女王学園の冒険143
「…………で、俺がこんな事をした理由は一つ。『世界をより面白くする為』さ!」
ノッて来たツェッペリンに対しメゾーレが反論した。
「ふざけないでよ……貴方の勝手な行いのせいで、一体どれだけのヒトが迷惑を被っているのか分かっているの!?」
「……おお怖ぇ、ああそうだ。お前の言っている事は正しいぜメゾーレ・『ジュラルバーム』……で、ここ最近のお前の街の統治制度に変わりは無いみたいだが、お前はそれをお前の両親に向かって言った事があるのかい、拷問女王の娘よ?」
これにメゾーレは反論出来ず言葉に詰まった、大人しくなったメゾーレを横目にツェッペリンはさらに話を続けた。
「拷問女王が率いていたならず者達の拠点から発展したのが、今の学園都市ジュラルバームだ。お前の母親が殺したヒトの数はもう五桁に届く勢いだぜ?大量破壊兵器を使った訳でもねえのに、この数は流石の俺でもちょっと引くぜ。あのイカれ女の凶行を止められる立場に居るよなお前は?それともママがおっかなくてそんな事は出来ねえか?俺みてーな優男には威勢良く食って掛かれるのに?」
「…………それは…………!」
エナが小さく挙手した。
「……私の認識では『ヤサオトコ』と呼ばれる男性はドクの様な悪辣な面構えをしていないですし、幼気な女子をいじめて遊んだりしないと思います」
「……べーつにいじめてなんかねーだろがよ、世間知らずなお嬢様が正論で殴りかかって来るもんだから、こっちもちょっと正論で小突いただけだろ?」
ツェッペリンが言っている事はジュラルバームの街では恐怖で誰しも口にしない事実だった。
それをジュラルバーム家に対して言うなんて以て他……もし誰かがそんな事を口にしたと拷問女王の耳に入ってしまったら最後、一体どんな拷問にかけられるかわかったものでは無い。
だがツェッペリンはその支配の外に居る人間だ、彼にとっては七大都市の支配者なんて取るに足らない存在なのだろう。
ヒトは誰しも自己矛盾を抱えて生きるものだが、メゾーレ・ジュラルバームという個人にとってツェッペリンが指摘した事実は致命的な事だった。
あの両親の子供にしては奇跡的な事にメゾーレはまともで、出来れば良い統治者であろうと心掛けている……しかし自分が座っている権力の椅子が、拷問女王と呼ばれている母親よって築かれた犠牲者の山の上に鎮座しているという事実がある以上、良き統治者であろうとするメゾーレは母親を糾弾しなければならない。
しかしメゾーレはその事実に目を背けて、あまつさえ権力の恩恵は受けてしまっている状態にある。
その後ろめたさが、正しくあろうとするメゾーレ自身を苦しめる。
思い詰めた表情のメゾーレの背中を誰かが力強くに叩いた。
「思う所は色々あるのかも知れねえけどさ……まあ気にすんなよ。何と言われようと今、俺らがここに居て、学園都市を滅茶苦茶にしやがった犯人が目の前にいる……細かい事はアイツに落とし前を付けさせた後でゆっくり考えりゃいい」
「恋……そうね、先ずはアイツを捕まえなきゃ」
「お前等は試験にはもう合格してるんだが、この俺様を捕まえるつもりか……じゃあエキシビションゲームといこう」
ツェッペリンはかかってこいと言わんばかりの態度だが、どう見ても丸腰にしか見えない。
だからといって油断する事はせず、ニレは慎重に距離を詰めていく。
ツェッペリンは一向に気にした様子は無く棒立ちになっていて、彼の傍に控えているエナも携帯端末を弄っていて隙だらけだ。
じりじりと接近し、一息で組み付けるという距離まで来た時、ニレがツェッペリンを抑え込もうと飛び掛かった。
ツェッペリンに手が触れるかという瞬間、彼の周囲に張り巡らせた不可視の壁に阻まれた。
「……なんだコレ!?」
「薄い膜状の異空間だぜ、俺の周囲をこれで包んでいる……ま、簡単な理屈だ。異次元の虚空に向かってどんな攻撃を仕掛けても無意味って事だな」




