女王学園の冒険53
火傷の苦痛で呻く騎士、燃焼する火がまだ消えず悲鳴を上げながら転げまわるヒト。
そういった負傷者を増産し続けながら、スゥは進む。
極めて精度の高い統制を得た歩行戦車達は無慈悲にも火炎放射と銃弾は雨を敵に浴びせ続け、広場を阿鼻叫喚の地獄に変えて往く。
その惨状を眺めながらスゥは呟いた。
「……まったくひでえ、ひでえありさまだぜ」
如何に何でも屋として数々の悪事に手を染めてきたスゥと言えども、この光景を酷いと感じる感性は残っているらしい。
しかしだからといって彼女の顔に後悔や躊躇いは無い。
(思い出すなぁ……そういえばアタシはそうだった)
太陽の光すらマトモに届かない新月街の下層で育ち、物心ついた頃には既にしていたあの覚悟を思い出す。
「例え山ほど他人をぶっ殺してでも、あたしは絶対に生き延びてやる」
その覚悟の前には善悪すら些事なのだと言わんばかりにスゥは更に広場を前進する。
途中に転がる騎士達の體を踏みつける、生きていようが死んでいようがお構いなしだ。
そんな事にまで気を回している余裕は無い。
「ほぉほぉ、存外やるようですな……これは小生共も気を引き締めてかからねば」
突然、戦場にそぐわない暢気な声が聞こえたかと思えば、前衛を務める歩行戦車の内の一機がライフル弾すら悠に防ぐ強化プラスチックのライオットシールドの盾の上から正確に手足の駆動系と武装との接続部分を貫通されて静かに機能停止した。
(来たか……このまま通しちゃくれねえよな)
この場でこんな芸当が出来る者は限られている。
スゥは冷静に停止した歩行戦車をカバーする様に迎撃し、敵が引いた瞬間に他の戦車達が隊列を組みなおす。
襲撃者は既に歩行戦車の射程外まで退避しており、有効打を与えられない。
襲撃者は安全地帯から咳払いをしてから名乗りを上げる。
「んんっ!ここは一つ、騎士らしく名乗りましょう。小生はジュラルバーム近衛騎士団第四小隊長 吸血騎ヴァンパイア・ナイトと申します……短いお付き合いになるとは思いますが、どうかお見知りおきを」
「おーそうかい、早速だがそこを退くか死ぬかしてくれ」
「おやおや、これはなんともつれないお返事」
相変わらず軽口を叩いてる吸血騎だが、その実力は本物らしく既に三機の歩行戦車を破壊している。
スゥも対抗して新しく戦車をナイトルーラーから呼び出して補充した。
おまけにリペアドローンを追加で呼び出して破壊された戦力の戦線復帰を狙う。
スゥも出来れば足を止めたくは無かったが、今までの様な突破的な戦い方で押し切れる様な甘い相手では無いと判断したようだ。
「……おや、よろしいのですか?足を止めてしまっても?」
「なんだと?」
吸血騎士の言葉が言い終わるか早いか、小隊長達がスゥへ迫る。
「……シィィィィ!!」
狼の吐息のような、はたまた吹き出した蒸気の様な独特な呼吸音と共に、野太刀による一閃で歩行戦車を両断して見せたのは赤狼騎士レッド・ウルフ。
「ホッホ!足元ががら空きだわい!」
広場の石畳をブチ破って歩行戦車を地中からひっくり返しながら飛び出して来たのは土竜騎士スコップ・ナイト。
「…………」
そして上空から巨大化しながら降って来た夢幻騎士ビキニアーマー先輩がその巨躯を生かした落下攻撃で一気に歩行戦車五台をお釈迦にした。
「サイズシフター!?」
サイズシフターとは特殊能力によって体の大きさを変化させる能力者の総称だ。
メジャーな能力ながら個人差が大きく、まとめて『サイズシフター』と呼ばれている。
「おいおいおいおい……サイズシフターまでご登場たぁ、手厚すぎて涙が出るぜ」
近衛騎士団小隊長四人が、スゥの前に立ちはだかる。




