女王学園の冒険52
騎士達の鬨の声と共に戦端は開かれた。
相対するのは学園都市ジュラルバームを守護するメゾーレ・ジュラルバーム率いる騎士団と指名手配犯、スゥ・サイドセル。
そしてスゥをリモートでサポートするのは、ピンクジャムのバーテンダー兼業のスーパーハッカー、シトラ・S・マーコット。
更にシトラが遠隔操作する小型多脚戦車やドローン編隊といった無人兵器群。
今の所拮抗状態だが、七大都市とは今のセカイの中で人類最大規模の共同体だ。
流石にセカイで指名手配されているテロリストと言えども劣勢は免れない、スゥの口からは溜息の様なぼやきが漏れ出た。
「あーあ、随分でけえ損失になるなこりゃあ……今あそこでぶっ壊された歩行戦車だって、一台三百万ゴールドするんだぜ?それがたった今めでたくスクラップになった訳だ?この状況じゃあ残骸の回収だってできゃしねえ」
「こうなっちゃったらもうしょうがないよ……何は無くとも命あっての物種だよ」
「はぁ、わかっちゃいるがよ……愚痴でもこぼしてガス抜きしねえと流石にキツいわ」
スゥは再び溜息を吐きながら両手に持ったソードオフショットガン二丁を左右にぶっ放した。
ソードオフショットガンは威力こそ通常の物より劣るものの、近距離の乱戦なら扱いやすさと手数でこっちの方が良いという判断だ。
とにかく今重要なのは陣形を崩されない事だ。
一度陣形を崩されてしまえば、騎士団の物量で押し負けるのは自明の理だ。
「……でもこれさ、もし生きて帰れたら新しい伝説になるんじゃない?」
「あん?」
「あの学園都市の騎士団と正面からやり合って無事に生還したとなれば、その知名度を使って何か一儲け出来るかも?」
「あー……確かに、そこまで名があがりゃ、依頼料値上げしても文句言われねえかもしれねえなぁ」
「姉ちゃん、帰ってきたら何か美味しいものつくるし。何が良い?」
「……うーん、肉……かなあー?」
「だからホラ、頑張ってよ姉ちゃん」
「オーケーわーった、腹括るよ……こうなったらリソース全部ぶち込んでも生き残ってやるぜ!」
「そうそう、その意気だよ。火炎放射器装備の戦車、前線に投入するよ」
現在スゥの展開している歩行戦車達の陣形は前衛に強化プラスチックのライオットシールドとショットガン装備。
中衛にアサルトライフルと榴弾装備、後衛にライフル、飛行ドローンに四連装ロケットランチャーを二門装備。
銃撃や爆発を無効化出来るサバイバーが普及した現代では、もう見られないガチガチの重火器達による時代錯誤の密集陣形。
しかしスゥは百鬼夜行というアーティファクトにより、銃撃を無効化するサバイバーを更に無効化出来るアンチサバイバーを局所的に発生させることが出来る。
通常のアンチサバイバーはキャスターでは収納できない程複雑かつ巨大で、運用には大規模な軍地施設程の敷地面積と電力供給が必要なのだが、個人でそれが運用出来てしまうスゥは、現代戦において絶大なアドバンデージを有する。
それこそ一人で第一線級の戦闘能力を持つ騎士団を相手取れる程に。
「アタシを本気にさせたバカ共がどうなるか……思い知らせてやるよ!」
スゥが戦力を増強した事で拮抗状態が崩れ始めて、ロイヤルナイト達が徐々に押され始めた。
決め手となったのはスゥが追加投入した火炎放射器だった。
それだけでと思われるかも知れないが、火炎放射という戦法は対人戦に於いては絶大な効果を発揮する。
火炎放射器というのは油に火を付けて炎で攻撃する武器では無く『火の付いた油の塊を投射する武器』なのだ。
二つの違いが何かと聞かれれば、炎が燃え残るという事だ。
例えば不燃物である金属製の鎧で炎は防げても、火の付いた油を浴びせられると燃え続けてしまう。
そして、鎧を着ているのがヒトという事は……
「ギャアアアアアアアアアアア!!」
「水!!水を!!!」
当然こうなる。
戦場のあちこちから阿鼻叫喚の悲鳴が聞こえ始めた。
いくら訓練された兵士と言えど、身体に火が付いてしまったら練度もクソも関係無い。
水の無いこの広場では必死に地面で転がって火を消そうとするしかなく……しかし救いが無い事に、火炎放射器に使われるのは粘着性の強く簡単には消せない燃料という事だ。




