女王学園の冒険140
他のメンバーがリカとドールを抑えているので、必然的にメゾーレが一人でエナを相手取る形になった。
戦いは拮抗している様に見えるが、メゾーレは攻めきれない一方、対するエナはというと『攻めて来ない』
どうやらエナはメゾーレを倒すつもりが無いらしい。
「……貴方、やる気が無いのならさっさと降参してくれないかしら?」
一応挑発的に言ってはみたものの、こんな挑発に乗ってくる様な安い相手ならメゾーレも苦労しない。
「敵を挑発したいのであれば、攻撃的な言葉を選んだ方が効果的ですよ……メゾーレ・ジュラルバームさん?」
「…………っ!」
ジュラルバームの名前に物怖じしないどころか、逆にそれを挑発に使われてしまい、うっかり乗ってしまいそうになるのをグッと堪える。
七大都市の支配者たるジュラルバームの名はメゾーレの人生に多くのものを与え、また縛り付けてもいる。
メゾーレにとって家の名は、かなりデリケートな問題なのだ。
(おっとっと、逆に私が乗せられてしまうところでしたわ……それにしても……)
腹の立つ事なのは確かだが、それは一旦忘れるとして。
エナの戦闘スタイルはメゾーレにとって、とても興味深いものだった。
安全ブーツに仕込んだ加速装置による速度の乗った蹴り技と蛇腹剣の波状攻撃、蹴りが先か斬撃が先かというフェイントで相手を牽制しつつ、器用に立ち回る。
蹴りだけの戦い方で伸び悩んでいるメゾーレにとって、エナの戦闘スタイルは非常に参考になるものだった。
(考えてみれば……向こうも他をヘルプに行く素振りが無いという事は、このまま私が戦い続けていれば相手を一人縛り付けておけるわね)
そうならばこの機会が逆に儲けものだ。
例え勝てなくても出来るだけ長い時間戦う事が出来れば、よりエナの戦い方を見て学ぶ事が出来る。
「……おや?戦い方が変わりましたね、何か良い作戦でも思いついたんですか?」
メゾーレの表情や行動から、なんらかの変化を察したエナがメゾーレに問いかける。
こういった観察力の高さもエナの強みだ、今の台詞も敢えて口にする事でメゾーレにカマをかけているのだろう。
「随分余裕ね?仲間を助けに行かなきゃいけないのは貴方の方ではないのかしら?既に一人、やられたみたいよ?」
「あぁ、それなんですが……」
ヴィラが恋の技に掛かり豪快に苦しむ声が二人の耳にも聞こえてきた。
「…………」
倒れた仲間二人を見たエナは構えを解いて動きを止めた。
そして武器をキャスターに仕舞うと、ゆっくりと両手を上げた。
「じゃ、降参します」
「ええっ!?」
なんの躊躇いもなくエナは勝負を捨てた。




