女王学園の冒険48
籠城していた体育館から飛び出したスゥは自らの足で街中を走り抜ける。
当然の事ながら道路は全て騎士団に封鎖されており、操縦にリソースを割かなければならない如何なる乗り物も、この状況では使えない。
追いすがる警察騎士団の精鋭から逃げながら、邪魔な障害物やヒトを攻撃または破壊しながら突き進む。
大きくジャンプしたかと思えばドローンに捕まって滑空し、アンカーワイヤーでジャンプの軌道を変化させたり、多足戦車を囮にして自爆させたりと、行動パターンを読まれない様に工夫しながら目的地へと急ぐ。
「ハァ……ハァッ……!!思った以上に、体力が落ちていやぁがる……!」
スゥは昔の自分なら、このピンチも上手く切り抜けられたんじゃないかと考えた。
親も分からず新月街の下層で生きていた頃……毎日が命がけで、ハングリー精神に満ち満ちており、何も持っては居なかったが、身体一つでなんでもやっていたあの頃の自分。
(いや……比べるもんでもねぇか……)
それから色々あった、力を得て、知恵を付け、様々な出会いがあった。
確かに変わったり、何か失ってしまったものもあるのだろう。
それでも変わらないものがある。
「地獄で生きていようが、多少まともになろうが同じ事……何があっても生き延びてやるってんだよッ!」
命への渇望、それだけは今も昔も変わっていない。
・・・
「やっぱりスゥさんは凄いな……ただ者じゃないとは思ってたけどロイヤルナイトを相手に、あんな大立ち回り出来るなんて……」
命の恩人の安否が心配で学校を休んで様子を見に来ていたニレは少しホッとしていた。
スゥの大立ち回りを見ていると、不思議と自分も鼻が高い様な気持ちにさえなる。
「このまま無事に逃げてくれればいいんだけど……」
つい希望的観測を口にしてしまうが、直後にそれは甘い考えだと自分を戒めた。
戦後世界の最大勢力である七大都市、その一翼を担う学園都市ジュラルバーム……それが最高戦力を一人の犯罪者相手にこれだけ大大規模に展開しているのだ。
もし逃がしてしまう様な事があるとすれば、それはジュラルバームの面子が丸潰れどころの話じゃあない。
世界のパワーバランスにすら影響が出るだろう。
だからこそメゾーレも騎士団も必死だ。
街の武力が舐められる事は学園都市ジュラルバームの住民全ての安全が脅かされる事と同義なのだから。
「…………あたしは」
ニレは考える『もしも』の時を。
「あたしのカラダ……ちゃんと動いてくれる?本当にあんなところに飛び出していけるのかな……?」
その問いに答える者は誰もいない。
自分自身の事なのにニレ自身も答えが出せないでいた。




