女王学園の冒険50
完全包囲された西門前広場へ続く大通りの真ん中を、スゥはゆっくりと歩いて来た。
スゥが広場に入ると彼女が歩いてきた大通りをすぐさま盾持ちの騎士団員達が塞いだ。
退路を断たれた知りながらも、スゥは振り返る事無く、真っ直ぐに広場の中心へと進んでいく。
その間、ロイヤルナイト達は不気味に静まり返っていた。
攻撃の号令を待っているのだ。
「おーおー……大層な歓迎してくれちゃって、恐悦至極に存じますってか?」
広場の中心に到達したスゥが改めて左右を確認しながら呟いた言葉に、門の上で仁王立ちしている人物が答えた。
「えぇ、この街は私の庭ですもの。お客様をおもてなしするのはホストたる私の義務ですわ」
スゥは門の上の少女を仰ぎ見た。
学園都市を支配するジュラルバーム家の一人娘、メゾーレ・ジュラルバームがそこに居た。
「……なんだ、聞こえてんのかよオジョーサマ」
「お久しぶりですわね、スゥ・サイドセル」
「ルルイエ以来か……正直もう会う事はねぇと思っていたが、案外根に持つタイプだったんだな?」
「……貴方、今の自分の立場わかってませんの?」
「知らねえな」
「七大都市の一つ、傭兵都市グラングレイに戦術核をぶっ放した、戦後最悪のテロリスト……それが貴方の今の肩書でしてよ?貴女の存在はもう私個人の感情を超えた、街そのものへの脅威になっていますの、おわかり?」
「あたしゃそんな大したモンじゃねえぜ?しがない『何でも屋』さ……買い被り過ぎだと思うがな」
「そうですか……貴方がしがない何でも屋さんだと言うのなら、大人しく降伏して下さらない?」
「悪いがそれは出来ねえ、あたしもこう見えて諦めは悪いんだ」
「それは良かった、せっかくこうしてパーティの準備をしたのですもの、踊らないまま終わるのはつまらないですから」
「上等だぜ」
スゥは強がってはいるものの、既に何の策も弄せない状態にあった。
後ろと左右に退路は無く、もし無理矢理に広場から逃れようとすれば、正面に陣取っているロイヤルナイト最強と名高い近衛騎士団の連中に背後を晒す事になってしまうだろう……ならば道は一つしかない。
バカ正直に真っ直ぐ突っ込んでいって正面をぶち抜くしかない。
「シチューにカツありって言うんだったか、こういうの?実際シチューにカツって合うのか?」
ピンマイクの向こうにいるシトラからツッコミが返ってきた。
『いや、知らないよ。つか食べ物の話じゃないからそれ』
「……ドローンの制御は任せるぜ」
『わかってる!キツいと思うけど、ここを抜ければ敵も総崩れになる。もう一息だよ!』
『おう』
スゥはキャスタ―から全長二メートル程の小型の蜘蛛に似た形の歩行戦車を三十機程呼び出して、自身の周囲を囲うように展開した。
それは真上から見ると丁度『△』の形になっていて、魚鱗陣と呼ばれるものだ。
突破力がある陣形の中でもバランスが良いとされてはいるが、陣形の効果がどの程度近衛騎士達に通用するかはわからない……それでも無いよりは幾分かマシだろう。
突っ込んで来るスゥを見て、メゾーレも遂に号令を出した。
「近衛騎士団!その犯罪者を鎮圧なさい!」




