女王学園の冒険142
突然現れたその男は自らをツェッペリンと名乗り、しかも事件の首謀者だと言った。
遂に姿を現した黒幕に対して、一行は会話で情報を得ようと試みる。
一般的に伝え聞く彼の性格は『真に天才だったが、変わり者だった』とか『何を考えているのかわからない不気味さがある』というのが通説であった為、上手くいくかは分からないが、まあとにかく話し掛けるだけなら失う物も無いし、労せず情報が得られるならそれに越した事は無い。
「首謀者……一体どうしてこんな事を?何が目的なの??」
質問に対してツェッペリンは黒目を少し斜め上に動かして、少し何か考えている様子だった。
「身構えてもらってるところ悪いんだが、別に大した理由じゃあないんだがな……そうだな、順序だてて話した方が幾分かわかりやすいか」
そして自分の背後にあるダンジョンキューブを親指で指差しながら言った。
「先ず一つはコイツの試運転さ、作ったモンを実際に動かして試したいってのは人の性というもんだ……あぁ、そうだ。おそらく次に来るであろう質問の前に、このダンジョンコアに付いて少し説明を加えておくから、まぁ大人しく聞いておけ」
彼は他人に対して説明するという行為が苦手らしく、所々分かりにくい部分もあった。
その彼の説明を要約するとダンジョンコアというのは『範囲内の次元を継ぎ接ぎして空間を丸ごと迷宮化させる事が出来る物』らしい。
ダンジョンコアは必ず迷宮化させた空間の最奥に配置される様になっており、空間を正常化する為には文字通りダンジョンを攻略してコアを破壊するしかない。
「……どうして学園都市を狙ったの?」
試運転だけが目的ならわざわざジュラルバームを狙う必要は無い筈だ。
「確かに試運転だけが目的ならその通りなんだが……これは『新しい人類』であるヒトに対してのテストでもある訳だ」
「どういう事……?」
「迷宮を用意した、迷宮の中に『それなり』の障害も用意した、今回は試運転なんで用意してねえが、ダンジョンコアの機能として迷宮の最奥には『報酬』も用意されるが……しかし報酬はクリアされて誰かの手に渡ってもらわなきゃ意味が無い……今回の試運転は迷宮のレベルデザインも兼ねているって訳だ」
たまらずここで恋が口を挟んだ。
「……やれ迷宮だ障害だとか、そんなケチ臭い事言わずにさぁ、報酬だけくれりゃ良かったのによ」
「わかってねぇな、お前……それじゃつまらねえだろうが、お宝ってのは苦労して手に入れるからお宝なんだぜ?」
ツェッペリンは話を続けた。
「ジュラルバームってのは学園都市だよなあ?学校に行くって事はよ、人口比率の傾向として若くて前途有望な連中が多いだろ?俺はただ強いだけの奴よりも、そういう先のある若者達にダンジョンの報酬を渡してえのよ」
「……面倒臭いオッサンねえ」
「ハハハ、違いねぇ!」
ここまで話を聞いてもツェッペリンの目的はわからなかった。
(迷宮が用意する報酬を誰かに渡したかった……?だから何の目的があってそんな事を?)
堂々巡りの様に最初の質問に立ち返ってしまう。
即ち『どうしてこんな事をしたのか?』という事だ。
ツェッペリンの話からは何か達成したい目的がある様にも、叶えたい望みがある様にも見えない。
「なにやらスッキリしねえ顔が並んでいるが安心しろ、ようやく話の半分が終わったって所だ」
「……オジサンは話が長いわねぇ♪」
「オイやめろ、傷つくだろうが」




