してヒトになってからというもの、どうにもそれが加速しちまってる」
「生まれた国、家の裕福さ、自身の才能、人との巡りあわせ……以前は大体そういうもんでクオリティ・オブ・ライフが決定していたもんだが、そこに新しい要素が加わったんだ。お前らも持ってるだろ……?『アブノーマリティ』だよ」
アブノーマリティとは発現した獣性細胞が参照元の動物以上の超能力を持って生まれて来る事だ。
例えばデンキウナギの性質を持って生まれたキメラが発電の能力を持って生まれて来る事は『普通』だが、羊のキメラが発電能力を持って生まれて来るのは『アブノーマリティ(異常性)』と呼ばれている。
「そんで俺ぁ考えた訳だ『世の中もっとチャンスがあってもいい』んじゃないかってな」
とりあえず皆で一生懸命攻撃したものの全く通じる気配が無いので、一行はツェッペリンの話を聞いてみる事にした。
「……それが今回の事とどう関係しているワケ??」
ツェッペリンはいい質問だ、と言わんばかりにメゾーレを指差した。
「そこだよ!人生のチャンスを作り出せる道具を用意するのは造作も無い事だ……戦時中のロストテクノロジー、金、資源、レアな動植物、俺の日曜大工の発明品……それらはヒトの人生を変えれる可能性がある。問題はそれを分配する方法さ」
「つまりどういう事だ??」
未だにツェッペリンの話の要点を理解出来ていない恋にニレがかいつまんで教えてくれた。
「つまり……世界中にお宝をバラ撒きたいんだけど、なんの苦労も無くそれを手に入れられるのは嫌……って事なんじゃない?」
「その通り!!そしてその為の試練として創ったのがこのダンジョンっつーワケだ!」
ツェッペリンの目的が判明するとルビーが呆れたように呟いた。
「回りくどい事するわね、このオッサン……」




