女王学園の冒険141
「コアの次元障壁はこちらで解除しておきますので、あとは破壊してもらえれば学園都市は元に戻るでしょう」
エナが手元のタブレットをちょちょいと操作すると、たったそれだけで強固な次元障壁はウソみたいに消え去った。
メゾーレ一行の腑に落ちないというか、スッキリしない様な微妙な表情に気付いたエナが言う。
「…………どうしましたか?何か他に疑問がおありですか?」
メゾーレがやる気を無くした顔で言った。
「どうせなら貴方も倒してスッキリ解決……って感じにしたかったわ」
「えぇ、だから私は降参しましたよね?それも含めて貴方方の勝利ですが……」
「いえ、そういう訳じゃないんですけども……うーん」
「なんというか、事務的とはちょっと違うんだけど……なんていうんだっけこういうの?」
「……『塩対応』かしら♪」
「それだわ」
エナは倒れているドールに応急手当をしながら反論する。
「失礼ですね、私はしっかりと任務を全うしましたよ。未知の場所への探索能力と過酷な環境に対してのサバイバル能力、そしてある程度の戦闘能力……貴方方はその全てをクリアし、能力を証明しました」
小柄なドールの身体をよいしょとおぶって、エナはそのままヴィラの許へ向かう。
そして、もだえ苦しむリカに声を掛け、肩を貸して立ち上がらせた。
しかしその口から放たれる言葉からは特に何かの感情を感じ取る事が出来ない。
「それを確認出来た時点で私達の仕事は終わりです、挑戦者の打倒が私達の目的ではないので」
エナの仕事に対する姿勢や、イマイチ熱の感じられない塩対応は置いといて、最後の疑問が残っている。
メゾーレは単刀直入にそれを聞いてみる事にした。
「……最後にひとつだけ答えて、一体何の目的があってこんな事を?」
学園都市の空間がめちゃくちゃになるという事件の発端に対して彼等は何の声明も発表してないし、ここまで辿り着いてた今もメゾーレ達には全く目的が見えてこないままだ。
ここにいる三人はワープを渡り歩き、ダンジョンコアに到達した者を試していたと言っているが、それも謎のままだ。
ここで初めてエナが困ったという表情をした。
「特に口止めされてはいないので質問に答える事は可能ですが、今は二人の治療を優先したいので……」
そこへ突然今までこの場に居た八人の誰でもない、男の声が聞こえてきた。
「……おいおい、もしかしてもう終わっちまったのか?いくらなんでも早すぎねえか?」
その声はエナにとっては聞き慣れたもののようで、振り返りもしないまま男の声に答えた。
「ちゃんと来る前起こしましたけど?後で行くって言って結局起きなかったのはドクじゃないですか?」
「昔からどうにも朝は弱いんだよなぁ……」
男はツンツン頭でやったら尖がった鷲鼻の痩せ型の男だった。
ビーチサンダルにゆったりしたハーフパンツ、目に痛い柄のはいったアロハシャツの上に白衣を羽織っていた。
なんとも気の抜けただらしない恰好だが、その顔は歴史の教科書に必ず載っているいて知らぬ人は居ない。
ゲヘナによる文明破壊を起こした大戦犯だとか、第三次世界大戦を終わらせた英雄であるとか……未だにヒトによってその評価は様々だ。
「はじめまして……俺の名はグラーフ・フェルディナント・ツェッペリン、今回の事件の首謀者だ」




