女王学園の冒険136
ドールが勝利を確信して攻撃を行った直後、またもルビーがあり得ない動きをした。
一瞬その場で体勢を低くしたかと思えば、逆に今度は弾かれる様に背筋をまっすぐに伸ばして、おまけにドールに背中を向けたまま猛スピードで突進してきたのだ。
「なんだよそれぇ!?」
地面から足を浮かせない状態で移動する特殊な歩法、武道一般でいう所の摺り足。
それとルビーの炎の推進力を組み合わせたオリジナルの移動術。
それが可能にしたのは後ろ向きのまま、しかし足をほとんど動かす事なく行える、変幻自在の急加速だ。
「バカが!こっちにケツ向けたままじゃまともに反撃出来ねえだろ!」
ところがある、背面を攻撃出来るメジャーな技が。
「破ァ!!!」
鉄山靠。
ルビーの最も得意とする技だ。
しかもルビーのは元々の鉄山靠の威力にプラスして、ルビーの能力で炎を発生させて推進力と威力を爆発的に高めている。
「ぐぼぁ!!」
攻撃しようとしていたドールは、ほんの一瞬だけ判断が遅れてしまい、それがそのまま致命的な結果を招いてしまった。
ルビーの鉄山靠がクリーンヒットし、ドールの身体は綺麗に吹き飛んだ。
地面と水平に吹き飛びながらも、ドールはなんとか踏み留まろうと両足に力を入れるが、磨り減らした靴底で地面に黒い二本線を描くだけに終わった。
必死の抵抗も虚しくドールの身体は壁に激突し、そのまま崩れ落ちる様に突っ伏して動かなくなった。
「十年早いのよ!」
・・・
ルビー達がドールとメゾーレがエナと交戦開始した頃まで時は戻って、恋とニレはヴィラと対峙する事になった。
大柄な体躯からも想像付きやすい様に、ヴィラは典型的なパワーファイターであり、戦い方も野太刀をメインに扱うというシンプルなものだが、だからこその強さがある。
一見するとヴィラは長い野太刀のリーチを生かして一方的に攻撃出来る中距離からブンブン刀を振っているだけに見えるが、長い武器は地面に対して垂直に振り下ろすよりも横に振り回した方が敵の行動を制限しやすく、理に適っている。
「ホラホラ、護ってばっかりじゃつまんないよ?」
武器というものは大きく強力になればなる程、細かな運用というものが出来なくなっていく傾向にある。
しかし大きく扱いにくい武器というものが、刀剣や銃の歴史に於いて淘汰される事は無かった。
つまり扱いにくく大雑把になっても余りある『威力』というメリットが大型の武器にはある。
「ダメだ、全く近づけない……!」
ヴィラに対して防戦一方になってしまっているニレが両刃の大斧、ダイアモンドスカッシャーの柄を握りしめながら呟いた。
ニレの持っている大斧も近接武器としては長いリーチと三トンもの重量を誇り、ニレの特殊能力で強化した腕力で振るえば、威力も速度も相当なものになる。
しかしヴィラはパワーもスピードも完全にニレを上回っている。
挙句には二対一の状態だというのにヴィラはまだ余裕すら見える。
「……大人しく帰るならこっちから追う様な事はしないよ、面倒だしね」
「余裕かましやがってぇ……気に入らねえぜ」
「どう受け取ってもらっても構わないけどさ、悪いけどあたしらも手を抜けなくてね……でも本気のあたしの剣に当たったらさ、アンタ達バラバラになっちまうよ?」
リカの言い方には優越感や嫌味は感じられない、ただ単に死に急ぐなと忠告しているだけなのだろう。
でもだからと言って『はいそうですか』と素直に退く訳にはいかなかった。
だって向こうで戦っている仲間達がまだ諦めてなかったから。
「冗談じゃないぜ、ここで逃げたらアイツらに何言われるかわかったもんじゃねぇ……特にあの毒ピンクの野郎に」
くだらない意地だと笑われても、恋は絶対にマイにだけはナメられるのが嫌だった。
「毒ピンクて……でもそうだね、多分すっごいニコニコしながらなじってくるよね」
「そんなんされてみろ、俺ぁ脳みその血管ブチ切れて死んじまう」
いつの間にか取り出していた酒を飲み終えてヴィラが笑った。
「アハハ、仲良いんだねアンタ達……じゃ、精々気張る事だ。死んでも恨むなよ?」
「上等ォ!」




