女王学園の冒険54
学園都市の街と外を隔てる西の門、その上にメゾーレは腕を組んで立っていた。
テロリスト、スゥ・サイドセルと騎士団の戦いは一進一退であり、スゥはメゾーレの居る西門までなかなか近づけない様子だった。
(正直、これ程の戦力を投入するのはやり過ぎかと思っていましたけど……一体どういうことですか、これは?)
七大都市ジュラルバーム最大の武力を相手にして、この大立ち回り。
どう考えても一介のテロリストが所有しうる戦力を遥かに上回っている。
これ程までに整えられた戦力なら、本来拮抗する事すら難しいというのに、それが一進一退だというのだから俄かには信じられない光景だ。
(……それにしても多すぎる)
スゥが撃ちまくっている銃の弾薬と各種地雷と爆発物くらいまでならまだ分かるとしても……次から次へと繰り出される多脚戦車と、その装備の換装を行う修理用の小型ロボット……挙句の果てに簡易生産拠点まで。
歩行戦車は全長5メートル程の大型のもので動いてるのが12機、破壊されて停止しているのが4機。
スゥを中心にして陣形を組んでいる小型の多脚戦車が50機程度、空中から支援射撃を行うドローン30機……明らかに個人が携行可能なキャスターの容量を遥かに凌駕している。
キャスターの容量なんて普通ならカバン一つ程度の容量しか無いし、戦闘用の完全装備を揃えた場合でも小さ目の物置程度で事足りる。
それ以上の容量なると値段が跳ね上がって現実的な価格では無くなるし、つまりスゥの持つキャスターの容量は明らかに異常だ。
(パッと見ただけでは普通にキャスターを起動して物を取り出しているって感じだけど……)
この時、メゾーレの頭に一つの単語が思い浮かぶ。
(ロストテクノロジー……?)
十年前に償いの日というゲヘナの起こした大厄災で終結した第三次大戦の前後で、人類の技術力に致命的な断層が出来てしまったと言われている。
現代で稀に発見される戦前、戦時中の技術を使った物を現代のヒトは理解出来ない為、それらは失われた技術『ロストテクノロジー』と呼ばれる。
しかしそれでもだ。
(この程度の修羅場で騎士団がスタミナ切れを起こすなんて事はあり得ませんが……これ以上の被害拡大を防ぐ為には一気に決めないとダメね)
ほんの数瞬だけ迷ったが、メゾーレは意を決して通信機のスイッチをオンにした。
「近衛騎士団、歩行戦車の陣を突破してスゥ・サイドセルまでの道をなんとしてでも切り開きなさい、私が出ます」
本来指揮官が前線に出るというのは褒められた行為では無いという事はメゾーレも知っていたが、騎士団は街の運営に欠かせない存在。
彼等には明日も街の治安を守る仕事があり、下手に消耗させれば学園都市以外の勢力に付け入る隙を与えるきっかけになりかねない。
それを考えての決断だった。




