女王学園の冒険130
「試練だなんだと御大層な事言ってるけど、要はあの浮いてる石ころを壊せばいいんでしょ?」
「まぁ、有り体に言ってしまえばそうですね」
「じゃ、こうすればいいじゃない」
そう言いながらルビーは天井に掲げた掌の先に巨大な火球を生成すると、それをそのままコアへ向かって発射した。
火球はそれほど速度は出ていなかったものの、周囲に放たれる膨大な熱量から防御が不可能なのは明らかであり、三人組も素早く散開して回避した。
おかげで火球は何物にも阻まれる事なくコアに着弾し、大爆発を巻き起こした。
非常識な熱エネルギーに曝されながらも、ダンジョンコアは無傷だった。
エナが眼鏡を指でクイっと持ち上げながら言った。
「…………こうなる可能性を想定して、コア周辺には予め次元障壁を展開してあります」
「次元障壁?」
「簡単に言えば『ここ』とは別の空間をコアの周囲にバリア状に張り巡らせています。どんな破壊力もエネルギーも空間を超えてコアには届かないという仕組みです」
「そんなのインチキじゃない!試験だなんて言うクセに合格させる気が無いわよね!?」
「……その点に関してはご安心を」
そう言ってエナは自身の上着の胸元に付いているブローチを軽く指でトントンと叩きながら言う。
他の二人も同じ様にブローチを五人に見せる。
「私達のブローチが次元障壁を解除する鍵になっていますので、力づくでコレを奪い取って下さい……それでは本格的に試験を開始します」
エナはキャスターから脇差くらいの長さの小ぶりな軍刀を取り出して、構えを取った。
「貴方が悪いヒトじゃない事はなんとなく分かるけど…………私達の邪魔をするなら、骨の何本かは覚悟してもらうわよ?」
メゾーレも同じくキャスターからパイルバンカ―内臓の特殊な脚甲『ドヴォワール』を装着し、半身に構える。
「その点に於いても、心配は無用です……私達は強いので」
手短な説明の後、短い沈黙が両陣営の間に流れた。
メゾーレ達はこれまで通り、役割を分担しての集団戦に臨む。
5対3と数の上では有利だが、学園都市に発生した混乱や今までの旅路を想うと、それだけで押し切れる相手には到底思えない。
「オオオオオオオオッ!」
戦いの口火を切ったのはエナの隣に居た大柄な女で、雄叫びを上げながら上体を捻った姿勢のまま突進し、その途中でキャスターを起動させた。
その動きから何かを察したメゾーレがいち早く指示を飛ばした。
「ニレ!!」
「任せて!!」
ニレは大柄な女とチームの四人の間に割って入ると、そのままキャスターから大斧を取り出して大柄な女を迎え撃つ。
念の為にに肉体を操作して全身の筋肉を肥大化させた鉄壁の構えだ。
大柄な女がキャスターから取り出したのは日本刀、それも大太刀だった。
3メートルを悠に超える、大太刀の中でも一際長大なサイズのものだった。
長さ的には一般的にポールウェポンと呼ばれるもの達と大差無い様に思えるかもしれないが、槍の長さと刀剣の長さは、その意味合いが全く違う。
簡単に言うと持ち手の部分の違いからくる差異であり、槍は棒の中心付近を握って使うのに対して、剣や刀は末端に柄がある。
そして持ち手部分の違いが生み出すものは、圧倒的な扱いにくさと圧倒的な攻撃範囲、更に圧倒的な破壊力だ。
大柄な女は見た目以上の純粋な膂力で見事に巨大な刀を使いこなしており、一般的な武器防具では文字通り一撃で叩いて斬られて終わるだろう。
「今までさんざ待たされたんだッ!簡単に壊れてくれるなよなァ!?」
大太刀の鋭い横薙ぎを大斧の厚い刃で受ける。
「アタシはヴィラってんだ、よろしくな!」
ヴィラはそのまま力を込め続けて、大太刀を振り抜こうとしている。
強化状態ニレですらその圧倒的な力に抗うのが精一杯でその場から動けない。
そこへ恋がアシストに入ると、ヴィラのがら空きな腹部に強烈なボディブローを叩きこんだ。
しかしヴィラは身じろぎすらせずに恋のパンチに耐えると、キャスターに武器を収納して徒手になったかと思えば、あっという間にニレの腰と胸元を掴んで、そのまま恋を巻き込むように投げ飛ばした。
「うわぁああ!!」
「おいニレ!お前の筋肉はハリボテかよ!?まるで歯ぁ立ってねぇぞ!?」
「私もビックリだよ!!これでも力比べなら巨人型相手でも負けた事無かったんだけど!!」
「なんじゃそら!?筋肉お化けにも程があんだろが……あのパワー、もしかしたらストメア姉以上かもしんねえ」
「何やってんのよ貴方達!早く立て直して!」
ヴィラの背後から飛び出したエナをヴィラは頭上に上げた腕で足場になるように支えるとヴィラの腕を足場にして更に跳躍したエナが、姿勢を崩したニレと恋に襲い掛かる。
エナがニレに向かって刀を振るうと、その瞬間に刀身がバラバラに分解したではないか。
勿論それは刀が壊れた訳ではなく、分解した刃一つ一つがワイヤーで繋がっており、鞭の様に踊りながら二人へと襲い掛かる。
「ちぃッ!めんどくさいわねっ!」
その攻撃をフォローに入ったメゾーレが脚甲で振り払った。
エナに続いてヴィラも追撃に参加するかと思いきや何かを考えている様子で、その場から動いていない。
エナはそれ以上深追いはせず、ヴィラの傍まで跳び退いた。
「どうしたんですかヴィラ?」
「あー……いや、アイツ、あのヤンキーの方。今『ストメア』って言わなかったか?なんだっけなあ、前に聞いた事あるような……」




