女王学園の冒険134
マイはルビーの炎に耐えれると言ったが、それはルビーの能力が通用しないという意味ではない。
実はマイに炎を防御する手段は無い、だから服も燃えるし髪の毛もチリチリになって燃え尽きる。
肌も火傷で爛れるし、それどころか身体の一部に引火してしまっている始末だが、それでもマイは足を止めずに走り続ける。
こんな芸当は炎に対する特殊能力持ちでもない限り、到底無理だろう。
しかしマイの特殊能力は再生であって炎耐性では無い。
つまり今マイは、自身の再生能力で火傷を治しながら、痛みに耐えつつ無理矢理走り続けているのだ。
そうとは知らないルビーは素直にマイの能力に感心していた。
「凄いわね、私達クオリアも肉体的な痛みとは縁遠いけど……もしかしてアイツもそうなのかしら?」
ドールのスピードは確かにマイを上回るが、ほとんど無差別攻撃に近い炎の海に邪魔されれば速度を落とさざるを得ず、真価を発揮出来ない。
上がり過ぎた気温のせいで、空気中の酸素量が減少しているのか、喉も乾くし呼吸すらしんどい有様だ。
しかしそんな炎の海をものともせず、先程までと変わらない速度で、先程とは変わり果てた焼死体の様な姿で追いかけて来るマイは脅威よりも恐怖を感じる。
「地獄の亡者かよ!てめえは!」
「ふふふ……そうかもね?だって私、地獄から生まれた来たんですもの♪」
そうしてマイはようやくドールに追い付いた。
マイは身体毎タックルを仕掛けるとガッチリとドールを自身の体の下へ組み敷く。
「つかまえた……♡」
そして火傷で爛れた顔面に焼け崩れた微笑みを浮かべると、間髪入れずアイスピックでドールの胸部を突き刺した。
普段のマイのイメージからすると顔や眼球でも狙いそうなものだが、マイが狙ったのは胴体、とりわけ肺と内臓だ。
そもそもヒトの頭部というものは頭蓋骨に覆われていて、とても頑丈に出来ている為、こういった状況で狙うのは悪手だ。
それよりも肋骨位しか防御する骨が無い胴体、各種臓器を狙う方が効果的……そしてスピードが速いドール相手なら、マイが狙ったのは肺だった。
肋骨が砕けて肺に刺さる様にと、そして出来るだけ沢山苦しませる事が出来るようにと、願いを込める様な気持ちでマイは組み伏せたドールの胴体をメッタ刺しにしようとした。
「なめてんじゃねえぞカスがぁ!!アタシに追い付いたからどうしたって!?その程度の事で勝った気になるなよなあッ!!!」
ドールは両手の甲に仕込んでいた鉤爪をジャキン!と繰り出すして、不利な体勢にも関わらず逆にマイの胸部を三回斬りつけた。
思わぬ反撃に怯んでしまったマイをそのまま蹴り飛ばして距離を取る。
「ゲホッ!ゲホッ!」
解放されたドールは堪らずせき込むと、口の中の血をぺっと吐き出した。
「……何よ、結局逃げられちゃってんじゃないの」
空中から降りてきたルビーがマイの横に降り立った。
「そうね……でももうさっきみたいには動き回れない筈よ、そういう訳で後はおねがい♡」
「わかった、上出来よマイ……というかアンタ、大丈夫なのそれ?普通ならもう死んでてもおかしくない位の火傷だけど?」
「……あら、心配してくれるの?」
「まあね……なんせ私の炎に焼かれたんだから、無事に済むはずないでしょ」
「火傷はともかく……さっきの爪に毒塗られてたみたい。ちょっと動けそうにないわ」
「……そんだけ口が回るなら大丈夫そうね、いいわ後は私に任せなさい」
流石に起き上がれそうにないマイを庇う様にルビーが前に出ると、そのまま拳法の構えを取ってドールと対峙した。




